1977年にイギリスで製作されたドキュメント番組『サイエンス・レポート』。
番組スタッフは英国でトップ・クラスの優秀な学者等の連続失踪事件“頭脳流出問題”の謎を追う過程で、
アメリカ=ソ連の二大大国が秘密裏に進めていた陰謀“第3の選択”に辿り着く。
それは激変し人類の生存に適さなくなりつつある地球から、選ばれた一握りの人間を火星に移住させることで、人類という種を存続させようとする恐るべき計画であった!
…というのが、英国では77年4月1日放送とクレジットされた『第3の選択/米ソ宇宙開発の陰謀〜火星移住計画の謎』(以下『第3の選択』)だ。
英国本国では初放映時に視聴者をパニックに陥れ、日本でも二度目の放映となった『木曜スペシャル』枠でのオン・エアでは、
独自に再編集した上でドキュメンタリー作品と喧伝され大きな反響を呼び、熱心なファンの支持を得た。
そんなフェイク・ドキュメンタリーの先駆であり、Jホラーの起源とも言われる作品が、
初放映から40年近くを経て今年の1月30日に初DVD化され、旧作としては異例のヒットとなっている。
その一方で、フェイク形式で実は真実を暴いているとも囁かれてきた“ヤバイ”作品らしく、早くも発禁処分?の噂も流れているらしい。
去る4月1日に本作のVD発売を記念して、
“4.1緊急大討論!やはり『第3の選択』は真実だった!? DVDが発禁処分か!?”
と題したイベントが開催された。
▼ 『第3の選択』DVD発売記念イベント開催決定! - YouTube
当日はJホラーの巨匠で御自身も本作の大ファンで今回のソフト化にも尽力した鶴田法男監督の司会進行のもと、
作家で『クロサギ』等の原作者の夏原武、
「別冊映画秘宝」編集長の田野辺尚人、
鶴田監督作品『Z〜ゼット〜果てなき希望』等の女優の木嶋のりこがゲストとして登壇。
鶴田が蒐めた当時の記録資料や関連映像等を交えつつ、問題作の魅力と真相に迫った。
鶴田が提示した当時の記録によれば、
『第3の選択』は78年にフジテレビの深夜枠で初放映され、この時は新聞のラテでは「ニュースショーの形で描くSFドラマ。
イギリスの民放局で製作」と明確に記されている。
しかしこれが、82年に矢追純一がディレクターをだった『木曜スペシャル』枠でゴールデンタイムに放映された際には、
なんと「BBC放送製作の科学ドキュメンタリー」となっている。
こうして第2回放映の視聴者の大多数には、本作は事実の記録として受け取られることになったのだ。
59年生まれの夏原は、アダムスキーに端を発するUFOブーム世代で、こうしたジャンルにはこどもの頃から興味を持っていたという。
「18歳頃にたまたま深夜放送で見た『第3の選択』は、ホントなのか?嘘なのか?ということよりも、番組自体がすごく面白いと思った。
その後、矢追さんの『木曜スペシャル』版を見て、二十歳過ぎで非常に愚かなんだけど「やっぱりそうだったのか」みたいなことを、正直思ってしまった。
作品としては、細かな部分まで内容を練ることとあわせてエンターテイメントを追求していたからこそ、今観ても興味深いし衝撃的なのだと思う」
とコメントした。
一方、『木曜スペシャル』版が初見だったという田野辺は、放映翌朝の学校でクラスメイトや担任の教師から作品の真偽を訊ねられたエピソードを披露。
「オーソン・ウェルズのラジオ・ドラマ『宇宙戦争』がアメリカでパニックを起こしたことは知識では知っていたが、まさか自分たちが『第3の選択』で同じようなことを学校をあげてやっていたとは。
今から思うと、ウェルズも矢追さんも偉いなということが言えるのではないかと。
当時“ノストラダムスの大予言”等で、99年で世界は終わりだというのが皆の中であった中で、頭のいい奴だけが火星で生き残れるというのは衝撃的で、現在の格差社会を予兆させるような厭なテイストがジワジワでていた」
と語り、その部分の印象の深さを強調。
今回のイベントにあわせて『第3の選択』を初めて観たという木嶋も
「私もそこで一番衝撃を受けました。誰が選ぶの!って」
と、初見世代でも変わらぬ作品の衝撃をアピールした。
また『第3の選択』という作品が、ホラー、フェイク・ドキュメンタリー、他ジャンル等に及ぼした影響を鶴田が作成した年表で検証。
Jホラーの先駆的OV作品である石井てるよし監督作品『邪願霊』から、実際にフェイク・ドキュメンタリーとして製作することも検討していたという鶴田の初期傑作OV版『ほんとにあった怖い話』、オマージュ要素もこめられた『POV〜呪われたフィルム』等に関するエピソードも披露された。
ところで、発禁の話にもふれておくと、『第3の選択』がリリースされた今年の1月前後から、火星に関する報道等が急に目に付くようになっことに読者諸氏はお気づきだろうか?
イベント当日には、1月19日になんと11年前に行方不明になった火星探査機ビーグル2が、火星のイシディス平原で発見されたというニュースが披露され、
本イベント開催後の4月14日には、火星の地表に「塩水」があるかもしれないという研究発表のニュースが流れた。
いずれも、人類の科学的な挑戦の記録ではあると同時に、現時点では不毛な惑星としての火星をあらためて強調するものでもある。
これは、約40年ぶりにソフトとして復活した『第3の選択』で描かれていた“真実”を、あくまでフィクションにおとしこむための情報操作なのではないだろうか?
そしてこの操作がうまくいかなければ、このソフト自体の存在も…!?
…という話の真偽は兎も角、ソフトというものは出た時に入手せずにいると、意外とすぐに入手困難になるというのは、筆者自身も日頃から身に染みて感じている真実だ。
それは復活したばかりの、ジャンルの記念碑的作品でもまた然り。
当時作品に衝撃を受けた方は勿論、興味はあってもまだ『第3の選択』を観たことがない方は、急いで入手しておいた方がいいだろう。
もしかしたら、明日にもこの世界から抹消されているかもしれないのだから…
第3の選択/米ソ宇宙開発の陰謀~火星移住計画の謎(初回限定生産) [DVD] マクザム 2015-01-30 by G-Tools |
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『第3の選択/米ソ宇宙開発の陰謀〜火星移住計画の謎』
ALTERNATIVE 3
1977年/イギリス
製品仕様:カラー/4:3 スタンダード ほか/片面1層/本編 約52分+特典 約48分/字幕:1.日本語吹替用字幕 2.日本語字幕/音声:1.日本語吹替〈ドルビー・デジタル・モノラル〉 2.オリジナル英語〈ドルビー・デジタル・モノラル〉
特典映像:メイキング、ティーチイン
2015年1月30日よりDVD発売中!
発売元:「第3の選択」発売委員会/販売元:株式会社マクザム
(C)1977 ANGLIA PRODUCTION ALL RIGHTS RESERVED.
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