女子高生の佳夕は、ひょんなことから写真部に入部することになったが、そこは普通の写真部とは様子が少し…いやかなり変わっていた。部長の牧村と先輩のリリという二人からなる部の活動は、心霊写真の鑑定・調査を行うこと。
そう、そこは心霊写真部だったのだ。三人は写真部のサイトに送られてくる心霊写真の撮影された現場に赴き、様々な怪異と対峙しながら写真に秘められた謎に挑んでいく。
そんな佳夕の前に現れ、超常現象のヒントを与える謎めいた少女。
その一方で、死体を残さずぞの凶行の写真を送りつける、マスク殺人鬼の影が佳夕たちにも迫っていた…
『心霊写真部』は、2010年にそれぞれ3話構成からなる“壱限目”“弐限目”の2本のシリーズとしてリリースされたOVホラー作品。
リリース当初は一部のマニアをのぞくとさほど話題にならず、様々な謎を投げかけたままシリーズは休止していた。
だが近年口コミで徐々に人気が高まり、
特にニコニコ生放送のホラー企画“ニコニコホラー百物語”では、13年・14年と2年連続でユーザー・アンケートのトップに輝いた。
そして新作を望む声は高まり、クラウドファンディングでも多数の支持者を得て、
5年ぶりに劇場用新作として復活したのが、
5月30日より公開中の『心霊写真部 劇場版』なのだ。
原作・脚本は、OV版でも原作・脚本を兼ね、
また以前にこちらで紹介した『心霊病棟 ささやく死体』では監督も兼ねたマルチ・ホラー・クリエイターの福谷修、
そして監督も『こっくりさん 劇場版』等の永江二朗がOV版から続投している。
主要キャストは基本線ではOV版とは変わっており、
佳夕役はガールズ・ロック・ユニット PASSPO☆の元メンバーで、『仮面ライダーウィザード』のコヨミ役でお馴染みの奥仲麻琴が、
好奇心旺盛だが自身の霊感に戸惑うヒロインをナチュラルな演技で魅せてくれる。
そんな佳夕の前に現れ、心霊現象に関する様々な示唆を与える謎めいた少女・玲花には、
福谷の前監督作『心霊病棟 ささやく死体』でも望むと望まざるに関わらず全てが見えてしまう
車椅子の少女アリサを演じていた谷内里早が、ミステリアスさにさらに磨きをかけ、
物語の鍵となる役どころを存在感たっぷりに好演。
心霊写真部のリリ先輩役は『トイレの花子さん 新劇場版』の上野優華、
そして牧村部長役はOV版からの唯一の続投キャスティングであり、
『特捜戦隊デカレンジャー』の伊藤陽佑が、なんとシャワー・シーンも披露しているので、女性ファンは必見だぞ。
野郎的には、これってどうなんだ?とか思ったものだが、これは実際にニコ生のファン・アンケートの結果により追加されたシーンとのこと。
今回の劇場版は、主要キャストは前述どおりで牧村部長を除きOV版から変わっているが、物語的にはOV版の完全な続編。
そういう意味では、OV版を観ている方がより深く作品を楽しめるが、
冒頭でOV版のあらましと投げかけられた謎についてを見せてくれるので、
本作がはじめての方でも一本の作品として楽しめる作りになっている。
劇場版もOV版同様の3話オムニバス構成で、
“エンジェルさま”が写った写真に関する1話では、
ニコ動視聴者には別名“痙攣部”として知られる作品らしく、
部長とリリさんが憑かれての痙攣場面でシリーズ・ファンの心を掴むと同時に、予想外の展開には結構意表をつかれる。
続く第2・3話で、いよいよこれまで各エピソードに散りばめられて来た謎とその核心に迫るものとなっており、
第2話では30年の由緒正しき?歴史を誇る心霊写真部の創成期と謎の少女・玲花の関係が明らかになり、現在の事件と謎がリンクしていく。
そして第3話では遂に佳夕たちはマスク殺人鬼と対峙することになり、
心霊写真部の面々は精神的にも肉体的にも過酷な試練を受けることになる。
当然ホラー作品なので、これまでだって様々な怪異に遭遇してきた面々なわけだが、
そんな彼らを見守ってきたファンにとっても、かなり衝撃的かつ予想外のものとなっているはずだ。
『善悪の彼岸』の一節を思い起こさせるような状況下での、玲花が、そして佳夕が宿命と戦う姿は哀しくも感動的だ。
ミステリアスなストーリーテリングの妙と、容赦なく主人公を追い詰めるスタイルは、
『心霊病棟 ささやく死体』や小説としての前作『鳴く女』と同様福谷ホラーの醍醐味なのだ。
なお、昨年刊行された福谷の『鳴く女』は、
幻の化け猫映画の行方を追う放送作家が、ミステリアスな怪異と凄惨な殺人事件に巻き込まれる
というホラー小説で、これまた結末の悲惨さでは本作以上のカタルシスが味わえる。
と同時にかつての怪談映画(中川信夫に関しての言及も勿論あり)や、
ジャンク・ビデオ狂乱時代とその立役者のその後(その筋が好きな方にはモデルは一目瞭然)、
そして幻のフィルム(『探偵!ナイトスクープ』でとりあげられた『シェラ・デ・コブレの幽霊』への怪奇ファンの熱狂から想を得たそうです)を巡ってのあれこれなど、
映画周辺にからむあれこれのネタが、ストーリーと不可分な形で練り上げられた、
まさにホラー映画ファンのための一冊になっている。
鳴く女 (TO文庫) | ||||
|
本作及び原作の『Re:心霊写真部』と併せて、未読の方には一読をお薦めする。
***********************************
『心霊写真部 劇場版』
2015年/日本/102min
制作・宣伝・配給:キャンター/配給協力:ダブルアップエンタテインメント
2015年5月30日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、6月6日(土)よりシネ・リーブル梅田 他全国順次公開!
(C)2015福谷修/「心霊写真部 劇場版」製作委員会
***********************************
コメントする
※ コメントは認証されるまで公開されません。ご了承くださいませ。