ロス留学中にカルト集団に拉致された妹マユミを救いだすために、殺人空手で敵地にのりこむ青年ケンジの死闘を描く『KARATE KILL/カラテ・キル』は、『女体銃 ガン・ウーマン』等エモーショナルでエッジの利いたアクション映画をアメリカで撮り続ける光武蔵人監督の最新第4作だ。
▼映画「KARATE KILL/カラテ・キル」公式サイト
©2016 TORIN,INC.
先頃開催されたブチョン国際ファンタスティック映画祭2016でのワールド・プレミア上映でも、欧米に比べるとアジア圏は大人し目といわれる客席をも大いに沸かせたこの快作が、日本でも9月3日より待望の劇場公開がスタートする。
一般のアクション好きを満足させると同時に、脇を固める光武組キャスト陣や、アクション、流血描写など、光武印をそこかしこに刻印しつつ、光武ファンの予想をいい意味で裏切る仕掛けも施された本作について、ブチョンでの上映を終え、七月末に一時帰国した光武蔵人監督に行った直撃インタビューをお届けしよう!
――まずは監督第4作として、空手アクションを撮った経緯からお聞かせください。
「最初の二本『モンスターズ』、『サムライ・アベンジャー/復讐剣盲狼』はインディーズでのオリジナル企画ですし、『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』もマクザムさんから何か一緒にやりませんか?という依頼の中で、温めていた企画を一緒にディベロップしていったものでした。
で、今回はゆうばり映画祭で『女体銃?』を認めていただいたマメゾウピクチャーズの久保エグゼクティブ・プロデューサー、岡崎プロデューサーに、ハヤテという空手家を映画俳優にしたいので一緒にやりましょうと、アイドル映画の監督に抜擢してもらえたような、初めて雇われ監督に昇進した感じです。
物語はその後一緒に創っていきましたが、ハヤテありきでこれをという出発点は初めての経験でしたね。」
――光武監督ご自身は、空手映画というジャンルへの思い入れはいかがでしたか?
「最初の打ち合わせの際、久保さんにもお伝えしたんですけど、僕自身はマーシャル・アーツ映画というジャンル自体にはあまり思い入れはなく、格闘技オタクでもないんですよ。
勿論、ブルース・リーや初期のジャッキー・チェンの作品は大好きですが、後続の何百発殴っても倒れないとか、空飛び始めちゃうようなのはあまり好きじゃなく、最近のはあまり観てない。
でも、久保さんがそれでいいんだと。実はすごい格闘技オタクである久保さんと、映画オタクの僕、アクションオタクの田渕景也(アクション監督)、空手オタクのハヤテが四つ巴になって創ればいいという話でしたので、それでよければ是非やらせてくださいとなったんです。」
――ハヤテ演じる主人公ケンジのキャラクターは、これまでの光武監督作品に比べ屈折を感じさせない正統派ヒーローの佇まいでしたが、ハヤテありきの部分が大きい故ですか?
「でもやっぱりケンジというキャラクターは、狂ってるとは思うんですよ(笑)。
アメリカ乗り込んでって、いきなり敵をボコボコにし出すんだから頭のおかしい主人公ですよ。でも、確かに屈折はしてないですよね。
加えて今まで撮った三作が全部復讐ものでしたから、今回は復讐を封印しようというのは意識的にあり、例えば両親を殺された空手家がLAに?という話も出来ましたがそれはやめ、復讐ものではなくレスキューものにしようと。
ただやはり僕は復讐に引力を感じてしまうので、脚本を書く中でケイコという復讐のエレメントも入ってきてしまいました。」
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――主演の“アイドル”ハヤテについてお聞かせください。
「やっぱり本物ですよね。本物の空手家であり、最初は演技的にはそんなに期待できないのかな?という思いも実はありました。
ケンジを猪突猛進型の判り易いキャラとし、ハヤテが上手い役者でなくても成立するような形にはあえてしてます。
けど、実は役者としてもかなり技のある演者で、劇中ケイコとの車のシーンで涙を流すじゃないですか。
あれ一回だけじゃなくて、何回ものテイクで同じタイミングで彼は涙を流せ、映画俳優なんだなと感じましたね。
だから最初は演技が出来る空手家という印象でしたが、撮影の途中からは空手が出来る映画俳優、映画俳優ありきで見るようになりましたね。
ただ人としては面白くなくて、呑んでても飯喰ってても仕事の話しかしない!(笑)。」
―キャバクラ“シークレット・トレジャー”で、ハヤテが5人連続で倒す様をカメラを回転させて捉えたようなトリッキーな部分も含め、細かくカットを割りすぎずに見せてくれた印象を受けましたが、本作のアクション演出にあたり心がけた点はありますか?
「最初に田渕とハヤテと話したのが、寄りでアクションを誤魔化さないということです。
リーアム・ニーソンが戦っても強そうに見えてしまう、寄り寄りでのアクションは嫌いなんですよ。
あれだと誰でも強いし、本当にあたってるかも判らない。
今回やらせていただく上で、ブルース・リーの全作品を観直したんですが、カメラワークはほぼなくて、据え置いてあるだけが多い。
今回はそれを狙って勝負したいなと。
ただそこまでストイックにすると、今のお客さんは多分飽きちゃう。
そこで撮影期間も短かったので、アクションは常に二台が回っている状態で撮影し、Aカメがちょっと引き気味、Bカメが寄り気味で主にハヤテの手足を追ってバランスをとるようにしました。」
――LAにハヤテが渡っての発端部分、北村昭博演じる“Sexy Japanese Man”とケンジのバトル部分は、ハヤテにぼこられては下手に出て隙を狙って反撃しまたぼこられる北村の演技がユーモラスかつ生の喧嘩のノリで惹かれましたが、この部分の掛け合い等はアドリブもあったんでしょうか?それとも脚本通り?
「芝居というか展開は脚本どおりです。
ただ、壁に打ち付けられガラスが割れるところで、彼はホントにぶつかって軽い脳震盪をおこし、殺陣は全部とんじゃったんですよ。
なので戦いはほぼアドリブで、多分ハヤテが本当の空手家じゃなければ、あそこまで鮮やかに対応できなかった。
ハヤテもガチで避けましたと言ってるくらい激しい戦いになりましたね。
そんなガチの喧嘩感で、あそこはちょっととんがったというか異質な感じになりました。
この後の、360度回転で捉えたキャバクラで5人と戦う場面までは、ケンジのスイッチは殺しには入ってません。
黒人のジャンキーが階段から落ちるところではその生死を見せてませんし、キャバクラの店長を撃つ所で、初めて殺しのスイッチが入りケンジのフェイズ2に移るということは、ハヤテとよく話し合って進めてます。」
――空手と木刀での戦いを経て、そのスイッチを入れる契機となるクラブ・マネージャー役の鎌田規昭は、情ないコミカルさと凄みが渾然一体となった存在感も絶妙でしたが、『サムライ?』『女体銃?』と御一緒され、今回のキャラは宛書だったんでしょうか?エンド・クレジットによれば作品のタイトルロゴも担当されているようですね。
「そう、作品のオープニング・タイトルは書道家でもある鎌田の書です。
『サムライ?』の時も彼に書いてもらったんですが、今回は血でブチュッとしたような字にしたかったのでその点を何度もリクエストして、最終的に彼が指で書いてくれたものになっています。
空手と剣との戦いは本当の空手家ハヤテに、一番戦い難い他の武術はなんだと訊ねたところ、「刀です」という話になったので、それに則りこの木刀との戦いとクライマックスの剣豪との戦いとの二つ入れて、鎌田の台詞を剣豪ファイトに繋がる伏線にしたんです。」
▼例によって強烈な存在感を滲ませるバーコードさん(左)に扮した鎌田規昭は今回のタイトルロゴも担当した才人。
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――そして、本作での敵はカルト集団“キャピタル・メサイヤ”ですが、今回カルトを選んだ理由をお聞かせください。それと、集団の腕を振り上げたりの描写って、数日前に監督がフェイスブックにお気に入りとしてあげていた…
「そう、ジョルジ・パン・コスマトスの『コブラ』ですね。
実はカルト・リーダー、バンデンスキーのナイフも『コブラ』の“ナイト・スラッシャー”と同じと拘ってます。
アメリカで一番有名なカルトというとチャールズ・マンソンになると思うんですけど、やはりヒーローになってしまう悪人の代表格はカルト・リーダーかなというところから入りつつ、今回の映画ではバンデンスキーという悪役をラスボス的な凄い奴にはしたくなかったんです。
最後にラオウが出てくるようなベタな展開にはせずに、バデンスキーは力でというよりも、話術だったりダークなカリスマ性だったりで人を支配している感じにし、裏ラスボス的存在に至る伏線としても洗脳というキーワードが有効だったので、ただの悪者ではないカルトにしました。
ただあのキャスティングは結構大変だったんですよ。
ハヤテは立っ端がそんなにないので、彼より小さくてちゃんと芝居もできるアメリカ人を探すというのは結構至難の業だったんです。」
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――そう、洗脳の儀式の場面は、予想の斜め上の展開でやられましたよ(謎)。
「あれはバンデンスキー役のカーク・ガイガーのアイデアがきっかけになっていて、脚本の段階では恐らく皆さんのご想像通りの展開だったんですよ。
性的不能が彼のパワーの源になりという部分を描こうとしていたんですが、カークが「こんなにクレイジーな奴が、そんな普通の行為に耽るのか?」と疑問を投げかけてきたので、それも一理あるなと実際に撮影した形でカークにピッチしたら「それだよ、それでいこう」とのってきて、あのシーンが生まれたんです。
音もそうとしかきこえない形でいれてあるので、カメラがゆっくり下りていくと観てる方は「うわ、嫌なもの見せられるだろうな」と思ってると、嫌は嫌でも想像したよりはほっとする変な感じにしてあります(笑)。」
――ケンジの妹マユミ役の紗倉まなはいかがですか?教団から逃げるために信者を蹴り倒す場面も御本人ですよね?
「彼女が信者を倒して逃げる場面も、勿論本人が演じてます。初めてのアクションですし、まなちゃん優しいので結構蹴りがソフトだったりもしたんですが、そこはリアルにというか、もっと強くみたいな指示は我々の方でも出しました。多分、彼女に蹴られたい男もたくさんいるでしょうね(笑)。
彼女自身は非常に素直な方ですね。『エターナル・マリア』でヒロインを演じてますが、多くのスタッフに囲まれ、かつアメリカでの撮影は今回が初めてで、今までで一番楽しかった現場だったと言ってくださり嬉しく思ってます。
マユミのキャラクターは演技での深みというよりも存在であり、映画の中で大切かつ一番大きな記号です。
あえて深堀はせず、こんな妹ならという納得感が一番重要だと思ったので、本編中ではほぼ2シーンしかないのですが、ハヤテとの一緒のシーンで二人がどこかで通じ合ってる感じを醸し出してもらうために、短いLA滞在期間でしたけど二人で一緒に食事してもらったり、接近してもらった部分はありますね。」
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――そして、光武組では欠かせない亜紗美が演じるケイコですが、ケンジに銃と戦うトレーニングをし、共闘していく過程での表情の変化で、二人の関係がロマンチックなほどよく出ていて、『女体銃?』のマユミとマスター・マインドの関係とは対照的でしたね。トレーニング場面では、ケイコの台詞が消されていても、よく伝わってきました。
「え?っと、どなたでしたっけ?(爆笑)
『女体銃?』のマスター・マインドとマユミの関係は、獣が傷を舐めあう感じなので突然やっちゃう感じが狙いでした。
今回のケンジとケイコは心の襞が触れ合って、ケンジはどうか判らないけど、ケイコの方は2・3年復讐の機会を狙い孤独な人生を送っていたところで、久々に同郷の人間と出会い惹かれてしまう。
70年代の映画って復讐に燃えてたり、大事なミッションを抱えるヒーローが、急に女と寝ちゃうじゃないですか。そんな時間無いでしょ!って寄り道が多い(笑)。今回、それもやりたかった。
必死に探せよってところで、余裕ぶっこいてる感じを出すためにも、二人の心が接近するところは短い時間でしたが丁寧に描きました。
それと、僕はトレーニング・モンタージュ・フェチなんですが、ハヤテは最初から空手マスターなので、トレーニングする必要がない。それで今回は描けないのかな…と思ってたんですが、弾を避ける技を修得しなくてはならないとすれば一石二鳥!トレーニング・モンタージュも撮れるし、それと二人の心の接近とを二重構造で描いたんです。
トレーニング中の銃の指導台詞は芝居では全部ありました。ベタな演出かもしれませんが、好きになった女の子を見てると、見とれてしまって、その子が何話してるか判らなくても可愛いなぁ…ってのがあるじゃないですか。
そういう感じが出せればいいのかなと思って、ケイコの言ってることはモゴモゴと段々判らなくなっていく形にしたんです。
二人の関係の結末に関しては、これからご覧になる方もいらっしゃいますのでここでは詳しく語りませんが、最初は完成版とは逆も考えてたんです。ただ光武映画だから、こいつは絶対生き残るとみんな思うであろうからこそ、逆に申し訳ないけど…と。そういう意味では、ダブル・ミス・リードになってればいいなという感じではありましたね。」
▼対峙するケイコとケンジ。一体なんのトレーニングかは見て驚いてください!
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――ところで、ケイコがバックボーンを語る部分で自衛隊出身?という件があり、それは彼女の能力面での説明であるとともに、娯楽作と言えどもやはり現実の社会に対し監督御自身の感じる部分の現れなんでしょうか?
「もう僕は、山本薩夫に次ぐ社会派監督だと自負しておりますので、そういうメッセージは色濃く入れたいと思っております(笑)。
実際今回は格闘技映画なので、メッセージを入れるところはほぼほぼありません。でも『女体銃?』では悪の組織がある場所が核廃棄場という部分でちょっと入れ、今回はケイコの台詞の中で「バカな政治屋たちが戦争をはじめそうになっているから自衛隊を辞めた」と一言入れたというのはあります。
例えば今回ブチョン映画祭へ行った際に、『ヘルケバブ 悪魔の肉肉パーティー』を撮ったトルコ人のジャン・エヴェノル監督と僕と二人で呑んだんです。
二人とも結構べろべろに酔っ払い、呑みながら話したんですが、人食ホラーを撮った奴と血塗れアクション映画を撮る僕が、世界平和について話しちゃうわけですよ。本当はいい時代だったなら、こんな人体破壊描写がいいよね!みたいは話で盛り上がるべき二人が。
でも二人とも小さな子供がいて、特に彼はトルコが今大変なことになっている中で次回作が撮れるかどうかも判らない状況だと。
僕は日本人ですが、日本も大変なことになっているし、暮しているアメリカも最低と最悪の政治家のどちらが大統領になるかと、本当に世界がおかしくなっちゃって、娯楽映画が作りにくい状況にはなっている。
昨日の事件(相模原障害者施設殺傷事件)じゃないですけど、ああいうことがあればあるほど、僕はディズニー映画でも撮った方がいいんじゃないのか?と思うくらいですけど、そういう状況故にどうしてもメッセージ的なものはちょっとは出てしまいますね。」
――ケイコの片腕でのショットガン捌きが非常にエモーショナルでしたが、片腕場面故の苦労等はありましたか?
「今回の映画は舞台裏で問題がたくさんあったんですが、大きな一つはハリウッド現地スタッフによる美術部なんです。
実は撮影4日目にして全員馘首にして、他の美術部が入ってきてというしっちゃかめっちゃかな状態になってしまって…。
これもちょっと社会派的なことを言うと、アメリカのインフレは半端なく進行していて、『女体銃?』のころの人件費がその僅か3年後ではまらないんです。
そうした問題が集約されたのが美術部って形で出てきたんですが、片腕がフックのケイコは、片腕でガチャっと装弾させないとならないので、本来なら銃身を落として、ストック部分も短くしたソードオフ・ショットガンにしてあげたかったんです。
それを美術部に要求してたんですが、現場にフル・サイズのを持ってきやがって、ふざけんな!ってなったんですが、僻地で撮っていたので取りに行って来いさせると3時間かかっちゃうので、もうそれでやるしかない。
そんな状況でも亜紗美は、結構腕をパンパンにして頑張ってて、ごめんなさいって感じでした。
あまり大柄ではない彼女がでかい銃を使うのは絵的には結果よかったと思いますが、本当はちゃんと小さい軽いものを与えたかったのに、それができなかったのはすまなかったと思っています。」
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――クライマックスのデス・マッチへの導入部は、成田浬のキックボクサーはじめいかにもヤバそうな対戦相手がモニターに映し出され、その中から裏ネットの投票で対戦相手を選ぶ趣向でした。続く死闘は勿論見ごたえがあったんですが、逆にあれだけ候補が並ぶと『死亡遊戯』的な死のトーナメントを期待する向きも多いかと思います。クライマックスを剣豪一人との対決に絞った理由をお聞かせください。それと、対戦候補者のお一人空手マスター役のクレジットが“FUKUMI MITSUTAKE”で、エンド・クレジットで献辞も捧げられてましたが、御家族の方ですか?
「はい、死んだ親父、光武福見へのオマージュで3秒だけ出してます。
勿論空手は全然やってませんでしたが、怖い顔なんでお客さんも納得するだろうと(笑)。
対戦相手の投票場面はちょっとゲーム性を出したかったんですよ。『死亡遊戯』的な展開も考えましたが、僕は既にそれを『サムライ?』でもやっていたので違うものにしたかった。いろいろな好カードがあって、どのキャラクターを選ぶか?あっちの敵の方が面白かったかな?とか思わせつつ、でも投票で剣豪が選ばれるという展開をあえて狙ったんです。」
――そのトレーラーという閉鎖空間での剣豪との死闘で、御苦労された点は?
「あのセットは、実際は壁の色々な所に穴が開いていてカメラを突っ込めるようにはなっていたんですが、壁を動かし人を入れまた壁を動かして閉めて撮影する構造なんです。
サウンド・ステージの空調はガンガンにかけてましたが、箱の中は閉めちゃうとずっと映りこんでもいいように仕込んである照明の熱でもうサウナ状態。
その中で二人の男が走り回って、多いときにはそこにカメラクルー、カメアシに録音部も入ってって撮ってると僕が入れないくらい暑かったですね。
キャストにもスタッフにもすごく大変な状況でしたね。
しかも同時進行で、僕は馘首にした美術部の後任の面接を並行してやっていたという本当にしっちゃかめっちゃかな状態でした。」
――剣豪役のデヴィッド・サクライは、『リザとキツネと恋する死者たち』のチャーミングだけどちょっとダークな個性とは全く異なるリアル・ファイター役でしたが、彼の起用に関してお聞かせください。
「彼との出会いも面白いんですよ。
『サムライ?』がデンマークで配給されたのを彼が見て、非常に高く評価してくれて御本人からフェイスブックで連絡があったのが4年位前で、それ以来のつきあいです。
今回の撮影の少し前にLAに引っ越すので何かをやらせて欲しいという話しがあって、今回の役になったんですよ。
アクションに関しても自分で勉強し、プロの方に師事したりもしてますし、ストイックに体もすごく絞り込んでました。
普通にケータリングなんかで出るものも、非常に気をつけて食べていて、チーズバーガーとか食べないんです。
彼も自分の俳優としての多面性を出したいと思ってる人なので、本作での役は丁度よかったのかなと。」
――そして光武アクションのスパイスとして落とせないゴア描写ですが、本作でも空手での耳引き千切りなどファンには見逃せないものが多々ありましたね。
「ただ今回の発注として、R18にはせずにR15でという話が最初からありましたので、『女体銃?』に比べるとちょっと抑え気味にしたつもりではあります。
それと、耳を引き千切る等の描写は、ハヤテのやっている空手の実際の技なんですよ。
彼のは本当の一撃必殺の殺人空手で禁じ手が無く、極真会館とかのようにスポーツ化されてないんですね。だからいきなり目潰しでくる。
久保さんいわく彼の空手は沖縄空手の「手(ティー)」で、中国から沖縄に渡ってきたカンフーがちょっと沖縄風になったものなんですよ。
動きも小さく、それを映画的にどう派手にするのかが、今回僕と田渕が苦労したところではあるんですけど、蹴りは必ず金的だったり、本当に筋肉を引き千切って動けなくするとかの技がある。だから絶対ハヤテとは戦わないほうがいい(笑)。
今回のゴア描写は僕が要求したことではなく、彼の殺人空手にどういう技があるのかというリストをもらって、それを映像化して行ったものなんですよ。」
――今回、作品に光武印を刻印しつつ、依頼された作品を仕上げたことで、職人監督としての面も大きく開花されたと思いますが、今後の御予定をお聞かせください。
「やりたいと思ってる企画が三つほどありまして、一つは原作もので幽霊が出て来ないホラーを、ちょっと今まで僕がやってきたものとは違うサスペンス・ラブストーリーみたいなカラーでやってみたいなと思ってます。
あと純粋なホラー映画を一本、もう一つはポリティカル・スリラーみたいなものもやりたいなと思ってます。
その他に、雇われ仕事として企画開発中のものも二つほどありまして、そちらはちょっと大作なのでどう進むにしろ時間が必要かなと思ってますが、その二つが実現すると僕ももっと大きなスケールでやれるようになるのと思いますので、楽しみにしてます。」
――では最後に、これから作品を観るファンの方にメッセージをお願いします。
「非常に世知辛い世の中になってきてますので、90分という短い映画ですけど、その間現実社会の嫌なこととかをちょっと忘れられるような、劇中のあの顔をこの顔に置き換えて嫌なやつを殴り倒しているようにとか色々頭の中で考えていただいて、肩の力を抜いて愉しんでいただけたら嬉しいですね。」
(取材・文:殿井君人 2016年7月 マメゾウピクチャーズにて)
▼映画『KARATE KILL/カラテ・キル』予告編 - YouTube
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『KARATE KILL/カラテ・キル』
9月3日(土)よりシネ・リーブル池袋レイトショー他全国順次ロードショー
出演:ハヤテ 紗倉まな 亜紗美 鎌田規昭 デヴィッド・サクライ
カーク・ガイガー カタリナ・リー・ウォーターズ 北村昭博 他
脚本・監督:光武蔵人
エグゼグティブ・プロデューサー:久保直樹
プロデューサー:岡崎光洋/柳本千晶 アクション監督:田渕景也
撮影:今井俊之 音楽:ディーン・ハラダ 編集:サム・K・ヤノ
配給:マメゾウピクチャーズ
配給協力:エムエフピクチャーズ
2016年/日本/DCP/5.1ch/シネスコ/89分/R15+ ©2016 TORIN,INC.
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