ども、超久々に帰ってきました殿井っす。
ずいぶんご無沙汰しちゃったけど、やはりこれは紹介せざるを得ないでしょ!
今年もスペインでの本家映画祭の開催に続き、
“シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2014”が10月25日よりスタート!
▼「シッチェス映画祭」ファンタスティック・セレクション2014
▼『シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2014』予告編 - YouTube
シッチェスに集結した多彩な作品の中から、今年も選りすぐりの6作品が上映されるのだが、
それぞれの製作国ベースでもスペイン、オーストラリア、オランダ、香港、そしてチリ等世界各地のファンタスティック映画大国が並び、
上映作品のレイティングもR18+が一本、R15+が四本、PG12が一本と全体的に刺激度高め。
今回もまた、好き者の期待を裏切らないセレクションと云えるだろう。
そんな上映作品6本を、昨年に引き続き二回に分けて紹介しよう。
まずはこの作品『ゾンビ・リミット』。
スペインでは中心的地位を誇るエンタメ作品製作スタジオ、
フィルマックス(『REC/レック』シリーズ他ホラーも数多くリリース)主催のフリオ・フェルナンデスがプロデュースしたゾンビ禍ドラマ。
人間を生者を喰らう凶暴な存在に変貌させる“ゾンビ・ウィルス”が蔓延した世界。
だが人間の科学は、ゾンビ化し亡くなった患者の髄液から抗ウィルス・ワクチンの抽出に成功し、
ゾンビに襲われ感染した者も感染後36時間以内にワクチンの接種を受けることでゾンビ化から逃れられるようになり、
そうして回復した患者たちは世間から“帰還者(英題のTHE RETURNED)”と呼ばれるようになっていた。
だがワクチンの効き目は永続的なものではないため“帰還者”となった者は生涯ワクチンを接種し続けなくてはならなかった。
やがて世間では“帰還者”をゾンビ予備軍として排除する風潮が高まりつつあり、
そうした一部の過激な集団による“帰還者”及びその支援者への襲撃事件も発生していた。
また“帰還者”の増加に反比例し、ゾンビの数が激減しワクチン抗体の不足は深刻化しつつあった…
というわけでゾンビ襲撃によるゴア描写はポイント的に挿入するに留めている本作は、
今回の上映作品中では唯一レイティング的には小学校高学年も両親同伴で鑑賞可能なPG12指定となっているが、
だからといって油断をすると痛い目にあう。
そう、本作は人肉を喰らう異形の存在としてのゾンビそのものを描くのではなく、
そんな怪物が存在し自分や周囲の者が怪物になりうる世界での、
人間と社会の姿についての思考実験を描いた正しい“破滅”テーマSFなのである。
主人公のケイトは、幼い頃に“ゾンビ・ウィルス”で両親を失って心に深い傷を負いながら、現在は“帰還者”の支援施設に勤務する女医。
恋人の音楽教師のアレックスはワクチン接種を受け続ける“帰還者”である。
彼女はワクチンの増産とウィルス撲滅に向けて精力的な活動を続ける一方で、ワクチン不足が進行する中、独自の裏ルートで恋人のワクチンを余分に確保している。
それでも反“帰還者”過激派グループの脅迫にも屈せず信念を貫きながら、綺麗ごとだけで生きていけないことを体言している実に人間くさいキャラクターだ。
そんな彼女たちに迫る過酷な運命の中で、彼女の決断と行動から浮かびあがっていく、
追い詰められた人間という生物の哀しみが観る者の胸を締め付ける力作である。
スペイン=カナダ合作ということで、
ヒロインのケイトには『コズモポリス』(12)のエミリー・ハンプシャー、
アレックスには『アンダーワールド 覚醒』(12)のクリス・ホールデン=リードら、米・加で活躍の顔ぶれが扮し、
同じくフェルナンディスがプロデュースした捻りを加えた悪魔憑き映画の佳品『エクソシズム』(10)のマヌエル・カルバージョがメガフォンを執っている。
●『モーガン・ブラザーズ』
短編やテレビ作品を撮っていたオーストラリアの新鋭コリン&キャメロン・キアンズ監督によるご機嫌なスプラッター・コメディで、
昨年のシッチェスでは“ミッドナイトエクストリーム・グランプリ”を受賞している。
オーストラリアの大地に、血みどろの100エーカー(原題)が出現?!
粗暴な兄リンゼイと気弱な弟レッグが経営する弱小肥料工場“モーガン・ブラザース”が打ち出した打開策。
それは、人間の死体を原料とした強力肥料の製造だった。
その日もレッグは、荒野で衝突事故を起こしていた車の中から知人の身体を回収すると、
トラックで工場への帰途についたのだが、その途中で男女三人連れのヒッチハイカーと遭遇する。
一度は若者たちの乗車を拒否したレッグだが、その中の女性ソフィーに一目惚れしてしまい、
ソフィーを助手席に、野郎二人は死体も積まれた荷台に載せると、リンゼイの待つ工場に戻り…
兄弟と若者、そして事情を知ってしまった保安官等とのゴアリーな殺戮場面もサービス精神たっぷりに描きつつ、
凶暴な兄の支配下から逃れソフィーとの関係を成就させようと悪戦苦闘する
レッグの惨めったらしくバカバカしくも一途な想いと姿が、
オフ・ビートな笑いを交えて描かれ、その想いの行方には呆れつつも軽い感動と幸福感を禁じ得ない。
R18+作品らしいゴアリーな仕掛けのメインどころは、
『エクスターミネーター』(80)でロバート・ギンティ演じる闇の処刑人が悪徳精肉業者の処刑に用いたり、
『人間ミンチ』(72)で零細ペット・フード業者が、本作と同様に死体という材料の処理に用いたりされた“グラインダー”。
▼The Exterminator (1980) - Theatrical Trailer - YouTube
▼人間ミンチ 【テッド V.マイクルズ・ムービーズ・コレクション】 - YouTube
そういう意味でも、最新“グラインド・ハウス”映画であるともいえそうだが、
処理済みミンチが出てくるところで嫌悪感を想起させるそれらの作品よりも魅せ方が派手で、
長いけど間隔荒めのカッターが高速回転する様はむしろ、
『ファーゴ』(96)や『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』(10)中に出てくる木材粉砕機に近い。
吊られた人体が投入されると吹き上がる大量の血しぶきと、
下からドバッと出てくるトマト・ジュース状の加工物、
そして半身くらいの処理で引き上げられた身体の切断面などは、その方面が好きな方はウキウキしちゃうこと間違いなしだ。
●『トランストリップ』
女子大生のアリシアは、親友のサラに誘われて彼女のボーイフレンドや知人たちと5人でチリにバカンスに行くことになった。
ところが、出発間際にサラは急遽追試を受けるために大学に戻ることになり、
アリシアは親しい者のいない中でのチリ行きになってしまう。
表向きはアリシアに気を遣ってるようでその真意が見えない同行者たちとの異国旅行は、
次第にアリシアの神経をすり減らし、その不安故か彼女の周囲に対する言動もやがて常軌を逸したものになり…
『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』(11)、
『マレフィセント』(14)等でキュートな魅力をふりまいた
ジュノー・テンプルが狂気に陥っていく姿を、
特殊メイク等に頼ることなく、時にはあられもない姿をさらした体当たりの演技で、
昨年のシッチェスで主演女優賞を受賞したサスペンス・ホラー。
サラ役に『エンジェル・ウォーズ』(11)のエミリー・ブラウニング、
行動や態度が実にうっとうしいブリンク役に『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(10)のマイケル・セラ、
と若手共演陣の顔ぶれも充実。
アリシアに生じた異変が、
不安感、心の闇を取り除くための催眠術、そして超自然のデモニッシュな存在、
それらの個別のものだったのか、もしくは重複した結果だったのか、
劇中では明確な答えを提示せぬままの作劇には賛否が分かれそうだが、
それが英題どおりの魔術的な雰囲気を作品に与えている。
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“シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2014"
配給:松竹メディア事業部
2014年10月25日(土)より東京:ヒューマントラストシネマ渋谷 大阪:シネ・リーブル梅田 名古屋:シネマスコーレ 福岡:福岡中洲大洋にて6作品一挙公開!!
『キョンシー』、『ボーグマン』は特集上映終了後も通常興行として上映予定!
▼「シッチェス映画祭」ファンタスティック・セレクション2014
『ゾンビ・リミット』
THE RETURNED
2013年/スペイン=カナダ/98min/PG12
(C)2013 CASTELAO PICTURES, S.L. AND RAMACO MEDIA I, INC.. ALL RIGHTS RESERVED.
『モーガン・ブラザーズ』
100 BLOODY ACRES
2013年/オーストラリア/90min/R18+
(C)2012 Cyan Films Pty Ltd, Filmfest Limited, Screen Australia, Film Victoria and the South Australian Film Corporation
『トランストリップ』
MAGIC MAGIC
2013年/チリ=アメリカ/98min/R15+
(C)2013 MAGIC, MAGIC LLC
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