どもども。お久しぶりの殿井です。
5/17より新宿シネマカリテでは、劇場オープン1周年企画として
“カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2014”(カリコレ2014)
と銘打った特集上映が開催され、新作・旧作・未公開作・邦洋とりまぜたファンタ系作品35本が上映される。
▼ 【カリコレ2014】 カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2014 30秒予告 - YouTube
「まさにプチ・東京ファンタな状況じゃないの!」
…と思ったら、しっかり東京ファンタ回顧として『銀河鉄道の夜』『ムトゥ 踊るマハラジャ』なんてのもイベント付きでやるようだ。
以前にとりあげた
“シッチェス・セレクション”(今年も秋に開催が決まったようだ)や、
“未体験ゾーンの映画たち”など、
これまでだったらダイレクトに未公開ソフトになりそうな規模の作品が、
拡大公開は望めなくてもきっちり劇場で観れる機会が増えたのは、
デジタル上映の利点の一つとして素直に歓迎だよね。
実際、新作の中で事前に観ることができた3本は、
そんなスクリーンで観てこその傑作ばかりだった。
今回はその中でも、迫力という点でまさにスクリーンで観るべき1本として、
5月17日より上映されるロシア製パニック超大作『メトロ42』を紹介しよう。
その規模と駅構内の美しさで世界でも有数の存在として知られるモスクワ地下鉄。
しかし、周辺に張り巡らすように作られた冷戦時代の軍の塹壕で周囲の地盤は弱体化し、
施設・路線自体の老朽化も進み、
地上の凄まじい車のラッシュや工事の振動がそれらに拍車をかけていたことに多くの者は気づいてなかった。
そんなある日、ベテランの地下鉄整備員が地下トンネル内でのかすかな水漏れに気づき、
上司に報告するも大酒呑みだった男の話は信じてもらえなかった。
モスクワ市内の病院の勤務医アンドレイは、
多忙の中で妻のイリーナが浮気をしていることに気づいているが言い出せずにいた。
そして幼い娘のクシューシャを学校に送って、
一緒にラッシュの地下鉄に乗っていたところ、
乗車していた地下鉄の先頭で、突如トンネルの天井が崩れ大量の水が流れこんできた。
急停止した車内は、衝撃で宙に舞い次々と将棋倒しになる乗客の悲鳴で阿鼻叫喚の地獄と化す。
多くの死傷者が出た中で、必死の脱出を試みる乗客たち。
アンドレイもまた、折り重なって倒れた乗客の中からクシューシャを救い出すと、
居合わせた数人の乗客と決死の脱出を試みるのだが…
作品を観る前は、2時間超えの上映時間に、
なんでもこれが25年ぶりのパニックものとなるらしいロシア映画ということで、
近年のファンタ系大作の躍進よりも、むしろ
「大丈夫か?延々無駄なドラマじゃね〜の??」
なんて余計なことを思ってたのだが、
どっこいこれがとんでもなく力の入った大娯楽スペクタルだった。
浮気がどうのとかの人物紹介から災厄の前兆くらいまでは、
まぁ手堅いかなって…くらいの印象なんだけど、
地下でのディザスター描写がはじまるとまさに一気呵成!
崩落するトンネル、
浸水する濁流、
急停車した車内で吹っ飛ばされる人・人・人!
流石に117メートルにも及ぶセットを作って撮影しただけあって、
生の濁流、多くのエキストラがふっとび、流される容赦のない迫力と、
その場の空気感のリアリティにただもう感動するばかり。
日本でも数年前に、台風の影響で新橋付近に濁流が流れ込んでという
一見大作風テレビ局映画があったけど、
ホント、あの作品の関係者には本作を観て猛省してもらいたいものである。
因みにこのメイキングの様子の一部が、既に公式頁にアップされているので、こちらも要チェックだ。
コントロール・ルームが状況を掴めない中で、
手前の車両を動かすため高圧電流を切れない(そして逃げ惑う人々の足元には水が!)とか、
モスクワ川からの濁流で地下鉄全線(そしてロシア中心部自体も)水没の危機が迫る中での救出タイムリミットなど、
サスペンスの盛り上げ方も上々、
かつサバイバーにも容赦無しの描写の連続がアッパレ。
そして、主人公と脱出行を共にする生存者たちのまさに王道の群像劇も、
事故で知り合ったばかりの若いカップルに、
酒呑みの看護士、
うだつのあがらないビジネスマンに加えて、
御丁寧に妻の浮気相手まで居合わせて話をややこしくさせるサービスぶり(笑)で、
個性的だけどあくまで市井な人々の姿をすくい取り好印象だ。
出演は、アンドレイにジュード・ロウ共演の新作『BLACK SEA』が控えるセルゲイ・プスケパリ、
妻の浮気相手に『オーガストウォーズ』のアナトリー・ベリィら、
日本ではさほど知名度が高くない実力派が扮し、それもいい意味で作品のリアリティに貢献している。
あっ、浮気な三角関係&災厄に家族が巻き込まれたことで、
地上でヤキモキしどうしなエロいんだけどいらっとさせられる不貞妻のイリーナは、
『ウルヴァリン:SAMURAI』でヴァイパーを演じていたスヴェトラーナ・コドチェンコワだ。
娘のクシューシャを演じる子役・アンフィサ・ヴィステンゴーゼンも小生意気そうなところも含めてなかなかキュート。
監督はドキュメンタリー畑での受賞歴があり、
一般作の『ダークワールド』等が未公開作品としてソフト・リリースされているアントン・メゲルディチェフ。
ボクは本作が初見だったが、
ロシアファンタスティック映画の新たなつくり手ということで、
ティムール・ベクマンベトフと同様、今後も注目していきたいと思える逸材だ。
シネカリ2014での上映に続き全国でも順次公開されるが、
既にソフトのリリースも8月に決まっている模様。
メトロ42[DVD] エイベックス・ピクチャーズ 2014-08-06 by G-Tools |
でも、この迫力は、絶対に劇場のスクリーンで味わってこそ。
このジャンルを愛する者は、迷わず劇場に足を運ぶことを強くお薦めする。
最後に、日本でも出ていたロシア(というかソ連時代だね)のパニック(関連)作品の動画をあわせて紹介しておこう。
●『エア・パニック -地震空港大脱出-』(80)
ソビエト時代にモス・フィルムにより製作された、
航空パニック超大作…ではあるが、
途中で遭遇する主人公たちとは別の飛行機のハイジャック場面で、
自ら人質になる我らが栗原小巻!なんてお楽しみ?もあるけれど、
前半のドラマ部分は基本かなり退屈。
でもそれを乗り越えれば、被災者救助に行った空港で、
飛行機に迫る石油コンビナートを破壊して炎上する土石流を避けての離陸なるか!?という件を、
しっかりミニチュア組んでの特撮大ディザスターとして見せてくれますよ。
さらにその後も、コントロール不能な機体を巡っての爆笑驚愕な展開が!
●『SOS北極.../赤いテント』(70)
1928年、ノビレを隊長とする北極探検飛行船“イタリア号”の遭難事故とその後を、
晩年のノビレの元を関係者の幻が訪れての回想形式で描いたイタリア=ロシア合作による実録ドラマ。
パニック映画と呼ぶにはいささか無理はあるものの、
北極ロケとヒロインのワレリアを演じたクラウディア・カルディナーレの美しさは特筆もの。
なお日本公開版(DVDも)は哀感あふれるアレクサ-ンドル・ザツェーピンの劇伴が流れるロシア版だが、インターナショナル版の音楽はエンニオ・モリコーネ。
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『メトロ42』
METPO
2012年/ロシア/132min
配給:プレシディオ
2014年5月17日(土)よりシネマカリテ にてロードショー!
(C) LLC PRODUCTION COMPANY OF IGOR TOLSTUNOV , 2012
▼映画『メトロ42』公式サイト || 5月17日(土)よりシネマカリテほか全国順次公開!
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