『ミートボールマシン オリジン』伝説のインディーズ・ヴァイオレンス待望のDVD初リリース記念! 山本淳一監督インタビュー(中編)

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下忍エコタロウめにござりまする。
前回に引き続き、殿井君人氏×『ミートボールマシン オリジン』山本淳一監督の対談記事、その中編をお送りするでござる。

ミートボールマシン オリジン [DVD]
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苦労話や今だから話せるヤバい(!?)話まで、今回も秘エピソードてんこ盛りでござるよ。
作品のファンのみならず、自主映画制作に興味のある方はぜひお楽しみあれ!

「イレイザーヘッド」に通じるコマ撮り

(殿井)
『ミートボールマシン』は自主とはいえども、コマ撮り特撮の多用とか、美術関連とか等でやはり、結構な予算と日数を要した大作ですよね。

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(山本監督)
撮影期間は2年くらいで、製作費はまとめて払ったわけじゃないんでもうわからないんですが、数十万円だったかな。

撮影のロケ・セット兼コマ撮り等の作業場兼作りものの倉庫として、取り壊しが決まっていたアパートを撮影期間通して借りていたのが、一番費用が嵩んだのかな。
でも、それくらいですよ。

コマ撮りは、自作全てで使いたいと思ってるくらい好きなんです。
この作品の場合、そんなに細かい動きのコマ撮りではなかったので、カメラマンの美佐田(幸治)君とずっと二人で窓締め切ってやってました(笑)



工場等の撮影は川崎あたりですか?

結構、異界感があるたたずまいで、アルバート・ピュンあたりが撮る風景にも通じるような…
ってそれじゃ褒め言葉になってないか(苦笑)


ハハハハハ、『サイボーグ』とかも嫌いじゃないですけどね。

撮影は大田区の城南島のあたりです。
ちゃんと申請を出して許可をとって行いました。

ロケ地選びは事前に調べてというより、あそこに煙突が見えるから行ってみようぜみたいなノリでしたけど。

そうですね、ディヴィッド・リンチが好きで『イレイザーヘッド』とかを、意識してはいました。

イレイザーヘッド デイヴィッド・リンチ リストア版 [Blu-ray]
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なるほど。ネジの動くところのコマ撮りとかは、シュワンクマイエルとかブラザース・クエイっぽいかなとか思ってましたが、そういわれればコマ撮りも『イレイザーヘッド』の蛆胎児とかに通じてますね。

殺戮描写は「フランケンシュタイン」


ところで、ミートボールマシン同士のバトルは勿論ですが、殺戮描写は今観ても結構きてますよね。

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特に主人公が激情から誤って少女を殺害してしまう件の容赦無さは、ホント山本監督って酷い人だなと思いましたよ(笑)

その前のボールの幻想とかは『世にも怪奇な物語』のフェリーニ編“悪魔の首飾り”オマージュですか?

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すいません、多分それ観てないです。
少女の殺害自体は、ユニバーサル版フランケンシュタインです。

フランケンシュタイン [DVD]
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王道でしたか。
ところで、本作は8ミリで撮影したものを、VHSで編集したとうかがってますが、なぜそのような手法を用いたのですか?


当時まだ8ミリで編集する方法がわからなかったんじゃないっすかね(笑)
リワインダーとかあったけど、どう使っていいのかわかんねぇなあと。それでダビングして、ダビングして…

まぁ、最初はそれで仮編集版VHSを作って、それを見て本番の編集をという気持ちだったんですが、VHSができたら満足しちゃった…みたいな。

もう時効?ヤバい撮影エピソード


そのほか、撮影時の御苦労話とか、印象に残っているエピソードとかおきかせください。


そうですねぇ…
でも、あんまり撮影に関して苦労したって記憶はないですね。

役者さんにはあのミートボールのかっこうのまま大崎辺りまで歩かさせりとか、無茶はしてましたけど。

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あれ着てると身体が圧迫されて、頭が痛くなるらしいです。
だから、僕より役者さんは大変でしたよね。

そうだ、中盤でミサイル・バトルがありますよね。

▼メイキングから、そのシーンの撮影に向かうスタッフ
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相手が発射したミサイルを回転しながら掴んで投げ返すところですよね。
あれ『ロボフォース 鉄甲無敵マリア』でしょ!

▼Roboforce Trailer / I love Maria Trailer (HQ)


よく御存知で(笑)

あの撮影は、昭和島の細い路地を使ってのゲリラ撮影だったんですが、爆煙の効果に使用した消火器の泡で路地をめちゃくちゃに汚して逃げてきました。

いや、掃除しようと思ったんだけど、消火器の泡って水をかけると玉になっちゃうんですよね。
これは掃除しきれねぇ、逃げろって(笑)


まぁ、もう時効ですかね(苦笑)

ミートボールマシンのコスチュームは、美術にもクレジットされてる山本監督御自身の作成ですか?


デザインは僕がやりましたが、コスチュームの製作はカメラマンの美佐田君です。
全部発砲スチロールを削って、その上にラテックスを塗ってます。

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あれは、発砲スチロールというか、建築用のスタイルフォームってのがあるんですけど、
それを夜中に工事現場に忍び込んで
絶対そこに置いてあったのを「あっ、捨ててある!」とか言って、持ってきちゃったんですよね。

畳一畳分くらいあるのを3枚くらい持ってきて活用しました。

絶対ヤバイのに、その時はハイになっていたからそれを担いで夜道をワ〜イと叫びながら走りましたっけ(遠い目)


時効…なのか?でも、絶対載せる(爆笑)

そのあたりが予算がかかっているようでかかってないという意識に繋がっているわけですね。
よいこのクリエイター諸君は真似しちゃ駄目だよ(笑)

レイトショー公開までの内幕


ところで、本作は繰り返しになりますが、自主配給により中野武蔵野ホールでレイトショー公開されましたが、それはどういった経緯だったのでしょうか?


実は元々は商業公開しようと決めていたわけではなかったんです。

ただ中野武蔵野ホールは『鉄男』を上映した映画館でもあったし、
本作でミートボールマシンの一人を演じた出演者であり、ミニコミ&WEB映画マガジン『映画バカ一代』の編集をされていた内屋敷保さんがシネラセットに勤められていて、中野の方とも仲がよく

「一度見せてみたらいいじゃん?それでプロの意見を聞いてみれば」

と繋いでくれたんです。

それでお見せしたら

「やろう!」

といってくれたんですね。

そのココロは、当時中野って自主映画の上映希望持込がこぞってあったらしいのですが、
ほとんどが真剣にやれ!と言いたくなる様ななめた作品ばかりで、そうした作品群に対して、
「これぐらいのものを持って来い!」
という意味で、かけてくれたそうです。

具体的に言えば…(掲載自粛)

武蔵野館ではレイトショー公開だったんですが、その時昼間は三池崇史監督の『日本黒社会』をやっていたんですよ。

▼三池崇史監督 近影
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すごくビビッて、三池監督にスジを通さないとということで、御挨拶に行き『ミートボールマシン』をお渡しました。


まさに山本監督御自身がしかりですが、劇場は東京ファンタ上映中の渋谷パンティオンとも通じる客層で、結構入ってた記憶がありますし、やはり同族には受けがよかったですよね。


でも、アンケートはすごく酷評も多かったですよ(苦笑)
さっきの編集の話にも関連しますけど、画質もクリアとはいえなかったですし、開映早々に帰る女性とかもいらっしゃいましたね。


慣れない女性の方にはそりゃ厳しいでしょ(笑)
でも、だからこそ、それって勲章じゃないですか。

監督第3作「ガールフレンド:ストラトス」


それに、続く第3作『ガールフレンド:ストラトス』(01)では、一転してウェルメイドなガーリー・アクション・ムービーをものにするわけですし。

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「〜ストラトス」は、コインロッカー・ベイビーとして生まれ育った孤独を抱えたヒロイン・大井町子の大事な人との出逢いとそれによって変わっていく姿が瑞々しくて実によかったなぁ。

本音を言うと『ミートボール〜』も大好きだけど、ボク的にどうしても再見したいと思ってたのは、むしろ『〜ストラトス』の方でしたし。
この作品を撮ろうと思ったきっかけは?

やはり山本監督の理想の女性像の投影だったりしたんですかね?


う〜ん、潜在意識とかではあったのかもしれないけど、意識してということは全くなかったですね。
なんかの子の映画が撮りたくなっちゃったって感じだったかな。

それと『ミートボール〜』でホラーってわけじゃないけど、そっち方向のやりたいことをある程度やっちゃったかなというのもありましたし。
何より『ミートボール〜』とか作り物が多過ぎたので、作り物がない映画で行こうって。


素直すぎて、聞かなきゃよかったかな(苦笑)


そう、題材としてはコインロッカー・ベイビーには見つけられた場所の名前がつけられるっていうドキュメンタリーか何かをみたのが、アイデアのきっかけでしたね。


『〜ストラトス』も、2002年のゆうばりファンタのオフシアター部門での上映でしたよね。

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ボク自身フリーになるのがきまった頃で、公式頁の取材スタッフとして初めてゆうばりファンタに参加したのがこの年でした。
だから東京ファンタのパンテオンの非常階段とか以外では、この時が山本監督と初ニアミスだったのかもです。

作品をちゃんと観れたのは、その後の池袋シネマ・ロサでの公開時になりますが。


『〜ストラトス』は劇場公開を前提に製作に臨んだ作品で、ゆうばり以前にロサでの公開も決まっていたんですよ。
なので劇中に出てくる映画館の場面は、ロサで撮ってます。

それと当時、撮影後に結婚が決まっていたので、これが最後の映画になるかもしれないという意識で撮影に臨んだ記憶があります。
実際、結婚後は堅気になってデスクワークに勤しんだ時期もあったんですが、もうノイローゼ気味になっちゃって続きませんでした(笑)


人に歴史ありですな。

それはそれとして、この作品はヒロイン町子を演じた長曽我部蓉子さんをはじめ、いい味で脇を締められてる田中要次さんとか、役者の方もプロの方を多数起用されてますよね。

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そうですね。ただ皆さん、当時からインディーズにも理解がある方ばかりで、役者やスタッフそれぞれの別のインディーズ作品にも参加されていての繋がりというのが大きかったです。


なるほど、それにしても長曽我部蓉子さんには、萌え死にしそうでしたよ。

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本作の後に『修羅雪姫』で建御雷家の刺客の双磨でキレのいいアクションを披露してるのを観て

『ガールフレンド〜』のバトルも決まってたよなぁ…

と納得してたんですが、その後聴き及んだ話によると…


はい、彼女はアクションの人ではなかったんです。
『〜ストラトス』のファイトも決めポーズだけとってもらって、アクションは吹き替えですね。

だからその後、ドニー・イェンに訓練されて『修羅雪姫』だから「すげぇ〜!」って思いましたよ。
でも長さん、ドニーにはこの作品やってたって言わなかったらしいですよ。


なるほど、それもまたフィルムのマジックですね…って、撮影はDVでも。


ただ、自分はあの映画あんまり好きじゃねぇなってのはあったんですよね(笑)


えぇっ、またまた聞くんじゃなかった(苦笑)
それはどういったところが?


やはりもっとフィルムっぽく撮りたかったとかね、ただただ反省ですよ。
嫌いな作品ではないし、女性の観客の多くの方々からは気に入ってもらえましたが。

でもこれも、ロサで上映時のアンケートで酷評されてたのがあったなぁ。
人生で観た酷い映画の二本に入るって。

その方のもう1本ってなんだったんだろう?
血まみれ農夫の侵略かなぁ?(苦笑)

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そりゃ、ベクトル違いすぎでしょ!(笑)

(後編に続く)

『ミートボールマシン オリジン』伝説のインディーズ・ヴァイオレンス待望のDVD初リリース記念! 山本淳一監督インタビュー(後編)

『ミートボールマシン オリジン』伝説のインディーズ・ヴァイオレンス待望のDVD初リリース記念! 山本淳一監督インタビュー(前編) - 映画宝庫V3

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ミートボールマシン オリジン
2014年2月21日(金)WHDジャパンよりDVD RELEASE!
 
定価:3334円
カラー/モノラル/収録時間:70分+(映像特典34分)
仕様:片面一層/スタンダードサイズ/モノラル
制作年:1999/制作国:日本/シャンル:SFアクション
監督・脚本:山本淳一
撮影:美佐田幸治
出演:渡辺稔久/佐々木聡子/相馬里乃/内屋敷保/黒沢ヒロオキ/塙雅夫/大橋茉未奈

B00H17Z1HWミートボールマシン オリジン [DVD]
WHDジャパン 2014-02-21

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【INTRODUCTION】
■監督は「ブタカリ。」や「口裂け女 リターンズ」「武蔵野線の姉妹 」等で知られる山本淳一。

 彼が1999年に制作し話題を呼び、後に山口雄大氏との共同監督でリメイクされたオリジナル版。
■その残酷描写と奇妙なストーリーが公開時からも話題だった。
■公開当時よりさらに手を加えたディレクターズカットによる世界初登場の完全ノーカット版。。
■山本淳一監督の原点で短編映画『リンガマニア』も同時収録。
■販売版のみジャケットは鈴木智也(漫画家)先生執筆のイラスト。

【STORY】
恋人サトミはある日、ゴミ置き場にあった謎の物体に取り憑かれてしまう。
そしてその直後に現れた謎の男は強力なパワー・ミートボールマシンによりサトミを惨殺する。
主人公のマサヤは謎の男との死闘の末、マカオ博士に助けられるが・・・

今、更なる壮烈で残酷な最後の闘いの火蓋は切って落とされた。
その血みどろで残酷、衝撃的な描写とストップモーションを駆使したSFXは今観ても斬新!

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