まいど、下忍エコタロウめにござる。
先週からお送りしている殿井君人氏×『ミートボールマシン オリジン』山本淳一監督の対談記事もいよいよ最終回。
今回も「日本におけるゴア描写の限界」など、興味深い濃い話が展開しているでござるよ。
ホラーファンはぜひご堪能くだされ!
●学生たちとの作品も
(殿井)
で「ガールフレンド:ストラトス」から、数本の短編作品を撮られた後、
05年にリメイク版『MEATBALL MACHINE -ミートボールマシン-』を共同監督し、
続く06年の『DRAMAGIX SEIYU ENERGY Princess Cat〜プリンセスキャット〜』以後、コンスタントに作品を発表されてますよね。
また監督業と並行して、山本監督の母校の姉妹校である東放学園音響専門学校で講師もされてるんですよね。
昨年は学園祭にお邪魔させていただいた時に、
生徒さんとプロのキャスト・スタッフのコラボによるホラー・オムニバス『3テラーズ』を拝見しましたが、
実習作品といえどホラーなシーンに特化してかっちり撮られていて見ごたえがありました。
このシリーズは何本くらいあるのでしょうか?
講師をはじめたのが03年からで、監督した実習作品は
長さんにも出てもらった『オンサくん』、
山本版“パシフィック・リム”な『出撃せよ!最強ロボ バンブー』、
カンフーをやらないカンフー映画『シャランラの気持ち』、
自主映画野郎のフェイク・ドキュメント『レジェンド・オブ・伝説 井戸居豊』、
ホラー・コメディ『夏休みのいけにえ』、
娘がロボットになり悩む男の姿を描いた『鉄甲無敵少女』、
そして『3テラーズ』だから、7本ですかね。
もう、タイトルからして趣味まるだしというか(笑)
『オンサくん』と『バンブー』はこそっとビデオで拝見させていただきましたが、一般公開しないのはもったい無い感じですよ。
そのほか、ミライ・アクターズ・プロモーションの卒業制作のシリーズになるんでしたっけ?
こちらは劇場公開もしている“TWILITE FILE”シリーズの『フォーク&バレット 〜サヨウナラ戦争〜/TWILIGHT FILE V』(08)も監督したりと、映画を志す方とのお仕事も多いですよね。
▼映画「TWILIGHT FILE ?」『フォーク&バレット〜サヨウナラ戦争〜』
そうですね。
まぁ、お若い方の傾向として、あまり作品を見ていなかったりで、イメージを共有し難かったりする部分はありますね。
殿井さんとかファン同士だったり、同年代のスタッフ・キャストであれば、
「ここは『◎●』の感じでさぁ」
とか、タイトルとシーンでこちらの意図をわかってもらえるんだけど、必ずしもそうスムーズにはいきません。
でも、そうした中で、こちらがあげた作品を観てくれて、
面白かった、これでいきます!
といった反応が帰って来ると、クリエイター以前のジャンル・ファンとして嬉しかったりもしますね。
●ミュージカルと”DEADEND"の意味
ところで、氏神一番主演の近未来ヒーロー・アクション『劇場版 カブキングZ』(08)。
そして、今観ると元祖『エンジェル・ウォーズ』なテイストも感じられる前述の『フォーク&バレット〜』には、
いきなりミュージカル的な展開が入るという共通点がありましたが、これはやっぱりお好きなんですか?
すいません、全然できてないんですけどね(苦笑)
なんかねぇ、ミュージカル場面をちゃんと撮りたいんですけど、撮れないんですよね。
ちゃんと撮ればいいのにね。
『フォーク&バレット〜』の時は、本当は漫才をとるはずだったんですが、
劇場借りれないとか、
観客のおじいちゃんおばあちゃんを集めるのが無理…
っていわれての苦肉の策ですかね。
実はこの二作品はすっげぇ呪われていて(…以下自粛)
なるほど、人の不幸は蜜の味的に面白過ぎるので、載せません。
▼映画「劇場版カブキングZ」予告編
ところで、『ミートボール〜』と『エクスリベンジャーズ ひきこさん ミ・ナ・ゴ・ロ・シ』(10)は、
どちらもエンドタイトルが“DEADEND”になってましたが、特にこの二作に込めたドンズマリの意味とは?
なんもないです。カッコいいなぁって(笑)
………
気を取り直して、ホラー系の作品についてうかがいます。
●個性的な山本”ホラー”の数々
先ほどの『エクスリベンジャーズ〜』、
『口裂け女 リターンズ』(12)、
そして『しあわせになれない悲しい花 〜呪いのドライブ〜』(10)、
これらの作品は、都市伝説をベースにしたJホラー的なネタですが、それぞれアクション要素が高いものになってますよね。
『エクスリベンジャーズ〜』は“ひきこさん”シリーズの3本目で、
1・2作目が同じような話だったのでもう繰り返しをやってもしょうがないだろうというのがありまして、
自分的にはレニー・ハーリンの『エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃』で行こうと。
そういう格闘戦の方向に持っててもいいんじゃないかって作ったんですが、製作側からはメチャ怒られました(苦笑)
▼エクスリベンジャー ひきこさん ミナゴロシ【予告】
『口裂け女』も4本目で、個人的に2作目が大傑作だったのでどうしようかと。
それで基本は、口裂け女って健常者が事故等で怪物化してって設定なんだけど、
生まれながらの怪物としての口裂け女で描く方向にシフトし、
マスクも顔を隠すためだったのを噛ませないためという風に変えてみました。
そう、『九十九本目の生娘』をやりたかったんですよ。
部落ホラーというか、
邦洋問わずに『脱出』や『サザン・コンフォート ブラボー小隊 恐怖の脱出』とか、
田舎で酷い目にあう作品に惹かれるんです。
▼Southern Comfort-Trailer
ただこの『口裂け女』は一番最初は韓国との合作が予定されていて、
その時に書いた最初のプロットは、
韓国人の女の子と日本人の女の子があるマンションでルームシェアしていて、
その韓国の女の子が実は虐待の調査官で、マンションで近親相姦で生まれた子が虐待されてるという噂を調査していたのだが、実は…
というのだったんですがダーティ過ぎるといわれてしまって。
近親相姦で畸形が生まれるってテーマも好きなので『恐怖のいけにえ』路線。
でも、プロデューサー的には『ラスト・サマー』みたいのをやりたいといわれちゃいまして。
それ、全然違うだろうってね。
だから本当は、完成作も一つの旅館限定での話しにし、
旅館の地下室に口裂けが居てって線でプロット書き直した直後に『武蔵野線の姉妹』の撮影が入ってしまい、脚本はお任せする形になりました。
本当は口裂け以外にも、目がでっかい女とかそんなのも出したいって言ってたんですがね。
『バスケットケース2』みたいなフリークスてんこ盛りイメージで。
でも、無理だから一人にしなさいって言われた(苦笑)
▼映画「口裂け女 リターンズ」予告編
●ホラー表現規制の現実
『〜リターンズ』は劇場に行けなくて、山本監督から話を聞いてからDVDで観ましたが、
事前に刺す描写等は一切撮らせてもらえなかったとうかがっていて。
確かにそれはみせてなかったけど、
口裂けに頭をかじらせたりとお聞きしたよりゴア描写も健闘されていた印象なんですが…
やはり規制は厳しいのですか?
ホラーを作れと依頼して来て、でもホラーな表現をしようとするとそれは無理だと。
もう、オーダーが矛盾してるんですよね。
多くはアイドルを主演に撮りますから、レイティングはあげられないし、血で顔を汚すなとか。
順撮りは無理だから予算的に服を汚しちゃいけないとか、低予算故の悲しさもありますよね。
すごくストレスは感じるけど、結局そんな内部事情は見てくださる方はわからなくて当然なんで、
監督ぬるいな…とかになっちゃうしね。
そう、頭をかじる場面とか入ってますけど、やはりナイフとか現実的なものは駄目なんだそうですよ。
あとはやっぱり黙って撮っちゃうしかない(笑)
本当はギャスパー・ノエ監督の『アレックス』での、
ぶん殴られて顔が変わっちゃうあんな感じの特殊メイクとかもやりたかったんですけどね。
『しあわせになれない悲しい花〜』は冒頭直後の病院前での死の連鎖が『ファイナル・デスティネーション』的な気合の入り方でよかったですが、全体のトーンはむしろダウナー系でしたよね。
ルチオ・フルチも大好きで、この時は『マッキラー』を観て「これだ!」と思ってた頃ですね。
お気づきかも知れませんが正直に言えば、J−ホラー的なものにはあまり興味はないんです。
▼マッキラー Non Si Sevizia Un Paperino - TRAILER - Lucio Fulci
やはり(笑)
でもそれがいい意味で山本ホラーの個性になってるんじゃないでしょうかね。
『ブタカリ。 〜呪いの使徒〜』(12)も呪いの連鎖という王道テーマながら、
現出される呪いの実態が全裸のおっさんとそしてさらなる進化系が…
は観てのお楽しみですが。
『ブタカリ。』は、恐ろしいほど低予算で、インパクトのあるキャラを出したかったので、
ジェフ・フランコの『人喰い魔神・裸女狩り』を参考にしました(笑)
『ブタカリ。』のアイディアの元は都市伝説のコトリバコをベースにしているのですが、
この映画を見た、その筋の方(どの筋?)から
人を呪い殺すには、生け贄として、最低でも犬三匹は必要
と指摘を受けました…
そんな、ネットの全犬好きを敵に回すようなことを。
でもその筋の人なんかいいなぁ(笑)
▼『ブタカリ。〜呪いの使徒〜』DVD予告編
●リメイク版『MEATBALL MACHINE -ミートボールマシン-』
さてさっきはサクッと流しましたが、締めに向けて、
リメイク版になる『MEATBALL MACHINE -ミートボールマシン-』(05)についてもお聞きしましょう。
MEATBALL MACHINE-ミートボールマシン- [DVD]
▼MEATBALL MACHINE -ミートボールマシン-予告編
久々に『ミートボール〜』を見直した時にはじめて気が付いたんですが、
リメイク版共同監督の山口雄大監督はオリジナル版にも製作協力でクレジットされてましたね。
当時、同じビデオ屋でバイトしてたんですよ。
東京ファンタでもそれぞれで席取りしたり、すごく仲はよかったですね。
それで『ミートボール〜』の撮影も手伝ってくれて。
ただ、ライバル意識じゃないけど、互いに性格で似てる部分も多く、趣味趣向も共通してる部分が多かったので同属嫌悪的な部分も多少あったのかな(笑)。
『MEATBALL〜』のDVDのメイキングによれば、
雄大監督が山本監督をキングレコードに紹介しリメイクがスタート
予算・スケジュール内で撮了するも、その後追加撮影の話が出るも当時体調を崩された山本監督は追撮に参加できず、雄大監督の追撮で完成に至った
ということが、山本監督以外のスタッフの証言で語られていますが。
基本的にはその通りですよ。
確かに、
僕が撮りたいもの、
雄大監督が撮りたいもの、
キングの山口プロデューサーが作りたいもの、
それぞれの『ミートボール〜』に関するアプローチの違いもありましたが、
何よりも初めての製作ベースからの商業作品ということで、
プロの現場でわからないことが多々ある中で、気負いすぎて疲弊してしまったんです。
だから、体調を崩したためとはいえ、結果的にケツまくってみたいな形になってしまった点では、何よりも『ミートボール〜』という作品自体にも悪いなと思っている。
そんな中で、フェイスブックをはじめた頃から、殿井さんのみならず海外からのものも含め少なからずの方から
『ミートボールマシン オリジン』見たい!
との声をいただいたのは、正直言えばちょっとビックリした感じだったし、でも嬉しかった。
やっぱり、自分的にはリメイク版での失敗というのがあり、
それにいつかは決着をつけたいというのはあったし、
常にパート3的なものの企画書を持ち歩いている自分がいるわけです。
今回の初DVD化は、そんなきっかけになればなとも思ってるんです。
ボクはリメイク版も楽しみましたし、それを落とそうという気はないんですが、確かにオリジナルを見た時とは随分勝手が変わった印象を受けました。
とにかくゴアなんだけど、真面目というか…
自分自身は、『死霊のはらわた』に対しての『死霊のはらわた2』的な膨らませ方をという風には思ってたんです。
パワーアップしつつ、等身大で笑えるような。そんなあたりも含めて、どこかで3作目をやりたいですね。
うん、オリジンによる完全新作、是非期待したいです。
そんなわけで、これを読んだ方はまずは『ミートボールマシン オリジン』のDVDを御購入ください!
ミートボールマシン オリジン [DVD] | ||||
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●今後の山本監督の活動
さて、最後に山本監督の今後の告知などをお願いします。
僕が監修をした投稿心霊モノ『放送デキナイ禁断霊映像』のレンタルが開始されます。
霊現象だけでなく、フリークスやサイボーグが登場します。
それと、都市伝説の怪人トンカラトンらしき奴らの撮影にも成功しました。
それと『12星座とラブる!』という短編テレビ・シリーズ全12話のオープニング&エンディングとその3話分を監督してまして、近日放映予定らしいです(笑)
またBS-TBSで3月放映予定の短編ホラーを撮ります。スマホと連動した面白い企画です。
こちらは『クソすばらしいこの世界』の朝倉加葉子監督作とセットですね。
それとボクがプロデュースした『ランナウェイゲーム 逃走遊戯』の続編になります
『サイコギャンブラー 破滅的遊戯』を監督して、こちらは公開待機中です。
▼サイコギャンブラー破滅的遊戯予告編
一時期の三池監督を思わせる多作ぶりじゃないですか!
ただ忙しさと収入はつりあってくれないんですけどね(苦笑)
普通のコメディとかもやりながら、今はやっぱりスラッシャーものをやりたい、大好きなフルフェイス殺人鬼ものとか。
でもやはり一番やりたいのは、もう一度『ミートボール〜』に決着をつけるってのに尽きますが。
タイトル含め問題もいろいろあるんですが、周りにのせられ動くタイプなので、この機に一気に行きたいなと。
楽しみにしております。
本日は、お忙しいところをありがとうございました。
そいじゃ、河岸変えて呑みに行きましょう!
いいんだけど、注文した料理を写メるまで箸つけちゃ駄目!ってのは、やめてよね(笑)
(2013年12月某日 大井町付近の喫茶店にて)
▼『ミートボールマシン オリジン』伝説のインディーズ・ヴァイオレンス待望のDVD初リリース記念! 山本淳一監督インタビュー(前編)
▼『ミートボールマシン オリジン』伝説のインディーズ・ヴァイオレンス待望のDVD初リリース記念! 山本淳一監督インタビュー(中編)
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『ミートボールマシン オリジン』
2014年2月21日(金) WHDジャパンよりDVD 絶賛RELEASE中!
定価:3334円
カラー/モノラル/収録時間:70分+(映像特典34分)
仕様:片面一層/スタンダードサイズ/モノラル
制作年:1999/制作国:日本/シャンル:SFアクション
監督・脚本:山本淳一
撮影:美佐田幸治
出演:渡辺稔久/佐々木聡子/相馬里乃/内屋敷保/黒沢ヒロオキ/塙雅夫/大橋茉未奈
ミートボールマシン オリジン [DVD] WHDジャパン 2014-02-21 by G-Tools |
【INTRODUCTION】
■監督は「ブタカリ。」や「口裂け女 リターンズ」「武蔵野線の姉妹 」等で知られる山本淳一。
彼が1999年に制作し話題を呼び、後に山口雄大氏との共同監督でリメイクされたオリジナル版。
■その残酷描写と奇妙なストーリーが公開時からも話題だった。
■公開当時よりさらに手を加えたディレクターズカットによる世界初登場の完全ノーカット版。。
■山本淳一監督の原点で短編映画『リンガマニア』も同時収録。
■販売版のみジャケットは鈴木智也(漫画家)先生執筆のイラスト。
【STORY】
恋人サトミはある日、ゴミ置き場にあった謎の物体に取り憑かれてしまう。
そしてその直後に現れた謎の男は強力なパワー・ミートボールマシンによりサトミを惨殺する。
主人公のマサヤは謎の男との死闘の末、マカオ博士に助けられるが・・・
今、更なる壮烈で残酷な最後の闘いの火蓋は切って落とされた。
その血みどろで残酷、衝撃的な描写とストップモーションを駆使したSFXは今観ても斬新!
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Comments [2]
No.1大木ミノルさん
最後は率直な山本監督の心情に、ファンとして嬉しく、メーカー代表としてヒヤヒヤしながら読ませて頂きました。
ありがとうございます。
No.2とのいさん
今回は画素材等のご手配そして何よりもDVDリリースありがとうございました>阿見さま。そして御社での製作作品は見せるものをしっかり見せてくださってるから、ヒヤヒヤは無用でしょう(笑)>大木監督。
なお、前篇でも話が出ました大木監督の『恋の映画を作ろう』ですが、5/24(土)より大阪シアターセブンにて劇場公開が決定し、『恋の映画を作ろう ディレクターズカット』(110分)と『恋の映画を作ろう 全長版』(148分)の交互上映になるとのことです。関西方面の方に限らず、映画好きな方はこの機会に是非?>皆さま。
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