ども、殿井です。
前回に引き続き、明日(10/26)から公開の
『シッチェス映画祭 ファンタスティック・セレクション2013』
その上映作品を紹介しよう!
▼「シッチェス映画祭」ファンタスティック・セレクション2013
ということで、後編3本は、女性も楽しめること請け合い
(…という表現は逆差別になっちゃうのかしら?)なファンタスティック映画群から♪
まずはこちらの作品だ!
『ロスト・ボディ』
EL CUERPO (英題:THE BODY)
2012年/スペイン/111min
(C)2012 Rodar y Rodar Cine y Television/A3 Films. All Rights Reserved
嵐の晩、死体安置所の警備員がトラックに跳ねられた。
警備員は何かを恐れるかのように大慌てで道路に飛び出してきたようだ。
事故の捜査で死体安置所に向ったハイメ警部は、
一人の女の死体が建物から忽然と消えてしまったことを知る。
それは美貌の女実業家マイカの死体だった。
ハイメはマイカの夫、アレックスに連絡をとり事情を聞くが、
死んで間もない妻を過去のこととして語るアレックスに疑惑の目を向けるのだが…
ギレルモ・デル・トロもプロデュースで参加していた(但し本作には関わっていない)
スパニッシュ・ファンタ『永遠のこどもたち』『ロスト・アイズ』の製作陣による
新作ファンタスティック・スリラーで、2012年シッチェス映画祭ではオープニングを飾った作品。
主にイタリアのスリラー映画好きとしても知られる
デル・トロ製作らしいスパニッシュ・ジャーロの快作
『ロスト・アイズ』の共同脚本を担当したオリオル・パウロの、
劇場用長篇監督デビュー作(兼共同脚本)である。
基本ミステリーの醍醐味を味わう作品なので、予備知識無しで見るのがベストだが、
最初のほうでわかる部分をもう少しだけ書いておくと、
心筋梗塞で死んだととされていたマイカだが、実はアレックスが毒殺させたのだ。
だが成功したかに見えた完全犯罪はマイカの死体消失によりも脆くも崩れ、
状況証拠からアレックスは一転容疑者として追及される立場になってしまう。
マイカは死んでいなかったのか?
それとも別の真犯人がいるのか?
だとするとその目的は?
謎が謎を呼ぶ展開が、事件の背景となったマイカとの出会いから殺害までの様子をカットバックしつつ、
嫌疑(は事実なのだが)を晴らそうともがけばもがくほど追い詰められていくアレックスの姿が、
サスペンスフルに、そして時には滑稽に描かれていく。
ラストの謎解きは、最近のソリッド・スリラー等でよく用いられる、
一気に関連場面を短いカットで畳み掛ける語り口だが、
種明かしのための種明かしに終始しがちな愚に陥ることなく、
説得力とカタルシスに満ちた幕切れは脱帽もの。
個人的には、今回6作品中では一押し作品だ。
『悪人に平穏なし』では主人公の悪徳警官を演じていたホセ・コロナドが、
過去の苦悩を抱えたハイメ警部を燻し銀の魅力で好演。
また消失した死体マイカ役には、
『永遠のこどもたち』『ロスト・アイズ』でもヒロインを演じたベレン・ルエダが、
今までとは一味違う強烈な美熟女ぶりで魅せてくれる。
『人類滅亡計画書』
DOOMSDAY BOOK
2012年/韓国/113min
(C)2012 ZIO ENTERTAINMENT All Rights Reserved
『南極日誌』のイム・ピルソン監督と、
『ラストスタンド』ではハリウッド進出を果たした『悪魔を見た』のキム・ジウン監督が、
人類滅亡テーマに挑んだ3話構成の韓流SFオムニバス。
昨年のシッチェスでの上映と同時期に、TIFFでも『人類滅亡報告書』のタイトルで上映された話題作だ。
バカンスに出る家族に雑事を押し付けられおいていかれたソグ
(『ベルリン・ファイル』等のリュ・スンボム)は、
花柄の容器に入っていた異臭を放つ腐った食材を捨てたのだが、
その中では新種のウィルスが発生していたのだった。
感染者に感情のコントロールする力を失わせ、やがてゾンビ化させるそのウィルスは、
巡り巡ってソグを感染源に韓国中に蔓延し…
というのが、感染系ゾンビテーマの第1話“素晴らしい新世界”。
牛さん屠殺→焼肉屋といった感じに、皮肉な笑い混じりのほら話として連鎖が描かれていくが、
街を徘徊する感染者など、本格的なゾンビ風景を味わえる。
仕事や愛玩用など様々な場面にロボットが利用されている未来。
ある寺院で使われていたRU4タイプのロボットが、悟りの境地に達してしまう。
寺からの報告で調査に来たロボット技師
(『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』等のキム・ガンウ)は、
やがて悟りを開いたロボットという存在を信じざるをえなくなるのだが、
それを脅威と受け止めたロボットメーカー、URインターナショナル側は、
あくまで故障で片付け分解処理で事無きを得ようとするのだが…
機械と人間の差異という正統派ロボット・テーマに真正面から挑み本編中1番見応えがあるのが、
キム・ジウン監督による第2話の“天上の被造物”。
ロボット・ペットを巡るサイド・ストーリー等、伏線の貼り方もよく練られている。
車椅子でロボット破壊を命じるURインターナショナルのCEOは、
Dr.ストレンジ・ラブを真面目にしたイメージだ。
謎の小惑星衝突の危機が迫る地球。
家族と地下シェルターに避難した少女ミソンは、ニュースで流れる小惑星の映像を見て仰天!
それはどうやら2年前に、ミソンが壊してしまったことを隠すために、
こっそりネットで注文した父のビリヤード球らしいのだ。
ミソンはなんとか注文をキャンセルしようとネットに向うのだが…
というこれまたほら話ノリの第3話が“ハッピー・バースデイ”で、第1話と同じくイム・ピルソン監督作品。
結末に登場する大人になったミソンを
『グエムル 漢江の怪物』『クラウド・アトラス』のペ・ドゥナが演じているが、
そこで彼女が邂逅する存在のビジュアルが
70〜80年代のマンガ・アニメ好きなら見覚えのあるキャラクターにクリソツなので注目。
『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』
BERBERIAN SOUND STUDIO
2012年/イギリス/92min
(C)Channel Four Television/UK Film Council/Illuminations Films Limited/Warp X Limited 2012
1976年、イギリス人の音響技師ギルデロイは巨匠サンティーニ監督に請われ、
新作参加のためイタリアのバーバリアン・サウンド・スタジオにやってきた。
ところが現場でよくよく話を聞いてみると、
作品はギルデロイがこれまでやったことのない低俗ホラー映画だったのだ。
言葉の通じない異国で、
口先だけで経費すら払おうとしないプロデューサー、
お役所対応しかしない秘書、
女優を口説くことに血道をあげる監督、
縄張り意識の強いスタッフetc
とろくでもない輩に囲まれながら、
野菜や果物を切り裂き、叩き潰しては惨殺・拷問場面の効果音を作り続けるギルデロイだったが…
低予算ホラー映画の舞台裏を楽しみつつ、人の心の闇を垣間見れる幻想的サイコ・ムービー。
オープニングタイトルと、コンテに音声のみで本編映像はほとんど映らないものの、
劇中製作映画として登場する魔女裁判ホラーが、
いかにも70年代イタホラ・テイストなのもファンには嬉しい。
年代的には『サスペリア』あたりを想定してるっぽいけど、
テイスト的にはジョー・ダマトかブルーノ・マッティあたりを思わせるベタさが◎。
『ミスト』『レッドライト』等の名バイ・プレイヤー、トビー・ジョーンズによるギルデロイは、
気弱で貧相な善人に潜む闇に説得力を持たせる好演で、
そのの不条理な現実から自らの心の迷宮への旅を堪能させてくれる。
(関連記事)
▼今年もやるぜ!"シッチェス映画祭 ファンタスティック・セレクション2013"〜前編『アフターショック』『道化死てるぜ!』『恐怖ノ黒洋館』 - 映画宝庫V3
**************************
「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2013」
2013年10月26日(土)より
東京:ヒューマントラストシネマ渋谷、
大阪:梅田ガーデンシネマ、
名古屋:シネマスコーレ、
福岡:KBCシネマにて6作品一挙公開!!
▼「シッチェス映画祭」ファンタスティック・セレクション2013 公式サイト
▼『シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2013』予告編
**************************
コメントする
※ コメントは認証されるまで公開されません。ご了承くださいませ。