どもども、ご無沙汰いたしておりましたな感じの殿井です。
いつまでも暑いから原稿書く気にもなんないわお…
とか思ってたら、初秋をぶっとばしていきなり晩秋陽気ですな。
まぁ、暑いよりは寒い方が好き…は言い過ぎでもましなのは確かですがね。
そんなわけで、秋といえば映画祭!…
と言ってもギロッポンのには通わなくなって久しく、まぁいいかな…って感じなんだけど、
今年もスペインのバルセロナでは、10日から20日まで、
世界3大ファンタスティック映画祭の一つ…
というよりもうファンタスティック映画祭の老舗にして代名詞である
シッチェス映画祭が開催されてましたね。
▼Sitges Film Festival - Festival Internacional de Cinema Fantàstic de Catalunya
まぁ公式頁をのぞいても勿論スペイン語を解さないボクには、
三池崇史監督が参加してたことと、
『V/H/Sシンドローム』参加のタイ・ウェストの作品が賞をとったっぽいくらいしか判らないのだが、
これから徐々に受賞作や注目された上映作の情報は日本に入ってくるだろうし、
上映作品の日本公開も進むといいよね。
んで、そんなシッチェスで注目された作品から
選りすぐった作品を一挙に上映するシッチェス映画祭公認の特集上映が
“シッチェス映画祭 ファンタスティック・セレクション”である。
丁度一年前に、都内では今は無きシアターN渋谷で開催されたこの特集上映が、
今年も今週末(10月26日)から全国四都市で開催される。
詳細なスケジュールは、記事末の公式頁をチェックしてもらうとして、
都内では、第2のシアターN…という枕も不要なくらいに、
ボクたちボンクラくん御用達のファンタ系作品のメッカとして認知されるようになった
ヒューマントラスト渋谷で、それぞれに個性的な6作品が一挙に上映されるのだ。
というわけで、公開直前緊急特集ってことで、二回にわけて全上映作品を紹介しよう。
まずは血飛沫&ホラー系の三本から!
『アフターショック』
AFTERSHOCK
2012年/アメリカ/89min
(C)2012 Vertebra Aftershock Film, LLC
チリの新鋭監督ニコラス・ロペスと、
『キャビン・フィーバー』『ホステル』シリーズ等スラッシャー・ムービーの気鋭監督であり、
『イングロリアス・バスターズ』等では演技者としてもいい味を出していたイーライ・ロスが、
製作・脚本・主演を兼ねてタッグを組んだパニック・スプラッター篇。
チリを訪れたアメリカ人観光客(イーライ・ロス)は、 チリ人の友人アリエルと、その友人で金持ちのボンボン・ポニョと3人で、酒とパーティに明け暮れていた。
肝心のナンパの方は、なかなか進展を見ないでいたが、 ついにポニョの金と口車でロシア人モデルのイリーナと その友人姉妹モニカ、カイリーを、バルパライソ観光に誘うことに成功。その晩、クラブで彼女達を口説いていたところ、街を突如大地震が襲った。
崩落しクラブの客を直撃する建材。
阿鼻叫喚の中で、一行は片手を失い出血の酷いアリエルを庇いながらなんとか外に脱出するが、
そこは途切れない余震と崩壊に加え、
略奪者と脱獄囚が暴虐の限りを尽くす地獄と化していた。さらに追い討ちをかけるように、津波警報のサイレンが響き渡り…
これはもう、まんまパニック版『ホステル』なノリ。
だからはじまって30分ほどは、延々とスケッチされる
一行の旅先でのバカ騒ぎぶりに辟易としないことももないのだが、
それを乗り越えれば楽しい惨劇のてんこ盛りが待っているのだ。
地震による都市崩壊のヴィジョンは、バジェットとの兼ね合いもあってか抑え目だが、
その分CGと特殊メイク併用の人体損壊描写は容赦なく、
落下物に押しつぶされ身体は千切れといった直接災害被害は勿論のこと、
地上に逃げ延びた瞬間に走ってきた車に頭をひき潰されたり、
動けないところを生きたまま燃やされたりと、
人が人に行う惨劇も容赦がない。
極限状況で、人間の欲望と本能がむき出しになっていくのは、パニック映画の一つのテーマだが、
特に本作ではこの部分に重点がおかれ、老若男女を問わずに人が殺され、人を殺していく。
善悪だって関係なく略奪者や脱獄囚が残虐行為に走るのは当然?として、
善良な若い母親だって自分の子供を守るためには、必死に助けを求める避難民を拒否り果ては銃殺してしまうのだ。
主人公達一行の死亡フラグに注意しながら、
自分ならそんな状況でどのように振舞えるのかを真面目に考えて見るのもいいだろうし、
勿論虚構の殺戮ショーに喝采をあげるのもありだ。
ラストのオチは予想の範囲ではあるものの、
3.11以来未だに続くのは行き過ぎかな?とも思える自粛ムードの作品がある中では、快哉ものである。
『道化死てるぜ!』
STITCHES
2012年/アイルランド/86min
(C)Fantastic Films / Tailored Films 2012
トミーの10歳の誕生パーティ。
トミーの母親が呼んだピエロの“スティッチズ”のやる気のない芸に集まった子供たちは
芸の邪魔をして盛り上がっていたが、
やがてエスカレートする悪戯によってスティッチズは無惨な事故死を遂げてしまう。
その6年後、トミーは事故のトラウマから忌まわしい幻影にとらわれ、
人付き合いをさけてきたが、旧友たちの奨めもあって心機一転誕生パーティを開くことにする。
だがパーティの当日、6年前に葬られたスティッチズが墓地で蘇ると密かにパーティに乱入し、
6年前のパーティに参加していた子供たちに凄惨かつユニークな復讐を開始した!
2012年シッチェス映画祭グランプリ(ミッドナイトエクストリーム) 受賞の本作は、
異常殺人鬼だったり(『マニアック1990』)、
“シェイプ・チェンジャー”の一形態だったり(『IT/イット』)、
それこそ殺人エイリアンだったり(『キラークラウン』)と、
欧米ではホラー・キャラとしても大人気なピエロをフィーチャーした1本。
そこに中世に起原を辿る道化師の、虚実をとりまぜた秘密結社的な要素が、
ドルイド(神官)の国アイルランドのイメージとも重なっていい塩梅のスパイスとなっている。
作品のテイストは、もうズバリ狂騒的なスプラッターを楽しみたいファンの為に作ってるのが伝わってくる、
実にわかってらっしゃる感じの1本。
それこそ前半の陰気な学園生活を送るトミーが、
ことあるごとに見てしまうおぞましい幻影のしっつこさは、苦笑モノだが、
後半かつて自分を死なせた子供たちに対する復讐は、
風船つくり、ジャグリング等、
6年前に投げやりに行っていた芸が殺人という目的によりパワー・アップされ、
血糊と笑いに溢れた惨劇ショーになっており必見だ。
そしてスタンダップコメディアンとしてキャリアをスタートさせ、
自身でクリエイトしたテレビ・シリーズで人気を博した
ロス・ノーブルの暴走ピエロぶりも勿論楽しいのだが、
トラウマから学園ヒエラルキーのドツボに落ち込んでいたトミーが、
過去と対決する苦闘と復活という展開も手堅い。
監督・脚本は、狂牛病によりゾンビが蔓延する長篇デビュー作
『ミート・オブ・ザ・デッド』が日本でもソフト・リリースされ好き物から注目されたコナー・マクマーン。
▼Dead Meat Trailer (2004) Marian Araujo
基本シリアス・ゾンビ路線でありながら、
狂牛病牛が人を喰らったりと『ミート〜』で見せた笑撃要素が、パワーアップされた怪作だ。
『恐怖ノ黒洋館』
THE LAST WILL AND TESTAMENT OF ROSALIND LEIGH
2012年/カナダ/80min
(C)2012 LAST WILL AND TESTAMENT CORP
骨董品コレクターのレオンは、母から相続した屋敷にやってくる。
“天使に守られた家”と呼ばれるその屋敷は、
レオンの父が教祖でかつて信者の自殺事件を起こしたカルト教団“神の使途”の聖地であり、
その信仰に基づき母が彼に行った儀式は、彼が母親と永きに渡って疎遠になった要因だったのだ。
そして屋敷で過ごすレオンの周囲で、奇妙な出来事がおこりはじめ、それは次第にエスカレートしていく。
やがてレオンは、屋敷に残る紛れも無い母の意思を感じるようになり…
昨年の“シッチェス・セレクション2012”上映の『恐怖ノ黒電話』に続く『恐怖ノ〜』邦題第2弾!
『〜電話』はイギリス映画で、こちらはカナダ映画であるように実際の続編とかでは全然ないけれど、
こういう邦題センスはファンタスティック映画祭が日本でも認知されるようになった頃、
つまりそれはとりもなおさず未公開ビデオがブムになった80年代前半の邦題傾向まんまで楽しいやね。
洋館のビジュアルは昼間の場面ではむしろ内装等白色系のイメージだが、
それが室内におかれた天使やマリアの聖像などの宗教的なオブジェとの相乗効果で、
より深い部分に内包された禍々しさを感じさせる。
監督・脚本のロドリゴ・グディノは、これまで短編作品を数本撮っており本作が長篇デビュー作となる。
これまで紹介した二本とは異なり、ゴア描写はほとんど用いられていないが、
それをムードで魅せるととるか、思わせぶりなだけととるかで好みが別れるところだろう。
ぢつは個人的には後者よりの印象だったりするのだが、
それでもVHSテープに残されていたかつて館で行われたカルト儀式の模様等、
ドキッとさせられた場面も勿論あるし、
英国モダン・ホラーの重鎮として小説・映画の両分野で活躍している
『ヘルレイザー』シリーズ等のクライブ・バーカーは
「新人監督とは思えない手腕!」
と賛辞を寄せている。
因みにこの賛辞の中でも触れられているが、
リリース資料によれば本作は監督の恐怖の実体験を忠実に映画化したものだというふれこみだ。
(まぁ、超自然要素をとっぱらった親との関係とかってことだろうと推測してるけど)
レオン以外のキャラクターはオフに声のみで処理されており、
本編はほぼレオン役の『コンフィデンスマン ある詐欺師の男 』等のアーロン・プールによる一人芝居。
そうした中で、原題タイトル・ロールでもある亡き母親ロザリンド・リーを、
『ジュリア』『アガサ』等の名優バネッサ・レッドグレーブが演じ、孤独と哀しみをたたえた独白で素晴らしい存在感を発揮している。
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「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2013」
2013年10月26日(土)より
東京:ヒューマントラストシネマ渋谷、
大阪:梅田ガーデンシネマ、
名古屋:シネマスコーレ、
福岡:KBCシネマにて6作品一挙公開!!
▼「シッチェス映画祭」ファンタスティック・セレクション2013 公式サイト
▼『シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2013』予告編
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