武井「お久しぶりです。
この間、北海道に行ってきました。で、お土産です」
北海道といえば、定番の石屋製菓?白い恋人?
もちろん、今日紹介する映画『ホワイト・ラブ WHITE LOVE』にかけたものだ。
拝編集長は「お、やっぱりこれだね!選び方、わかって来たじゃない!」
と、ニコニコとしながら、?白い恋人?を受け取ってくれた。
武井「そういえば、編集長もこの間出張に行ってましたね」
拝 「ああ、関西の方にね。時間があまりなくて強行軍だったんだ」
武井「そうですか。お疲れ様です」
甘いお菓子を、酒飲みの編集長にはどうかと思ったけれども、
まあ、以前も甘いもので酒飲んでいたから大丈夫だろう。
とりあえず、今日はメニューの話はやめて、サクッと本題に入ろう。
『ホワイト・ラブ WHITE LOVE』は、1979年の夏休みに公開された、
ホリ企画制作、東宝配給の映画である。
スペイン語を学ぶスタイリストの上村忍(山口百恵)は、講師の山野辺健(三浦友和)と出会う。
二人は、急速に接近し親しくなってゆく。
忍がスペイン語を始めたのは、家族を捨てて愛人と共に失踪した父、圭介(小林桂樹)が、
スペインにいる事を知ったからである。
そして、父の余命がいくばくもないと聞いて、忍はスペインへと向かう。
そこで忍は、一人の日本人女性と出会う。
それは、健の部屋にあった写真に写っていた女性、多恵子(范文雀)だった。
彼女と健の間には、過去に何かがあったのに違いない。忍の心は揺れた…
この当時、ホリ企画と東宝が組んで制作していた山口百恵、三浦友和コンビの映画はヒットを飛ばしていた。
1974年の『伊豆の踊子』を皮切りに、相手役が三浦友和ではない作品も含め、
山口百恵主演作品は、年三本ずつコンスタントに制作される、東宝のドル箱的なシリーズだった。
この作品は、そんな山口百恵、三浦友和の主演コンビ第10作記念として制作されたもので、
一般公募して選ばれた中川美知子のオリジナルストーリーを元に、小林竜雄と藤田敏八の二人が脚本にまとめている。
物語は、前半二人が知り合ってから恋人になるまで、
後半はスペインでの出来事という構成になっている。
当時としては珍しい、大掛かりなスペインロケが話題を呼んだ。
前半は、軽快なタッチで展開して行き、後半との鮮やかな対比をみせている。
田中邦衛のマスターがいい味を出していて、
ブランコを設置しているスナックのセットがオシャレだった。
また、後半のスペインロケでは、きれいな風景を存分に収めるともに、
勇壮な牛追い祭りを再現したかなり危険な撮影もあり、見どころも満載である。
ちなみに、この時のスペインロケのコーディネーターとして、
「映画宝庫V3」読者にはたぶん馴染みの深い俳優、ポール・ナッシーが関わっていたという。
監督の小谷承靖は、東大文学部出身のインテリで、フランス語や英語が堪能なので、
合作映画や、このような大掛かりな海外ロケ作品を数多く手がけている。
それまでの二人のコンビ作品とは違い、
積極的に三浦友和に迫って行く山口百恵は、本当に大人の魅力を漂わせていた。
この映画の公開数カ月後に、二人の仲が週刊誌にスクープされ、
交際宣言、翌年順調に婚約、結婚、山口百恵は惜しまれながらも芸能界引退となった。
スクープといえども、当時は興味本位でスキャンダルを追いかけるという感じではなかった。
多くの人たちにとって、この映画での息の合い方を見ても判る通り
「ああ、やっぱり」というのが本音だというほどの、お似合いのカップルだったのだ。
ラスト、山口百恵が、引き取った子供を、目を細めながら見ているシーンなど、後の結婚生活を象徴しているような終わり方だ。
拝 「豪雨のオープンカーで、雨を口で受ける百恵ちゃん、色っぽかった?」
武井「確かに。この映画の百恵ちゃん、アイドルじゃなくて、大人の魅力たっぷりでした」
拝 「二人コンビの前作『ふりむけば愛』(78)でも、サンフランシスコにロケしていたね」
武井「それだけ、コンビの映画は収益が見込めたんですね」
拝 「そして『ふりむけば愛』では、二人の初ベッドシーンが…」
武井「はいはい。そうですね(棒読み)」
拝「あれ?乗りが悪いな…ところで、ポール・ナッシーって、あの?狼男?スターの?」
武「はい、そうです。クレジットはされていませんが」
拝「せっかくなら、出演してくれればよかったのに…」
今度、殿井さんにナッシーの事、取り上げてもらおうかな(笑)
武「ゲスト俳優は、日本を舞台にした前半に集中しています。
あの大林宣彦監督も、CMディレクターとして出演です」
拝「そのまんまじゃない…ところで、大林監督といえば岸田森さんは?」
武「やはり、前半です」
拝「じゃあ、出て来たついでにいつもの?岸田森的視点?ど?んとよろしく」
岸田森は、スチール・カメラマン役を演じている。
メガネのCMのスチールを撮影しているシーンで登場。
ともかく調子が良く、暴君的にふるまう。
ロシアの民族衣装ルバーシカ風の服を着て、黄色いタオルを首にかけ、
サングラスとバンダナに下駄ばきという、かなり砕けた格好。
撮影現場にバーボン(ジャック・ダニエル)を持ち込んで、瓶ごとラッパ飲みという豪快さ。
やりたい放題の役である。
この日、撮影に使うはずだった壺を、健(三浦友和)が割ってしまった。
そのために、スタイリストの忍(山口百恵)が苦心して入手した代わりの壺を、
イメージに合わないと、勝手に叩き割って撮影は中止となってしまう。
そんな事をしておきながら、平然とその場でバーボンを飲みだした岸田森に、
切れた三浦友和が詰め寄ろうとする。
応戦しようと、バーボンの瓶を振り上げた岸田森だが、
見かねた柿沼女史(赤座美代子)に
「あんた、アル中なんだから、こっちのせいだけにさせないからね」
と割って入られ、振り上げたまま持って行きようのないバーボンの瓶をラッパ飲み…
その度の強さに吹き出してしまう。
岸田森の登場は、このワンシーンだけ。
コミカルな役割担当で、この当時一時も酒を手放さなかった
自らの地のままのような役を演じている。
後に、岸田森の演出する芝居に出演したルー大柴は
岸田森が、ジャックダニエルの瓶を片手に持ちながら演出していた事を強烈に覚えていた。
ここまでのやりたい放題というわけではないだろうが、
イメージはこの映像にかなり近かったのだろう。
武井「本当にやりたい放題の役でした」
拝 「何か、演じていて楽しそうだったね。小谷監督の三本とも、凄い芝居だし」
武「小谷監督とは、いいコンビだったのだと思います」
拝「しかし、ウイスキーのラッパ飲みって…
あれ、きっと本物使ってるよ」
武「たぶん、そうでしょうね…森さんならやりかねない(笑)
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拝 「ということで、次回は何か考えている?」
武井「せっかく百恵ちゃんが出て来たので、次も百恵ちゃんの『エデンの海』はいかがでしょうか」
拝 「じゃあ、それでよろしく。次回もこの居酒屋で」
と、言うと、傍らに置いてあった紙袋を持って帰ろうとする編集長。
あれ?何か持って来ていたんだ…何だろう。
私の持って来た?白い恋人?にそっくりだな…
今、ちらっと見えたぞ…?○白い恋人??
なんだろう、あれ…もしかして、吉本版?白い恋人??
あれ、係争中じゃなかったっけ…
本家を私が持って来ちゃったから、出すタイミングなくしちゃったんだ。
申し訳ない事しちゃったな…まあ、いいか…
(次回に続く)
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