第2話「特撮好きは幸せ者」
↑特撮監督になりたい人も、怪獣になりたい人も、ウルトラマンになって尻もち付きたい人も夢が叶いそうな場所
「巨神兵東京に現る」を見終え、ぞろぞろと外へ出ると、そこから下のフロアが見下ろせる。
階下には噂のミニチュア特撮セットがあり、大層な賑わいだ。
音声解説用のイヤホンはリモコンから2人分が接続されている状態。どちらかというとコードは短めなのだが、その分、他の来館者とこんがらがることもない。その反面、興奮して右へ左へ、あ、やっぱり右へを繰り返す拝のせいで、強制変換を余儀なくされたツバサチャン曰く
「私は鎖で繋がれた犬か」
という名言(?)が飛び出したので、一旦鎖を…いやイヤホンを外し単独行動に切り替えた。
上映のあとは、「巨神兵」のメイキングが見れるフロア。ミニチュアの他、絵コンテやメイキング映像がきちんと連動していて、こういう風にあのシーンが出来上がったのか…が分かる仕組み。
そのほかに、往年の特撮映画ではお馴染みの「遠近法で組まれたミニチュアセット」や「反転撮影」などもあり、うんちくとしては知ってはいたもののの実態目の前で見れると、考案した人間の脳みそのしわの数…いや一種の責任感というか、こだわりになんか目がうるんでくる。
大げさかもしれないが”全てはここにある”といっても過言ではないくらいに。
さて、次はてっきりセットと思いこんでいたら東宝の特撮倉庫の再現フロアだった。それまでの展示と違い、うす暗い特撮倉庫を再現しただけあって、あきらかにガラクタ市の様相。お客さんの足取りも早い。しかし、上の方に無造作を装って置かれたスーパーX2とか、ケルマディック号らしきものとか、どでかい機関車とか、吊るされた戦闘機とか、一気に目が悪くなりそうなこの暗がりには、明らかに一部の人間を幸せにするオーラが漂っていた。
やっぱ、ミニチュア最高!模型万歳!!
かがんだり、廻りこんだりして凝視していたら、隣の60くらいのじい様と目があったが、なんだかニコニコしている。
そういえば、「巨神兵」フロアで電柱博覧会(縮尺の異なる電柱、送電線が並んでる)を舐めつくしていた時も、目があったおばちゃんが同じ顔と目をしていたっけ。
いかん、ここでは時間が止まっているらしい。年齢も、普段の価値観も奥にしまいこまれて皆、顔が子供だ。まさか、こんな下町に竜宮城があったなんて…。
↑あの窓に映る女の子が気になって…盗撮してましたといってもバレないかも
この頃になって、漸く時計が気になりだした。すでに入場して3時間近く経っていた。よる年並みかそろそろ脚が痛くなる頃合いではあります。
薄暗い倉庫を出ると漸く、特撮セット。ここもうまい具合に回り込んでから館内に入るのだが、ようやくセットを目の前にして後悔した。
ここで撮影してたら4時間じゃきかねぇじゃん。
しかし、その、なんだ。どいつもこいつも無言で黙々とカメラ構えやがって。そんなに楽しいか=ハイ凄く楽しいです。
このイベントの本番は「巨神兵」以降と言ってもいいのかもしれない。展示ではなく、体験できるアトラクション。
半分以上が、このイベントの為に作られた特注品。
子供心に夢ときめかせたアイテムを見る過去への憧憬。
そして、過去を過去で終わらせないための、未来への憧憬。
全てはここから始まり、そして未来へと繋がる架け橋(キザ)。
↑迎撃態勢完了しました! よし攻撃合図を待て! 了解!(背景を丁寧に切り抜いて合成しましょう)撮影中頭の中では伊福部マーチ全開です
だって、セットに鎮座した戦車や横転した車、電話ボックスを囲んで撮影している面子を見るがいい。
花柄のワンピースで夢中で携帯で撮影してる女の子
その上で順番待ちする間に動画を回すじいさん
その隣で手を伸ばして看板を撮影している中年。
疲れた(飽きた)彼女をなだめながら、撮影に余念のないちゃらい人
そして、連れの存在をすっかり忘れて上から下から、スマフォの電池が切れるまで撮影してた精神的にちゃらい俺。
こんな玉石混合な博覧会あんまないぞ。
CGが全盛な現在。確かにミニチュア特撮は数は減っていくのかもしれない。しかし、ミニチュア特撮でなければ出せないもの、雰囲気があるのもやはり事実だろう。この技術があって初めて進化できるものもあると思う。
撮影が終われば解体を待つ巨大なガラクタ。
だが、そのガラクタが後に遺したものは計り知れない。
多分、このイベントを立案した人たちの想いは、どこかで実を結ぶはずだ。どれだけ時間がかかっても…必ず。
あぁ、とうとう電源が…
↑もしかしたらこの子が未来の円谷英二になるかもしんないし…
「へんしゅーちょー!まだですか!脚痛い!!お腹すいた!!」
お前、俺よりはるかに年若いだろうよ…。
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