『画皮 あやかしの恋』
PAINTED SKIN
2008年/シンガポール=中国=香港/103min
提供:マクザム=パルコ=テレビ東京メディアネット/配給:太秦
2012年8月4日(土)より有楽町スバル座 他全国順次ロードショー!
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ひゃっはー!日付変わってるあるョ。あ、殿井です。
前々回の『ピラニア リターンズ』集中口座の枕で紹介した今日から公開となる『遊星からの物体X ファーストコンタクト』の、ノベライズじゃなくて同作を含む映像化三作品の原点となったJ・W・キャンベルJr.の原作小説『遊星からの物体X(旧題『影が行く』)』を含むコズミック・ホラー・アンソロジー『クトゥルフ神話への招待 遊星からの物体X』が、扶桑社海外文庫より刊行された。
*因みにノベライズは竹書房文庫から出てます
迫力のクトゥルフさまの表紙もそそられる本書は、クトゥルフ神話目線での新訳版となる表題作に加え、御大ラヴクラフトの代表作であり、リドリー・スコットの『エイアリアン』、『プロメテウス』の源泉とも目される『クトゥルフの呼び声』も収録と、夏の海外SFホラー話題作の関連小説が二本まとめて読めちゃうんだから、ジャンル映画ファンなら必携の一冊とお薦めしたい。
さらに(というか、僕的にはこっちがメイン!)本書には、前述の二作にはさまれる形で、英国を代表する幻想怪奇作家ラムジー・キャンベルのクトゥルフ神話作品がまとめて5作も収録されているのだよ。
これは幻想怪奇小説界でのそのビッグ・ネームぶりに比して、長編邦訳が『母親を喰った人形』と、今やスパニッシュ・ホラーを代表するジャウマ・バラゲロがデビュー長編として映像化した『無名恐怖』の二作のみ、短編も各種アンソロジーには収録されているもののまとまったものはなしという寂し目な状況を打破する一歩となる快挙と言えるだろう。
反響によっては、今後シリーズ化展開も編者は視野にいれているそうなので、本書が同好の士に支持されることで、邪神譚のさらなる紹介が進むことを期待したい。
んで、今回のお題は『プロメテウス』…と繋げば綺麗にまとまるんだけど、残念ながら個人的には未だ観れてなく…(苦笑)。
なので、こちらでは今日から公開の中華怪奇浪漫絵巻『画皮 あやかしの恋』を紹介しよう。いやぁ、前置き長くてすいません。
秦漢代の中国、西域で盗賊のアジトに踏み込んだ若き将軍のワン・シェンは、そこで捕らえられていた一人の若い娘シャオウェイを救い出し彼女を連れ帰り、妻のペイロンに事情を話して身寄りのない彼女を同居させることにする。
それから暫くたった頃、ワン・シェンの館の界隈で殺人事件が多発、その犠牲者達の死体からは心臓が抉り取られていた。
犯人は蜥蜴の妖魔シャオイーで、彼は自分とそしてその正体がやはり狐の妖魔であったシャオウェイが、人間としての姿を保つために人間の心臓を求めて凶行を繰り返していたのだ。
そして初めてあった時からワン・シェンに恋していたシャオウェイは、その正体に気づいたペイロンを亡き者とし、ワン・シェンの妻の座につこうと画策し…。
中国の怪異を題材とする民間伝承を源泉に、蒲松齢が17世紀後半に書いた短編小説集『聊斎志異』。
ツイ・ハーク製作の『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』の原作も含まれるこの短編集の収録作品の中でも、本国ではよく知られたびたび映像化されているのが本作の原作短編だ。
タイトルの“画皮”とは妖魔が人間に化けるために被る皮のことをさす。
今回の映像化では、原作とは多少扱いが変わっているということだが、妖魔が画皮を脱ぐ描写はデジタル合成によるグロテスクな妖かしの姿がホラー好きにはポイントが高く、また兵士、侠客、降魔師と妖魔のバトル・アクションも盛り込まれており、全体的にサービス精神たっぷりの娯楽作となっている。
とはいえ、本作のメインは一人の男をめぐって、その妻と女妖魔それぞれの想いや葛藤、そしてさらにその周囲の人間も絡んでの多角的な恋愛ドラマで、これが中国四大若手女優と称される中の二人、ジョウ・シュン、ヴィッキー・チャオの競演を中心に、見目麗しく見応えのあるものになっている。
狐の妖魔シャオウェイを演じているのは、『酔拳 レジェンド・オブ・カンフー』(10)等のジョウ・シュン。初期出演作の『ふたりの人魚』(00)や『ハリウッド★ホンコン』(01)等では小悪魔的な魅力をふりまき、シェイクスピアを原案とする『女帝 [エンペラー]』(06)ではオフィーリアにあたるチンニーを演じていた彼女には、愛情に純粋な分だけそのためには手段を選ばぬ美しきフシギちゃん妖魔はドンピシャで、夢の中でワン・シェンを誘惑しようとする際の一見あどけなさそうな表情も、ぢつにそそられる。
一方、シャオウェイの正体に気づくも、そのことを周囲に信じてもらえず苦境に立たされながら、ワン・シェンへの愛を貫こうとする貞淑な妻、ペイロンにはヴィッキー・チャオ。
やぁ、ヴィッキーといえば、愛くるしい美少女系ど真ん中アイドル。それこそ、おキャンで陽性、時には少年っぽいイメージだったりするわけじゃないですか。
出世作『少林サッカー』(01)では、美女をブス役にして最後は実は綺麗でしたパターンが得意なチャウ・シンチー作品らしく、ニキビ顔の饅頭売り少女ムイは実際は動物アップリケでサッカーシューズを繕ういじらしい面をみせつつ、それでもクライマックスの再登場ではスキンヘッドで“火星から来たスケット”呼ばわり。
『ヴィッキー・チャオのマイ・ドリーム・ガール』(03)では、幼い頃に親と生き別れ、一人ガテンなトラック運転手で生計をたてていた色気なし少女役。再会した富豪の父親に、女の子らしくさせるためにと雇われたスタイリスト(実は詐欺師)のイーキン・チェンに、無茶苦茶な格好をさせられるベタな香港版『マイ・フェア・レディ』だ。
3大美女共演アクション『クローサー』(02)では、スー・チー演じる凄腕女アサシンをバックアップする妹役で、自分も姉と同様に実戦で実力を発揮したいとの思いから、カレン・モク演じる女刑事に余計なちょっかいを出して逆に追い詰められちゃう、余裕のなさ、やんちゃぶりが可愛らしく、それが悲劇に繋がった後に、我等が倉田保昭マスターとガチ・バトルを繰り広げる時の一転しての鋭く必死の眼光がまたよかった。
◎クローサー(2002)
もうちょっと最近の『レッドクリフ』(特にPart?(09))で演じた尚香も、身分を隠して曹操軍に単身もぐりこみ、気のいい百人隊長に弟分的に可愛がられて友情をきずいたりと、やっぱり少年属性が強かったよね。
そんなヴィッキーが、人妻ですよ。
しかも、いわゆる“賢夫人”像。ここまであげてきた役とは真逆…は言い過ぎにしても、異なるのは確か。ところが、楚々とした物腰の中にも、芯の強さを垣間見させてこれがまた実にいいのだ。
勿論これまでだって、麻薬の潜入捜査官で人妻役を演じた『デスパレート 愛されてた記憶』(03)なんて作品もあったけど、今回の堂々たる人妻像にヴィッキーも大人になったんだね?と、感慨も一入。
でも実は本作は2008年作品なので、『レッドクリフ』の尚香とペイロンはほぼ同時期の仕事なのだ。シャオウェイに追い詰められながら、愛を貫き民を守るためにまさに我が身を呈しての気高き選択をしたペイロンは異貌になっても美しい。
妖魔退治にやってきた若き女降魔師シア・ビンには、『カンフーサイボーグ』(09)等のスン・リー。
こちらは先にあげたこれまでのヴィッキー像と通じる、若く多少経験不足な部分は行動力と強気でカバーする健気でおきゃんなキャラを、活き活きと好演している。
そしてかつて思いを寄せていたペイロンからの助けを求める手紙に、複雑な胸中で町へ戻ってきた侠客パン・ヨンに、今年も公開作が続く『捜査官X』(11)等のドニー・イェン。
本作はドニーのアクションがメインの作品ではないが、劇中演じているパン・ヨンのキャラと同様に、一歩退いた位置から作品にスパイスを利かせている。また、妖魔と妻の間でフラフラな主人公ワン・シェン役は、『小さな中国のお針子』(02)等のチェン・クン…と普通の二枚目には興味がないので軽く流す(笑)。
監督兼共同脚本は、ブルース・リーの『ドラゴン怒りの鉄拳』のジェット・リー主演でのリメイク『フィスト・オブ・レジェンド/怒りの鉄拳』(94)等の監督作や、同キャラをドニー・イェンが演じた『レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳』(10)の脚本等で知られるゴードン・チャン。
なお先に書いたとおり、本作は中国では08年に公開され総興行収入26億円超の大ヒットを記録した作品で、日本での本作上映に先立つ6月28日より中国では続編の『画皮?』が公開されている。
主役コンビのジョウ・シュン、ヴィッキー・チャオ、チェン・クンが続投しており、安藤政信主演の中国映画『刀見笑』(10)で監督デビューした烏爾善がメガフォンをとっている。
中国では公開4日間興収が前作の総興収を超える3億元(約37億5000万円)と中国語映画史における歴代最高記録を塗り替え、この他にも“初日”、“1日あたり”、“週末”など様々な歴代興行記録を更新。7月25日時点で興行収入は6億8500万元(約83億円)を突破という中国映画史上最高興行記録を打ち立て(これまでのトップは、10年公開の『唐山大地震―想い続けた32年―』の6億7300万元(約82億円))、紛うこと無きメガヒット作品となっている。
このヒットを受け第3作の製作も正式に決定したようなので、『2』そして『3』が本作ほどタイムラグなく公開されるように、まずは本作が日本でも盛り上がることを期待したい。
オフィシャルサイト:http://www.gahi-movie.com/
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