こんにちは、ゴールデン・ウィークにはNHK-FMの「今日は一日特撮三昧」で10時間、特撮ソングを聴き続けて、すっかり特撮魂が注入された印度です。
さて、現在公開中の『タイタンの逆襲』。
モンスターや怪獣好きには嬉しい作品ですが、もうご覧になりましたでしょうか?
よく知られている通り、モデルアニメーションの神様レイ・ハリーハウゼン最後の作品『タイタンの戦い』(1981)のリメイクである、『タイタンの戦い』(2010)の続編なのですが、まさか作られるとは思いませんでした。
というのも、3Dが売りだったはずの前作は、元々はコストの問題で普通に2Dとして撮影されたのに、完成してみると3D映画のブームになっていたので、急遽3D化したという経緯がありました。
そのせいか大画面で観ると、特にハーピーみたいな空飛ぶクリーチャーがチラチラしていて観難いったらありゃしない!という困った3D映画になっていたのです。
そういう事もあり、微妙な印象もあったのですが、今回は初めから3D映画として撮られているので、安心して観られる映像に仕上がっていました。
モンスター者としては、やはり注目したいのは登場するギリシャ神話の怪物達ですが、まず前座を勤めるのがキメラ。伝説の通りに、ライオンとヤギの頭(そう言われないとわからないかも・・・)と毒蛇の尾を持つ、日本でいうと鵺(ヌエ)みたいなモンスターです。
空から火を吐いてペルセウスを襲い、村の中を走り回りながら戦うシーンは疾走感に溢れていますが、動きが速過ぎるのでじっくり姿を見せてくれない嫌いも。アルゴス軍の参謀の台詞だと数匹倒すのに何百人も戦死者を出したようですが、是非そのシーンも映像で観たかったなぁ。
続いて登場するのが鍛冶屋の神ヘパイストスの島にいるサイクロプス三人衆。
サイクロプスというと、ついついハリーハウゼンの『シンドバッド七回目の航海』(1958)と比べてしまい、こっちは何だか妙に人間っぽいなと思ってしまう姿ですが、実はこちらの方が神話には近いのです。
神話によると、ゼウス達よりもずっと古い世代の神様なのですが、抗争に負けて化け物扱いになったとか。
罠を仕掛けたり、三人で何らかの言語を話している節もあるので、クリーチャー色がぐっと薄く異種族という感じなのも、そういう原典のイメージなのでしょうし、どう作ってもハリーハウゼンのクリーチャーと比べられるのは避けられないので、あえてイメージを変えたのかもしれません。
それから、地下迷宮にいる等身大の獣人ミノタウロス。これはペルセウスと肉弾戦もするし、クリーチャーというよりも日本人にとっては"怪人"のノリでしょう
。容貌にフリークっぽさがあるのが今風というところ。CGI中心の他のクリーチャーとは異なり、俳優との絡みが多いので特殊メイクを中心に表現されています。
ピーター・ホーキンズ率いる、特殊メイク・チームの作品ですが、こういう"実物の作りもの"の質感もやっぱり捨て難いものですね。尚、ホーキンズは前作にも参加し、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008)や『ダンジョン&ドラゴン』(2000)でもクリーチャー・エフェクトを担当しています。
で、トリを務めるのがラスボスのクロノス&双頭の戦闘員マカイ。
クロノスは主神ゼウスの父ですから、れっきとした神様なのですが、出てくるのはショッカー大首領みたいな真っ黒溶岩巨人。設定によれば身長500メートルなので、アメリカ映画では珍しい巨大クリーチャーですね。
一般的にリアリティの関係なのか、アメリカではゴジラやウルトラ怪獣みたいな身長何十メートル!なモンスターは余りいません。最近の作品でも、前作『タイタンの戦い』のクラーケン(どう見ても数百メートルという感じ)や、
『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)のバルログ、
『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(2006)のこれ又クラーケンなど。
そしてチョイ出のクリーチャーですが『スターウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)の、ナブーの水中にいる巨大サンショウウオみたいなサンド・アクア・モンスター位でしょうか。
出てくる映画がファンタジーかスペース・オペラばかりであるところに、アメリカ人のモンスター観の一端が伺えるような気もします(あ、忘れちゃいけない、『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)もありましたっけ)。
で、このクロノスですが、動くだけで体中から沸きだす溶岩をふりまいて人間を焼き殺し、体の一部を隕石のように飛ばして自分の分身みたいな兵士マカイを無数に生み出すというラスボスらしい暴れっぷりです
。山みたいなクロノスにペガサスに跨ったペルセウスが立ち向かっていくシーンは大きな画面、しかも3Dで見ると盛り上がりますねぇ?。
だから意外とあっさりとやられてしまって、ちょっと物足らなかったです。
え、もう終わり?もっと戦ってよ!ってな感じで。余談ですが私はこのシーンを見て、日本のアニメ映画『アリオン』(1986)のガイア(クロノスやゼウスの母であるギリシャ神話の大地母神・声は来宮良子!)とレスフィーナの戦いを思い出しました。
ワラワラと岩石から沸いて出るマカイも、二つの頭に四本の腕を振り回して、アルゴスの兵をバンバン斬り捨てる、実にカッコ良いクリーチャーでしたが、結局戦闘員扱いで映像の中では背景にしかなっていないのが残念だったかな。
全体的に、クリーチャーが盛り沢山だし、怪獣映画度数も高い、のですが、イマイチ個々のクリーチャー達のキャラ立ちが足りないのではないか、という印象も持ちました。比べられるのは制作サイドにとって不本意かもしれないけど、ハリーハウゼンのオリジナル版に登場したアナログ技術によるクリーチャー達には、そのキャラクターを際立たせるような印象的な見せ場があります。例えば、メデューサーが目をカッと見開くアップのカットとか。
CGIだから、とは言いたくありませんが、クリーチャー達はよく動くし、姿形にも自由度が高いのに、見終わってみると「これ!」というシーンが無い大味さも残りました。何でも前作の監督で今作でも製作総指揮のルイ・ルテリエはこのシリーズを三部作構想にしているそうなので、最終作(作られるのなら)ではその辺御一考願いたいところです。それと、今度こそ機械仕掛けのフクロウ、プーボにも出番を与えてあげて欲しいもの。
それから、モンスター以外で注目したいのは、個人的に大好きなロザムンド・パイクがアンドロメダ女王役で登場したことです。
イギリスの正統派女優でオックスフォード出の才媛なのに、デビューがボンド映画で、『DOOM』(2005)とか『サロゲート』(2009)とか結構微妙なジャンル作品にもホイホイ出てしまう、私的には実に有難い方ですね(勿論、『リバティーン』(2004)とか『プライドと偏見』(2005)とか文芸ものにも出てるけど)。
前作では本来のヒロインであるアンドロメダ(この時はアレクサ・ダヴァロス)は、シェマ・アータートン演じるイオ(ギリシャ神話の登場人物ですが、ペルセウスとは絡みません)にヒロインの座を奪われてしまいましたが、恐らく生贄にされるキャラではストーリーに主体的に関われないので、設定を変えられたのでしょう。ラストでクラーケンから救われて、ペルセウスに「一緒に来て、アルゴスには王が必要なの」と言っても、あっさり振られていましたし。
あのラストを踏まえて、今回のアンドロメダを見るとロザムンド・パイクのクール・ビューティーぶりによって、ベタ?なツンデレぶりがいい塩梅になっています。特に久々の再会の時の、
「息子がいるんだ」
「(間髪入れずに)知っています」
「妻のことは・・・」
「知っています・・・お気の毒ね」
という短い会話に、「あなたの事は一日だって忘れていない」というムードが感じられる、いいシーンでした。
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