『〔●REC〕3 レック3 ジェネシス』?脱POVで描かれる感染拡大“創世記”

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『〔●REC〕3 レック3 ジェネシス』
REC3 GENESIS
2012年/スペイン/80min
配給:ブロードメディア・スタジオ
2012年4月28日(土)よりシネマスクエアとうきゅう、ヒューマントラストシネマ渋谷 他にて全国順次ロードショー!
(c)2011 REC GENESIS A.I.E.

オフィシャルサイト:http://www.rec3.jp/

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スペイン有数の映画会社、フィルマックスの総帥フリオ・フェルナンデスのプロデュースの元、主に同社を拠点にファンタ系作品を発表し続けるジャウマ・バラゲロパコ・プラサが共同監督をつとめた『〔●REC〕 レック』(07)は、その後続編『〔●REC〕2 レック2』(09)が作られ、またハリウッドでもそのリメイク作品『REC:レック ザ・クアランティン』(08)とその続編『REC:レック/ザ・クアランティン2 ターミナルの惨劇』(11)が作られるなど、近年のスパニッシュ・ホラーでは最も高いポピュラリティを誇るホラー・シリーズといえるだろう。
そのオリジナル・シリーズ第3弾が、『〔●REC〕3 レック3 ジェネシス』だ。本作ではプラサが単独で監督をつとめており、バラゲロはクリエイティブ・プロデューサーとしてクレジット。続いて現在撮影中のシリーズ第4作『REC:APOCALYPSE』(02)ではパラゲロが単独で演出しているそうだ。

 まずは簡単にシリーズをおさらいをしておこう。

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ローカル番組の女性レポーター、アンヘラとカメラマンが消防隊の一夜を密着取材しているところに緊急通報が入り、アンヘラたちは消防隊と共にバルセロナ市内の古いアパートに駆けつける。
悲鳴が聞こえたと言う部屋に警官と消防隊、同行したアンヘラたちが入っていくと、ぼうっと立ち竦んでいた老婆が突如凶暴化し、警官と消防士に噛み付いたのだ。そして負傷した者をアパートの外に運び出そうとするも、感染の恐れがあるとしてアパートは隔離されてしまう。


 そうこうするうちに、噛まれた二人と感染源と思しき犬の飼い主の少女が老婆と同様に凶暴化し、生存者に襲いかかってきた。噛まれた者たちも新たな感染者として凶暴化する無間地獄の中で、アンヘラたちは必死のサヴァイバルを続けるが…というのが、シリーズ第1作。
アンヘラのクルーが撮り続けているという設定のPOV(手持ちカメラによる主観撮影)映像が、尋常ではない臨場感・緊迫感を醸し出し、カメラの視界外に拡がる死角が観る者の不安を掻き立て、暗視モード時に闇の中から襲いかかる異形の存在に恐怖は頂点に達する。

 因みにヒロインのアンヘラという名前は、ラムゼイ・キャンベルの小説を映像化したパラゲロの長編デビュー作『ネイムレス 無名恐怖』(99)で、物語の発端となる行方不明になった少女の名前と同じで英語発音ならアンジェラ(=天使)
このあたりからも、ダークで冷たくざらついた肌触りの映像感覚で、正と邪の相克を描くもその結末は常に絶望的というパラゲロの嗜好が、1作目には色濃く出ていたことが伺われる。それに派手さと、とっつき易さを加えているのがプラサではないかと、二人の共同演出の役割に関してそれぞれの単独作品を観た印象からは推測される。

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 前作のラストの直後、アパート内に入った医者や警官との連絡が取れなくなったため、調査を任された医師と護衛のSWATチームがアパートに突入する。裏の真相を知っているようだがそれについては何も話さず、ただ命令を下す自称医師に苛立ちながらも、彼の護衛を続けるSWATチーム。
そんな彼らに、異形の存在が闇の中から襲いかかる。一方で、残された仲間を気遣う消防士、薬を買いに行き、中に残った妻子との連絡がとれなくなった男、悪戯気を起こした3人組の子供たちも、アパートに潜入しており、彼らにもまた感染者の魔手が迫っていた…というのがシリーズ第2作。
今回も特命チームが撮影していたという設定のPOV撮影が継承されているが、通常のカメラ撮影に加えて個々の隊員のヘルメットに装着されたCCDカメラによる映像や、少年達が撮影している映像もあわせて使われ、POVのマルチ化という新たな試みが行われている。
そして前作のラストで匂わせた、事件のオカルト的背景についてがより詳しく言及されてもいる。また、1・2作の間に製作されたが、ほとんどストレートな1作目の焼き直しに過ぎなかったハリウッド・リメイク版中、唯一オリジナル版になかったアパートから逃げようとする生存者を、隔離している外から銃撃する場面を、より派手な見せ場としてちゃっかり2作目に取り入れていたオリジナル・チームのしたたかさにも、ニヤリとさせられた。

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 そしてシリーズ第3作は、バルセロナ市内の式場を舞台にたくさんの招待客の祝福の中で執り行われている若いカップル、コルドとクララの結婚式でスタートする。
つつがなく式も終わり、披露宴の会場に移った一行。だが宴の最中に惨劇の幕は切って落とされる。病院で犬に噛まれたと訴えていた叔父が二階から転落した直後に、心配して駆け寄った彼の妻の咽喉笛を喰いちぎったのだ。さらに、会場の窓を破って叔父同様に凶暴化した者たちが乱入し、宴は阿鼻叫喚の地獄と化す。混乱の中で、離れ離れになってしまったコルドとクララは、血に飢えた者達で感染者で溢れる敷地内で互いに相手を捜し求めるのだが…

 本作の時間軸は第1作とほぼ同じで、隔絶したアパートの惨劇と時を同じくして恐怖が既に他にも広がっていたことが語られていく。そんな新たな局面こそが、"創世記"というタイトルが示す状況なのだ。前述の病院で叔父を噛んだ犬というのは、1作目で当初感染源と目された少女の飼い犬であることが匂わせられ、また本編中のテレビには、隔離されたアパートがニュース映像として映しだされる。

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 結婚式のホームビデオのオープニングから始まる本作は、その後コルドの従兄弟がまわすビデオと、業者に依頼されたプロのカメラマンがまわすビデオという二つのカメラのPOVとして、結婚式及び披露宴の様子を映し出していく。この部分は正直かなりダラダラした印象なのだが、当事者以外には苦痛でしかない結婚式のビデオという意味ではそれはそれで正しい形なのかも。
その後惨劇が幕を開けるとPOV撮影は放棄され、従来の劇映画形式に変わっていく。ある意味1作目でPOVの到達点ともいうべき形を見せつけ、続く2作目でもPOVでのマルチ視点という発展系を見せてくれてはいたが、流石にこの形式にのみ拘るのは技術的にもストーリー展開的にも限界があるだろうから、この選択自体は間違ってはいないだろう。

 ただ披露宴が行われる瀟洒な邸宅とその敷地を、夥しい感染者が溢れる広大な密室とみたてて展開する、愛し合う二人が互いの行方を求めながらの脱出劇は、その空間の広さと時折挿入されるも今ひとつ噛みあわないブラック・ユーモア的な描写故か、前2作に比べると若干緊張感に欠けるきらいがある。
また屋外や白昼のシーンがあるということよりも、やはりパラゲロが直接演出にタッチしてないためか、ダークな持ち味も後退気味。
ゾンビ系感染者の数は増え、全体的に派手になってはいるのだけど、設定的には似ていても怖さ(面白さ)のベクトルが全く異なりほぼ勢いに任せただけだったランベルト・バーヴァ監督の『デモンズ』(85)あたりに近づいてしまったのは個人的には少し残念だ(もっとも『デモンズ』を支持するファンも少なくはないようなので、そうした方々には逆に楽しめるかもしれないが)。

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 とはいえ、チェーンソー手にしてウェディングドレスを血飛沫で染めるクララの姿は美しく、その悲痛な運命もあわせてクライマックスはかなり観る者のテンションをあげてくれるので、やはりホラー・ファンなら一見の価値があるだろう。
日本では馴染みの薄い出演者が多数を占める本作で、クララを演じるレティシア・ドレラも僕は今回初見だったのだが、資料によれば彼女はプラサ監督の奥様だそうだ。チェッ、そりゃそこは気合入るよな(苦笑)。

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↑[REC] (2007) - Official Trailer


↑REC 2 - Official Trailer


↑『〔●REC〕3 レック3 ジェネシス』予告編

 なお、本作の日本公開は、シリーズ第3作記念として「恐怖拡散!絶叫三昧!割引参戦!」の3並びから、4月28日の公開日から333日間、誰でも\1,000で鑑賞できるキャンペーンが行われるとのこと。シリーズ1・2作目もレンタル版、廉価セル版で比較的容易に鑑賞しやすいので、未見の方も既に鑑賞済みの方も、この機会にシリーズ通して一気に観てはいかがだろうか。そして気の早い話だが、パラゲロによるシリーズ完結篇に備えよう。


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