「フラッシュゴードン」はとにかく異端なんである。
「スターウォーズ」に始まるSFブームの中にあって、
ストーリー、登場兵器どれひとつとってもリアルがない。
「スターウォーズ」に始まった"SF映画にはオーケストラで"という正攻法の映画音楽がない。
音楽はクィーンだった。
そして、クイーンのアルバムとしてもそのほとんどがインストルメンタルという異例のアルバムであった。
一方で、サントラとして見てもこのアルバムは、
いわゆる台詞、効果音入りの一種のストーリー版しか存在しないという、これまた妙なアルバムなのである。
「フラッシュゴードン」はイタリアの大物プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスの製作だが、
娘のラファエラ・ラウレンティスがかなり活躍したらしく、クィーンに話を持ちかけたのも彼女だという。
また、ラファエラは「デューン砂の惑星」(84)でもTOTOに音楽を担当させるなどロック好きのネエちゃん(当時)だった。
宇宙制覇を企てる宇宙一の金満野郎ミン皇帝が、暇潰しに発見した地球に、
雹を降らせる、大雨を降らせる、地震を起こすなどずらり揃った「天変地異セット」ボタンを
げらげら笑いながら押していく「バカ」としか言いようのないオープニング。
フェリーニ作品の常連美術監督ダニロ・ドナティの施した金ぴかセットで、
宇宙一頭の悪い欲ボケ親父を嬉々として演じる
名優マックス・フォン・シドーの高らかな哄笑とダブるように次第に高鳴っていく「フラッシュのテーマ」。
やがて甲高く「フラッシュ!あぁー、宇宙の救世主!」とボーカルが叫ぶ。
この瞬間に「フラッシュゴードン」は忘れたくても忘れさせてくれないトンでも映画として心に焼きつけられたのである。
まぁ、映画で検索しても、音楽で検索してもいやというほど(それほど音楽をクィーンが担当したという事実は効果的だった)ヒットするのだが、
映画としては金のかかったB級映画という評価しか得ていないに等しい。
にもかかわらず、何故か心に残るあのフレーズ。
やはり、「映画は音楽ありき」という正統派でありながら、その存在は恐ろしく異端なのかもしれない。
先ごろ、イギリスでは2枚組のデラックス版がCD化された。
1枚目は昔から出ているストーリーサントラ、2枚目が当時のシングルカットやライブ版、デモ演奏を収録している。
また、ブルーレイも発売されており、相変わらず頭抱えるほど能天気な映画だが、
絢爛豪華なセットと衣装のきんぴかぶりはハイデフ画質になって初めて「ほんもの」の色合いを観れたという気がする。
まさに"バブリー映画"の頂点的な快作。
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