前記事に続いて本日(11/3)から公開の渋谷・シアターNのクロージング作品についてお伝えしたい。
「合衆国最後の日」に続くタイトルは、ロバート・アルドリッチ監督の遺作であり、
漢の映画の巨匠が女子プロレスラーの姿を見事に活写した『カリフォルニア・ドールズ』(81)。
こちらは全日上映のラスト・ロードショーとなる。
個人的なことを書いてしまうと、テレビの洋画劇場で観て、
「面白いアクション映画でクレジットされている監督」
としてインプットされていたアルドリッチの映画で、
はじめて学生時代にほぼリアルタイム(二番館だったので)に小屋で観た思い出深い作品でもある。
ちなみに今回昔のチラシとか引っ張り出してきて初めて気づいたんだけど、
初公開時の邦題は「カリフォルニア・ドールス」。
末尾が濁らない“ス”表記だったのね。
昔から、普通に“ズ”だと思い込んでいましたよ(笑)
これはもう、物語はクドクド書かない。
ブルネットのアイリス(ヴィッキー・フレデリック)と、金髪のモリー(ローレン・ランドン)。
二人の女子プロ・タッグ“カリフォルニア・ドールス”が、
胡散臭いが成功への野心を持ったマネージャー兼トレーナーのハリー(ピーター・フォーク)と、
苦労や屈辱も少なくないドサ回り巡業興行を続けながら、
栄光の座に向かって進む姿を、
笑いとペーソス、そして迫力の女子プロシーンを交えて描いたスポコン・ロードムービーであり、
アルドリッチが最後に謳いあげたアメリカン・ドリームであり、ささやかな人生への賛歌だ。
ドールズを演じた二人は、共に本作が代表作。
どん底の駆け出しから、徐々に実力と美しさを発揮していく姿が素晴らしい。
ヴィッキー・フレデリックが演じたアイリスは、
気風のよい姐御肌でプライドももちろん高いが、
成功への必要な局面ではそれを折ることも知っているし枕営業もする大人の女。
劇中、猛烈に拒否しながらそれでもファイトマネーのために泥レスに出場し、
試合後その憤懣(ふんまん)をハリーにぶつけるシーンのやるせなさが特に泣かせる。
(同時に、それを受け止める元恋人でもあったハリーの想いも)
彼女は『オール・ザット・ジャズ』(79)でデビューし、
本作以後は特に印象に残る作品はなく、
資料にあったローレン・ランドンの談によるともう女優はやっていないようだ。
一方ローレン・ランドンが演じたモリーは、
明るい性格ながら将来への不安を胸に抱えた可愛らしい系。
ランドンも、代表作といえば勿論本作になるのだが、
彼女はわりとコンスタントにB級ジャンル作品にも出演し続けていたので、
ジャンル・ファン限定なら覚えがいいだろう。
あからさまな女性版“コナン”な『ハンドラ』(84)のタイトル・ロールや、
『マニアック・コップ』(88)で容疑者にされた同僚の不倫警官(ブルース・キャンベル)の罪を晴らそうと
謎に挑む女性警官あたりが、ジャンル的代表作か。
そして中年コーチ兼マネージャーのハリーを演じているのは、“刑事コロンボ”のピーター・フォーク。
試合後理不尽にファイト・マネーをケチられると、
二人を立てて執拗にネバるのに(でも実は結ばないが)、
二人の前ではそんなことはおくびにも出さずに悪態をつきだらしのない姿を見せるハリー。
常に次なる仕掛けを画策し、
華やかにのし上がって行くドールズたちを陰で支える彼のパートを観ていると、
本作がアルトマン初の女性映画であると共に、無様でも筋の通った心意気に、
やはり本作は漢の映画なんだとも実感させられる。
そして小ずるいプロモーターのエディ役には、
『合衆国最後の日』の脱獄囚オージー、『クワイヤボーイズ』(77)に続く
アルドリッチ作品出演となるバート・ヤング。
悪徳…というほど大物でもない、いかにも子悪党的な感じの、いやらしくかつユーモラスな演技が印象的。
また“回転エビ固め”(それが後のドールズの決め技となる)で
ドールズたちを苦しめる日本人レスラー“ゲイシャ・タッグ”を演じているのは、
日本の女子プロレスラーのミミ荻原とジャンボ堀。
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彼女たちは、当時ドールズたちへのプロレス指導も行っている。
なお今回のリバイバル上映は、デジタル素材ではなくニュープリント版での上映となっている。
リバイバル公開というと、
直後にパッケージ・ソフトのリリースが控えていることが少なくないのだが、
本作は音楽著作権の絡みで未だに日本ではDVD化されておらず、
今後のDVDリリースの予定も全く未定とのこと。
まさに、劇場で作品を堪能するためだけの、ニュープリント版上映なのだ。
本来はそれが当たり前だったように思わなくもないが、
現在の状況からすると、なんと贅沢なことではないか。
そういう意味でも、これはシアターNの悼尾(ちょうび)を飾るにふさわしい作品である。
ぜひ、クライマックスの華麗で白熱するラスト・ファイトの興奮を直に体感して欲しい。
(関連ページ)
▼『合衆国最後の日』?シアターNのクロージングはアルドリッチの骨太エンタ!? - 映画宝庫V3
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『カリフォルニア・ドールズ』ニュープリント版
...ALL THE MARBLES
1981年/アメリカ/112min
配給:boid/提供:マーメイドフィルム/宣伝:VALERIA
2012年11月3日(土)より鳴り止まないロードショー! シアターN渋谷クロージング作品
(C)1981 Warner Bros. Pictures International. All Rights Reserved
(C)映画『カリフォルニア・ドールズ』 All Rights Reserved.
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