先頃日本でも公開されたインド製大作SF『ロボット』。
僕は当初の上映ヴァージョンであった日本編集版しか見てないのだが、
それでもインド製娯楽映画の途轍もないパワーと貪欲なまでのエンタメ指向には嘘偽りなく感動した。
印度製娯楽映画が日本で最初にブームとなったのは95年のこと。
それまで岩波ホールで上映されるサタジット・レイとかの
社会派やアート系作品だけが印度映画だと思っていた僕たちに、
94年の東京ファンタで初上映され、翌年の劇場公開でロングラン・ヒットを記録した
『ムトゥ 踊るマハラジャ』は、まさに娯楽としてのマサラ・ムービーの姿をアピールした
衝撃的にハッピーな作品だった。
ところが二匹目の泥鰌を狙い大小限らぬ日本の配給会社が、
マサラ・ムービーの買い付けに走ったことから、
インド映画は買い付け価格の高騰を招き、
同時に王道ゆえにヴァリエーションに乏しい印象も拭えない歌って踊るインド映画ブームは
まさに一過性のものとして呆気なく消滅。
以後は映画祭等での上映がメインな、
ファン御用達のジャンルになってしまったというのが日本的かつ僕自身も持っていた認識だった。
でも、実はそんな日本の状況なんかはインド映画にとってはぢつは屁でもなかったのだよ!
なんてったって、彼の国は、映画の製作本数も観客総数も、
世界1の映画大国であったことを再認識させてくれたのが『ロボット』だった。
んで、ソフトでインド公開版を観ようと思ってたら、インド公開全長版はブルレイのみで
DVDは出ないみたいだね。困ったなぁ(苦笑)
そんな『ロボット』に続くSF大作として製作されたインド映画が、
ヴァーチャル・ワールドから実体化した善悪キャラの対決を描く
総製作費30億円のボリウッド製SF大作『ラ・ワン』だ。
なお、同じくインド製SF大作同士ということで、
『ロボット』の主役ラジニカーントが、同作で演じたロボット“チッティ”役でのカメオ出演というサービスもあり。
英国のハイテク企業バロン社は、デジタルデータを現実世界で物質化する画期的な技術の開発を発表する。
その頃、同社のゲーム部門のデザイナー、シェカルは
同僚のアカシらと新しい対戦型格闘ゲーム『Ra.One』を開発していた。
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ゲーム名にもなっている“ラ・ワン”とはラスボス・キャラの名前であり、
シェカルの一人息子でゲーム・マニアのプラティクの
「誰にも負けないクールな究極の悪役を」という希望で生み出されたものだ。
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そして『Ra.One』のお披露目パーティの日、
プラティクは早速『Ra.One』をプレーし、苦戦しつつもラ・ワンに勝利する。
ところが負け知らずのラ・ワンは、自分に勝ったプラティクの抹殺を誓い現実世界に実体化。
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ゲームの異常に気づいたアカシを殺害するとその姿になり、
事情を察知しプラティクのふりをしたシェカルをも瞬殺してしまう。
やがて父の不審な死の原因と、
そのラ・ワンが実は自分を狙っていることに気づいたプラティクの前に、
アカシの姿をしたラ・ワンが現われ襲いかかってくる。
母のソニアと逃げるも、ラ・ワンに追い詰められ絶体絶命のシェカル。
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そんな彼らを助けたのは、父シェカルの姿をモデルにしたゲームのヒーロー・Gワンだった!
映画はイギリスを舞台にした前半と、
プラティク、ソニアそしてGワンがムンバイに帰りそれに復活したラ・ワンが迫る後半との二部構成。
タイトル・ロールになっている悪役の“Ra.One”は、
“Random Access Ver.One”の略語であると同時に、
印度神話“ラーマヤナ”の頭が10ある魔王“ラーワン”を指し、
ゲーム内では素顔のないキャラクターで、実体化してからはその時々で素顔を変える。
対するGワンは“Good One(いいヤツ)”の意味と同時に
ヒンディ語の“生命(ジーワン)”からとられており、
こちらはモデルとなったシャカルの姿特定で、主演のシャー・ルク・カーンが一人二役で演じている。
無茶ぶりでベタな設定や描写の中に、創造物の存在について等、
実はかなり古典的なSFテーマを真正面からとらえていた『ロボット』に比べると、
ヴァーチャル世界から実体化した善と悪の戦いをメインとした本作は
よりファンタジー的な味付けが強いものとなっていて、
それを多少物足りなく思う部分もあるのだが、逆にいえばジュブナイルとしてはすっきり楽しめるかも。
勿論ジュブナイルといっても、アクションやVFXの本気印はかなりのもので、
前半のクライマックスであるシャカルたちとラ・ワンの都市部でのチェイスは圧巻だ。
この時点でのラ・ワンの姿が、中華系だからってことでもないと思うけど、
(劇中、アカシが似てないのにジャッキー・チェン呼ばわりされる繰り返しギャグもあり)
『ターミネーター』シリーズを想起させるシチェーションでありながら、
香港製アクション・テイストが炸裂で燃える!
勿論、マサラ・ムービー十八番な歌って踊るミュージカル・シーンもてんこ盛。
まぁ、ベタなギャグともども、お腹いっぱいに感じる方もいるかもだけど、
楽曲のよさとダンスの見せ方と編集で飽きさせない。
劇中曲は、レディ・ガガのプロデューサーとしても知られるエイコンが手がけている。
監督・共同脚本のアヌバウ・シンハーは、
01年にデビュー以来本邦初公開作品となる本作が6作目となる新鋭。
また特殊効果スーパーヴァイザーとして、
『スリザー』(06)、“X-メン”シリーズ、オリジナル版『トロン』(82)等のジェフ・クライザーが強力にサポート。
ヒロインのソニア役は、『スタローン in ハリウッド・トラブル』(08)等のカリーナー・カプール。
インド映画らしいふくよか美人さんで、夫と同じ姿をしたGワンとのかけ合いもコミカルで微笑ましい。
先に書いたとおり、シャカルとGワンのニ役を演じているのは
“キング・オブ・ボリウッド”とも称される、
『シャー・ルク・カーンのDDLJ ラブゲット大作戦』(95)等のシャー・ルク・カーン。
本作では良き父であろうとの意気込みが空回りっぽいシャカルと、
カルチャーショック的な側面も見せるGワンをコミカルかつ正統派ヒーローとして熱演。
ワイヤー・アクション等の八割程度も、スタントを使わず自らハーネスを着用して演じたそうだ。
因みに、シャー・ルク・カーンは、初期には結構二枚目フェイスを活かしての色悪的役柄も演じており、
日本でも公開された『アシュラ』(93)でのサイコ・ストーカー役はかなり強烈だったので、
本作との対比で観るのも一興かと(笑)
▼映画『ラ・ワン』予告編<試作版A:ストーリー重視ver.> - YouTube
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『ラ・ワン』
RA.ONE
2011年/インド/156min
提供:マクザム=パルコ=アジア映画社/配給:パルコ/配給協力:アップリンク
2012年8月4日(土)より東京都写真美術館ホール、他にて全国順次公開!(C)
▼映画『ラ・ワン』公式サイト
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