ども、殿井です。
今回は今週末(6/9)より公開される『ラヴド・ワンズ』のご紹介です。
オージー・ガーリー・スプラッター・コメディとでもいうべき本作、
個人的には今年になって公開された新作海外ホラー(流石に全部を押さえられてるわけではないけど)では、
現時点でのベスト!と断言してしまおう!
オーストラリアの田舎町に暮らす高校生のブレントは、
半年前に自分の運転する車の事故で同乗していた父親を亡くして以来、
悔恨と苦悩に明け暮れ、恋人ホリーの優しさをもってしてもそれを拭い去ることが出来ずにいた。
そんな学生生活も最後となるプロムの日に、
ブレントは学校でおとなしい同級生のローラから自分をプロムに誘って欲しいと頼まれるが、
ホリーとの約束があるからとこれを丁寧に断った。
帰宅し、やはり嘆き続けている母と言い争ってしまったブレントは、
ホリーとの待ち合わせまで頭を冷やしに裏山へ行くが、
そこで何者かに背後から襲われ意識を失ってしまう。
そして気がつくとそこは、ミラーボールが煌びやかに回る一室で、
彼はタキシードを着せられて椅子に縛り付けられていた。
その傍らで、ピンクのパーティ・ドレスを身に纏い微笑んでいるのはローラだった。
彼女は愛しい人“ラヴド・ワンズ”と素敵なプロムを過ごすために、
彼女を溺愛する父親にブレントを誘拐・監禁させたのだった。
そして狂気と狂騒と恐怖に満ちた、でもローラにとっては最高のお家プロムが幕を開ける…
女子高生版『ミザリー』風ではあるけれど、
ローラの行動原理は愛しい人との素敵なプロムを過ごすことのみと超乙女チック。
でもその実、その想いのみが暴走し目的のためなら手段を選ばず…
というか、別に彼女が想い描く“素敵な彼”だったら実は誰だってよかった
という単なるお玩具状態なのだが。
ローラが愛聴し、まさに自分の主題歌でもあるかのように口ずさむ
ケイシー・チェンバースの“Not Pretty Enough”の歌詞が、
逆に彼女の行き過ぎ既知外ぶりを示しているのもブラックで面白い。
▼Kasey Chambers - Not Pretty Enough - YouTube
あわれ標的とし監禁したブレント君の咽喉に注射をし声を潰し、
その胸には自分の頭文字入りハートマークをフォークで刻み、
逃亡を謀ればその両足をナイフで釘付けにし、
ほかにもあんなことからこんなことまで、やりたい放題のローラ。
ブレントがそれでも必死に泣こうが喚こうが、
パパも一緒に「聞こえないもんね〜」と返す姿の、
笑っちゃうほどのおぞましさは身震いものだ。
拷問シーンは、ゴアな見せ場はきっちりと押さえつつも、カット割や効果音等で、
ストレートに血飛沫をぶちまける以上の“痛さ”を観客にまさに痛感させてくれる。
そういう意味では、実際には流血のほとんど無いスプラッター『悪魔のいけにえ』に近い感覚か。
オヤクソクともいうべき“一家だんらん”もあるしね。
さらに冒頭で描かれる半年前の自動車事故(これは大体予想がつくが)を含め、
全く関係なさそうに動いていたサイド・ストーリーと田舎町の暗い影が、
全て既知外ローラに結びつく構成も秀逸。
そしてまさに怒涛ともいうべきクライマックスの展開に、
興奮するもよし、呆れるもよし、おセンチな気分に浸るもよし、
とにかく思いっきり身を任せてみるのが吉だ。
さほど可愛くも無い(婉曲的表現)田舎娘まるだしだけど、
箍(たが)が外れたら誰も止められないローラを演じているのは、
主にオーストラリアの舞台で活動してきた若手実力派のロビン・マクレヴィー。
本作を観れば、きっともう彼女のことは忘れられなくなると思うけど、
続いてティム・バートンプロデュースの新作
『エイブラハム・リンカーン:ヴァンパイア・ハンター』ではリンカーンの母親役を演じている
とのことなので、ジャンル・ファンは注目だ。
ブレント役は『エクリプス トワイライト・サーガ』で
“ニュー・ボーン”ヴァンパイアを演じていた(でも、作品含め全く記憶に残ってないけどな)ザヴィエル・サミュエル。
監督・脚本のショーン・バイルンは、TVやCMのクリエイター出身で、
劇場長編デビュー作となる本作は多数の映画祭に出品され、
2009年のトロント国際映画祭では“ミッドナイト・マッドネス”枠(なんて素敵な名称なの)で観客賞を受賞している。
『リンク』等のリチャード・フランクリン、
『ロング・ウィークエンド』等のコリン・エッグルストン(二人とも故人だが)など、
特異なファンタスティック映画のクリエイターを輩出してきた
オーストラリア映画界の新たな担い手として、
『ウルフクリーク 猟奇殺人谷』等のグレッグ・マクリーン共々今後がますます楽しみな新鋭だ。
▼映画『ラブド・ワンズ』予告編 [HD] 2012年6月9日公開 - YouTube
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『ラヴド・ワンズ』
THE LOVED ONES
2009年/オーストラリア/84min
配給:キングレコード=TRASH-UP!!
2012年6月9日(土)よりシアターN渋谷にてレイトロードショー!
(c)2009 SCREEN AUSTRALIA, FILM VICTORIA, FILMFEST LIMITED AND AMBIENCE CONCEPT PTY LIMITED
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