自らの監督作品のみならずプロデューサーとしても快作・傑作の多いツイ・ハークを追っかける第2弾でござる。
【ツイ・ハーク プロデュース作品】
『大丈夫日記』 (1988)
◎Diary Of A Big Man 大丈夫日記
証券マンのチャウ(チョウ・ユンファ)は、ある雨の晩にブティックを経営するジョイ(ジョイ・ウォン)、国際線のスチュワーデスをしているサリー(サリー・イップ)という二人の美女と知り合い、それぞれと愛し合うようになるも相手を一人に絞れないままに二重結婚してしまう
。気のいい同僚チーホン(レイ・チーホン)の協力を得て、二人の妻との新婚生活を続けていくのだが…。
二股かけた色男という、実にどうでもいいっちゃどうでもいいお話なのだが、そんなベタな状況を真正面からコメディとして仕立て上げた割り切り方が心地よく、実際思わず吹き出しちゃう場面の連続。チョウ・ユンファとレイ・チーホンという『男たちの挽歌』の敵同士が、必死に協力して場をもたせようとするコメディ演技が最高。
勿論サリー、ジョイという二美女を見ているだけでも価値ありな傑作。
ジェネオン・ユニバーサルより先月廉価版DVDが出たばかりなので、お持ちでない方は即購入を。
劇中いきなりミュージカル化するご機嫌な"very nice"の広東語練習歌が特典なので、やっぱりmustでしょう。
◎大丈夫日記 広東語練習歌
因みにレンタル版は、昔でたビデオのみでDVDの扱いはありません。また、5?6月にシネマート六本木で開催される香港電影天堂2012Part1にて、上映されるようなので、大画面で多幸感を味わいたい方は是非。
『狼/男たちの挽歌・最終章』(1989)
◎狼/男たちの挽歌・最終章 THE KILLER 喋地雙雄
凄腕の殺し屋ジェフリー(チョウ・ユンファ)は殺しの遂行中にクラブ歌手のジェニー(サリー・イップ)を銃撃戦に巻き込み、彼女の視力を奪ってしまう。彼女の目の治療費を稼ぐため、最後の殺しを引き受けるのだが、そんな彼らに仁義を忘れた組織の魔手が迫り…。
ツイ・ハーク製作、ジョン・ウー監督、チョウ・ユンファ主演という『男たちの挽歌』シリーズ・コンビが作ったシリーズとは関係のない独立作。
でも、華麗な銃撃戦に男の友情とシリーズの要は本家以上に熱いし、何より本作はクラブ歌手ジェニーに扮したサリー・イップの儚げな美しさが素晴らしい。
ジェフリーを彼を追う刑事リー(ダニー・リー)から救おうと視力の覚束ない目で銃を構え、誤って撃ってしまう(勿論外れるのだが)ジェニーのパニクり方がいぢらしくもキュート。
ジェネオン・ユニバーサルより廉価版DVDとブルーレイが丁度一年ほど前に出ているし、レンタル版の扱いもあるので現時点では入手・鑑賞し易い1本。
『ロボフォース/鉄甲無敵マリア』 (1988)
◎鐵甲無敵瑪利亞預告
近未来の香港、悪の組織"英雄党"が巨大ロボットを操り町を支配しようとしていた。冤罪で追われる身となった香港警察科学チームのはみ出し学者カーリー(ジョニー・シャム)と、組織を抜けたツイ(ツイ・ハーク)は、組織が彼らの暗殺に差し向けた女性型アンドロイド・マリア(サリー・イップ)を再起動させ制御下におき、組織に反撃を開始する。
"英雄党"が操るザク風の巨大ロボット"パイオニア1号"が、警察車両を蹴散らすオープニングから見所にあふれた特撮アクション。リアルに見せられないだろうと普通なら敬遠しちゃうだろう巨大ロボットの暴れっぷりを、同じ空気感の中でしっかり見せているのは感動的だ。
そして女性型アンドロイド・マリアに扮したサリー・イップの可愛らしさよ。小首を傾げる人形ふりが堪りません。勿論空中でミサイルを捉えて、投げ返すといったワイヤー・アクションの見せ場もアリ。また、マリアのモデルとなった、組織の女幹部マリア役では、非情な顔も見せてくれる。
そろそろ、お里が知れた感のある勝手に自薦ツイ・ハーク特集だが(苦笑)、80年代香港映画のミューズ、サリー・イップがおきゃんで陽性、でもしっとりした魅力を100%発揮したのは、なんといってもツイ・ハーク作品に尽きるのだ。
日本版DVDは00年にBEAMから一度出たきりでレンタル版もないため、今ではかなり鑑賞難易度高し。
逆にまだビデオの扱いがあるレンタル・ショップなら、バンダイから出ていたVHSが残っている可能性もなきにしもあらず。因みにこのビデオ版は、日本での劇場公開時と同じく吹替え版で、千葉繁、鈴置洋孝、土井美加がメインの3人を担当しているのでそっち系の方には逆に貴重かも。僕はやっぱ、サリーのオリジナル音声がいいけどね。
【ダーク・サイド・オブ・ツイ・ハーク】
『カニバル・カンフー/燃えよ!食人拳』(1980)
◎We're Going To Eat You Trailer
明朗さを身上とするツイ・ハーク作品だが、実は本家スピルバーグと同様に時折ドギツイ要素が顔を覗かせることがある。というか、特に初期の監督作品はホラー趣味やハード・ヴァイオレンスがストレートに描かれており、ツイ・ハークの暗黒面が思いっきり堪能できるのだ。
喰えば喰うほど強くなるカニバル・カンフー食人拳!勿論、生きたママを喰うのがより効果的よ!…というのは嘘で、香港映画オヤクソクとしてのカンフー・アクションはあるけれど、勿論劇中には邦題の"食人拳"なんて登場しません。
泥棒を追い山奥の寒村にやってきた一人の刑事。村の保安隊長から、犯人が潜伏していると聞かされた村外れのトサツ場に向かうが、そこで顔を不気味な面で隠した一団に襲われ殺されそうになる。実はこの村の住民は人肉嗜食にとりつかれており、付近を訪れた余所者を警備隊が殺害し、その肉を村人皆で食すと言う村中"悪魔のいけにえ"状態だったのだ。
ツイ・ハークの監督第2作で、獲物の腹を掻っ捌いたりといったストレートなゴア描写もあり。ただ香港映画らしいベタなギャグ等も多用されているので、ストレートなわりには意外と普通な感も。BGMは『サスペリア』『エイリアン』等の既存曲を、無許可使用。
ジェネオンから05年に出た日本版DVDは既に品切れ状態のようだが、気の利いたレンタル・ショップならレンタル在庫があるかも。
『ミッドナイト・エンジェル/暴力の掟』 (1981)
◎DANGEROUS ENCOUNTER - 1st KIND - 第一類型危機 Trailer
感化院出の少女が、ある晩ひき逃げ事件を目撃する。犯人は気弱な三人の学生で、少女は彼らが轢逃げ犯であることをばらすと脅迫し、無理やり強盗に協力させる。だがヤバイ金を奪ってしまった彼らに、組織の残虐な追っ手がかかり…。
ツイ・ハークの監督第3作。
テレビから胸糞の悪いニュースが流れる中、ネズミの頭部を針で刺す少女(BGMはこれまた無許可使用のゴブリン版『ゾンビ』だ)。
この冒頭から「ゴメンナサイ」感満点だが、凶悪な少女(ネズミ以外では、猫を高層アパートから投げ落として串刺しに)に驚くほどイケてなくて小心者の少年達と、全く共感できないキャラクターたちが地獄に突き進んでいく様は、異様なまでのテンションが漲っている。
少女が猫と同じ運命を辿った後、墓場で繰り広げられる3人組と少女の兄の刑事と追っ手とのヴァイオレンス・アクションも圧巻だ。
因みにラインコミュニケーションから出た日本版DVDは、特典なし・日本語字幕焼付けのショボイ仕様だが、レンタル版もあるし、同社の他香港作品と同様にBOOKOFFの\500以下コーナーでよく転がってるのを目にするので、比較的入手はし易いかと。
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