『捜査官X』
武侠 WU XIA
2011年/香港=中国/115min
提供:カルチュア・パブリッシャーズ/配給:ブロードメディア・スタジオ
2012年4月21日(土)より新宿ピカデリー 他にて全国ロードショー!
昨年来、漢泣きな大傑作『孫文の義士団』(11)をはじめ主演作が続々と日本でも公開されているドニー・イェンが、『レッド・クリフ』等の金城武と競演したミステリー・アクション。
監督は『孫文?』をプロデュースし、また『ウォー・ロード 男たちの誓い』(08)等金城演出は3作目となるピーター・チャン。
1917年、雲南省の長閑な村で両替商に押し入った二人組の強盗が、たまたま居合わせた紙職人ジンシー(ドニー・イェン)の必死の抵抗に遇い死亡した。事件の調査に町からやって来た刑事シュウ(金城武)は、強盗の死体検分をすすめていくうちに、それが単なる必死の抵抗や偶然の積み重ねではなく巧妙に行われた殺害だったという推論に辿りつく。
それは平凡な紙職人になせるはずもない、明らかにプロの殺人者の技だった。妻のアユー(タン・ウェイ)と二人の子供もいる村の良き隣人ジンシーだが、数年前に村に現れアユーと結ばれる以前の過去は誰も知らない。そしてシュウの続ける懸命な捜査は、やがてジンシーが封印していた暗い過去を呼び覚ましてしまう…
ということで、邦題に沿った形(“X”は刑事シュウの頭文字)で紹介すれば、奇矯な天才捜査官シュウによるトリッキーな謎解き劇。
丸めがねをかけ、飄々とした二枚目半スタイルは、日本人にはちょっと懐かしいような感覚を覚えるし、武術、神経学、経穴等の膨大な知識を駆使し、微細な証拠から真相を導き出していく様をCGやハイスピード撮影等の映像表現を交えて見せるあたりは、『ワイルド・スピード』のエンジン点火シーンCGの無駄な楽しさとはったりにも通じていてちょっと面白い。
また推理シークエンスがあることで、冒頭の強盗とのバトル場面が、客観事実と思われた強盗自滅ヴァージョンと、シュウの脳内推理による暗殺者としての技をジンシーが全開させるヴァージョンと、二度楽しめるのもポイント高く、ドニー自身によるそれぞれのアクション設計も秀逸だ。
ただやはり作品を通して見ると、シュウはあくまで語り部であって、特に物語の後半は“武侠”という原題が示すように、封印したはずの過去と再び対峙することになったジンシーのけじめと戦いのドラマが圧倒的な印象を残す。
自身が改心を信じた少年犯罪者に殺されかけた過去から、人の本性は決して変わることはなく信じられるのは法律のみというシュウが、過去を封印し平凡に生きるジンシーを迷惑にも(苦笑)追い詰めるという構図も、愛する者たちを守るため封印していた力を解き放つジンシーの前にはお膳立てにしか過ぎないようだ。
さらにこの戦いで、現在の中華圏ナンバー1アクション・スターのドニーに挑むのは、80年代及び60?70年代の伝説的アクション・スターなのだから、このガチンコ勝負はまさにファンにとっては感涙もの!
追いかけてくる過去の尖兵として、ジンシーに挑む“マスターの妻”を演じているのは、80年代に『レディクンフー 激闘拳』(80)をはじめとするクンフー映画で活躍していた女ドラゴン、ベティ・ウェイことクララ・ウェイが久々のクンフー映画復活を果たしている。
元々きつめの顔立ちの美人さん故に、齢を重ねすっかりおっかないおばちゃんになってしまったきらいはあるものの、京劇を学び、家計のためにナイトクラブでダンサーをしていたところをスカウトされたという経歴は伊達ではなく、本作でもドニーをむこうにキレよく美しくかつ迫力なアクションを披露しており、村落の屋根伝いのチェイス・バトルは必見だ。
またこの激闘シークエンスでは、唐突に生物パニック的見せ場も登場するので、僕のようにそっち方面が好きな方はも注目よ(笑)。
そしていよいよラスボスとしてあいまみえる"マスター"には、"天皇巨星"とも称された『片腕ドラゴン』(72)、『片腕カンフー対空とぶギロチン』(75)等のジミー・ウォングが、17年ぶりに銀幕に復帰し、最初期クンフー・アクターの貫禄を充分に見せつける。
ドニーVSジミーのヘヴィー級ラスト・バトルでは、筋を通したジンシーの状況が"天皇"オマージュとなっているのも、ファンならニンマリさせられるだろう。
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↑公式予告編
↑ベティ・ウェイの艶姿
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