こんにちは、印度です。
今年は戦争映画の大作が続きますね。
「聯合艦隊司令長官 山本五十六」に続き、
日韓合作の『マイウェイ 12000キロの真実』が只今公開中です。
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日韓合作といっても、制作の主導権は韓国にあるようなので、
実質的には韓国映画と呼んでもいいでしょう。
韓国の戦争映画というと、
ベトナム戦争(韓国はベトナム戦争に派兵していました)を舞台にした「ホワイト・バッジ」(1993)や、
この「マイウェイ」の監督でもあるカン・ジェギュの作品で
朝鮮戦争を描いた「ブラザーフット」(2004)など、
90年代以降は日本でも観られるようになってきましたが、
今回は過去の作品を上回る超大作です。
しかも、舞台は朝鮮半島が日本に統治されていた時代である第二次世界大戦。
朝鮮民族が主体的に参戦していなかった戦いでもあり、
普通に考えると描き難いはずなのですが、そこを実に大胆な発想で映像化しました。
日本陸軍に懲罰的に徴兵(史実では1939年当時、朝鮮民族に対する徴兵は未だありませんでした。志願兵だけ)された
朝鮮人兵士(チャン・ドンゴン)と因縁を持つ日本軍将校(オダギリジョー)とが、
満蒙国境からフランス沿岸までユーラシア大陸を遥々横断しながら、
ノモンハン事件、東部戦線、そして西部戦線のノルマンディと
三つの戦場で三つの軍隊(日本軍、ソ連軍、ドイツ軍)に属して戦う、
という奇抜なストーリーです。
まずノモンハン事件ですが、
この日本軍とソ連軍との国境紛争が映像化されたのは、
日活の超大作で撮影にソ連軍(!)が全面協力した
「人間と戦争 第三部 完結編」(1973)位しかありませんから、
大変珍しく、ミリタリーファン的には大いに興味をそそられるところでした。
戦中型戦車であるT34が堂々と出ていた「人間と戦争」に比べ、
ノモンハンで戦っていたはずの
ソ連の戦前型戦車BT7(勿論実車ではなく、改造されたものですが)が出ていたのにこだわりを感じます。
流石に航空機はCGIですが、丸太のような特徴ある機体をしたポリカルコフI16戦闘機も登場。
この機はなかなか映画で見た事が無いので、おぉ!と感激してしまいました。
戦闘シーンも大平原で機械化されたソ連軍VS爆弾を抱えた日本兵の肉弾攻撃という、
ノモンハンのイメージとして当らずしも遠からずな戦い(考証的に言うと・・・なんでしょうが)を大スケールで描いていました。
続いて、ソ連軍の捕虜になった主人公達が強制的に徴兵されて、
ドイツ軍との戦いに送り込まれる東部戦線ですが、
戦場は設定によるとモスクワ近郊の都市ジュコーフスキー(空軍基地や航空科学の研究機関ツァギがあるので有名)。
瓦礫の中でライフルもロクに行きわたらないまま突撃させられる、
という「スターリングラード」(2001)でも描かれたソ連軍のイヤ〜な戦い方がここでも再現。
特に、恐怖で退却しようとする兵を銃撃する督戦係の重機関銃まで出てきて、
東部戦線の地獄ぶりが如何なく表現されていました。
朝鮮人捕虜の一人でソ連軍に協力していた青年がソ連軍とドイツ軍の両方から撃たれて、
ハチの巣になって死んでいくのも何とも象徴的です。
ドイツ軍側もソ連兵をギリギリまで接近させて発砲する緊張感溢れる戦い方も、
映像的なリアルさを追求している画作りで好感が持てました。
?号戦車のような改造戦車もちょっと出てきましたが、
余り長々と見せないところが御愛嬌ですね。
そして、トリを務めるのがノルマンディ。
何でもバルト海沿岸のラトビアでロケされたそうですが、
B17重爆撃機から降り注ぐ爆弾、沖合からの艦砲射撃、
そして上陸してくるアメリカ兵達と、トーチカに立て篭もったドイツ兵が戦います。
ちょうどドイツ軍の視点から見た「プライベート・ライアン」(1998)のような映像ですが、
ドイツ軍側がソ連軍捕虜の志願者から編成される「東方部隊」だというのも異色で、
マイナー部隊好きなんかはオッ!と思っちゃうところでは。
ストーリーはところどころ無理を勢いで押し切るような、韓流らしい力技的演出もありますし、
第二次大戦の史実を考えると飛躍し過ぎで仮想戦記みたいなノリもありますが、
これだけのスケールの戦場の映像が一本で三つも入った幕の内弁当状態の戦争映画はそうないでしょう。
ミリタリーファンなら、劇場で見る価値は大です。
キャストでは、主役のオダギリ・ジョーやチャン・ドンゴンよりも、
卑劣で横暴な日本軍下士官の山本太郎(嫌らしい演技が最高!)や、
日本軍への復讐に燃える中国人スナイパーを熱演し過ぎで、誰だがわからない状態になっている
「孫文の義士団」(2009)や「真少林寺/SHAOLIN」(2010)にも出ていたファン・ビンビンなどの脇役が強烈に光っていました。
特にソ連軍のI16戦闘機をライフル一丁で撃墜するファン・ビンビン、カッコ良過ぎです。
ところで、この映画については、日本のミリタリー劇画の巨匠、
小林源文氏の作品「ハッピータイガー」との類似性を指摘する声が昨年辺りからネット上に散見されています。
私も正直予告編を初めて観た時には「え?ハッピータイガー?」と思ってしまったので
そういう声が出てくるのも、ある意味当然かもしれません。
只、「ハッピータイガー」もこの「マイウェイ」も
同じような歴史上の”謎”
(「ドイツ軍や武装SSには日本人がいたらしい」
「ノルマンディのドイツ軍(正確に言うと武装SSのようですが)の捕虜の中にはアジア人がいた」など)
からインスパイアされたフィクションです。
もしティーガー重戦車でも出てきたら、流石にアレかもしれませんが、
そんなに目くじらを立てることでもないでのは。
ミリタリーファンなら、むしろ素直に、
こういう戦争映画大作が日本でも観られる事を喜ぶべきなのかもしれません。
▼2012年1月14日公開:映画『マイウェイ 12,000キロの真実』予告編 - YouTube
(関連ページ)
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