こんにちわ、印度です。
”北陸に映画祭の極北を見た!”と題した「カナザワ映画祭」リポート、その6回目をお贈りします。
さて、二日目の夜は映画観賞後、ゲストの高橋ヨシキさんと宇多丸さん達と居酒屋で御一緒させて頂きました。
北陸の海の味のどぐろを堪能しながら、DVDの「サスぺリア」をヨシキさんのリアルタイム・コメンタリー付で鑑賞という贅沢な一時を過ごすと、そのまま二次会で裏路地にある和風ダイニングへ。
ここではゲストや映画祭スタッフの皆さんも集まり、ワイワイと賑やかに過ごします。
何人かの方が、「炎/628、良かったよね」と話されているので何だかホッとしました。
そんなこんなで夜中まで騒ぎますが、流石に翌日も映画を観るので二時頃に退散。
そして、三日目の金沢はうって変わった雨模様でした。
早朝から、午後のトークショー(町山智浩さん、高橋ヨシキさん、宇多丸さんの揃い踏み!)の整理券ゲットのために21世紀美術館で行列に並びます。
早い時間だと言うのに大行列、やはり人気ですね。
整理券を無事ゲットした後は、金沢B級グルメの名店「宇宙軒食堂」で早めに昼食を取ります。
この食堂、いわゆる定食屋さんですが、豚のバラ肉を鉄板で焼いて甘辛いタレで食べる「とんバラ定食」がイチオシ。
カナザワ映画祭へ参加する方には、「早い・安い・美味い・近い(会場から)」のでおススメです。
そして21世紀美術館で観る、今日の一本目は「マンディンゴ」(1975)。
あのイタリアの名物プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスの製作、「海底二万哩」や「ミクロの決死圏」のリチャード・フライシャーが監督しました。
ラウレンティスの名は、「キングコング」「ハリケーン」「フラッシュ・ゴードン」など仏作って魂入れずな底抜け超大作を連発し、映画ファンを期待と失笑のるつぼに叩き込む、逆の意味(又、何作ったんだよ?ってな感じ)で信頼のブランドでした。
映画の冒頭、「この映画は私が誇りに思う映画である」とか何とかラウレンティスの自信満々な宣言が出ますが、何とその通り。
奴隷制時代のアメリカを描いた作品と言うと、サイレント時代の「国民の創生」、名作として知られる「風と共に去りぬ」、ミュージカル仕立てでアニメと実写を合成したディズニー映画「南部の歌」、スピルバーグの「アミスタッド」、そしてTVのミニシリーズ「ルーツ」などがあります。
大体、自由の無い悲惨な奴隷達、冷酷な白人の主人、黒人に理解を示すリベラルな白人のインテリというキャラ設定で、悲惨な中にも救いのちょっとあるような結末が多いのですが、この「マンディンゴ」は奴隷制をハードコアに描いた傑作でした。
南北戦争前の19世紀、アメリカ南部の大農場が舞台。多数の奴隷を所有する農場主一族を通じて、奴隷制がいかに白人に利益をもたらし、その裏返しで黒人に犠牲を強いていたかが生々しく描かれていきます。
奴隷は只働きさせられる労働力というだけでなく、家族単位で保有することで繁殖させ、それを出荷して売買する事で利益を生む、"生きた動産"でした。特にマンディンゴと呼ばれる純血種の黒人は、まるでサラブレットや血統書付の犬のように高価で取引されます。
その身体能力の高さを珍重されるマンディンゴは、古代ローマのグラディエイターのように闘技場で奴隷同士の殺し合いをさせられるのですが、これが150年ほど前のアメリカでは本当に行われていたことなのです。
そんな能力の無い普通の奴隷達は、農場で繁殖させられて奴隷市場へ出荷されます。
このシーンは正に歌の「ドナドナ」そのもの。
売られていく子供に号泣して取りすがる母がいれば、家族ごと売られる一家の父が泣いている子供達を「大丈夫、御主人様は悪い人にはお売りなさらぬ」と自分も泣きそうな顔で諭していたり、人間にこんな扱いをしていたのかと愕然とするような光景です。
奴隷市場の黒人達は鎖に繋がれ、セリに掛けられ、家族はバラ売りにされ、中には叩き売りにされる者も。
買い手の白人の方でも、夜の相手をさせる黒人男を求める中年女性もいたりと、欲望の縮図と言う感じ。
この映画の中には、奴隷娘を来客の夜伽にあてがう"もてなし"のシーンも出てきますが、奴隷制の隠れた恩恵として、「奴隷の性的奉仕」がありました。
これだけでもアメリカ史の暗黒面なので、この映画のチャレンジングさがわかります。それのみならず、今尚アメリカ社会ではタブー視されている、「黒人男と白人女のSEX」まで堂々と描いているのだから、公開当時興行的に失敗だったのも当然かもしれません。観客にとっては観たくも無い光景だったのでしょう。
農場主の若旦那は新婚の妻とは不仲(妻とその兄との近親相姦の関係が結婚後に暴露)で仮面夫婦なので、気立てのよい奴隷娘に入れ込み、相手にされずに欲求不満マックスの妻は、あてつけのようにマンディンゴの青年にパワハラ丸出しの関係(ご主人の奥様と奴隷)を強要。
白人の夫婦がそれぞれ黒人奴隷をSEXのパートナーにするという倒錯した関係です。そして、妻の生んだ子供が黒い肌だったことで、物語は一気に修羅場と化すのでした。
白人のプライド丸潰れの若旦那は、自慢の奴隷だと可愛がっていたはずのマンディンゴを熱湯の中へ突き落して惨殺し、不貞を働いた妻を毒殺。
恋人のように扱っていた奴隷娘にも、憤怒の余り「いい気になるな!奴隷の分際で!」と言い放ちます。
キャストは、名優ジェームス・メイスンがガサツな農場主を好演している他、70年代を代表する女優だったスーザン・ジョージ(「わらの犬」や「ダーティー・メリー/クレイジー・ラリー」など出演)が登場しているシーンではほとんど泥酔している若妻をやさぐれた演技で見せています。
ここまで奴隷制の実態をえげつなく描き切った作品は今尚珍しいですが、どう見てもアメリカの多くの観客が拒否反応を起こしそうな映画を作ったラウレンティス、やれば出来るんじゃないか、とちょっと見直しましたネ(若い頃には、「にがい米」とか「道」みたいな真面目な名作も作ってますが)。
さて、次回は町山智浩さん、高橋ヨシキさん、宇多丸さん達三人の論客が「暴力とは何か?」とついて語ったバイオレンストークの模様をお送りします。お楽しみに!
Comments [2]
No.1kakigenkinさん
宇多丸さんやヨシキさんと飲んだって、ウラヤマシイです。しかも散々残酷映画見続けてきて飲み屋でまでDVDですか・・・スゴイです。今回もまた奴隷のリアルを描いた映画を紹介いただきありがとうございました。
No.2印度洋一郎さん
>kakigenkinさま
いつもコメントを頂き、ありがとうございます。
ヨシキさんとは、ほぼ毎回一度位は御一緒させて頂いてます。非常に気さくに接して頂いて、いつもナチスや陰謀論(世界を支配する謎の地底人の話とか)の話で盛り上がってます。
確かに・・・映画見過ぎですね、我ながら(爆!)。
去年辺りは三日目になると、目が疲れて視界がぼやけたりした事もあり、今年はなるべくインターバルを取りながら観るようにしていました。映画祭だけでは無いんですが、長丁場になりそうなイベントは体調も考えながら楽しみたいものです。
ところで、マンディンゴのDVDのジャケでジェームス・メイソンが黒人の子供を踏んづけていますが、これは医師から勧められたリューマチの治療(!)なのです。リューマチにかかった足を黒人に乗せていれば、リューマチが黒人にうつって、治りますよって・・・・ヒドい・・・。
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