さて、「マンソン・悪魔の家族」という、バイオレンスな映画祭のオープニングにはふさわしい作品を観た後は、金沢名物のB級グルメ「皿カツ丼」や「ボキール巻」などを食べながら、プログラムをチェック。
この映画は21世紀美術館の他に、金沢の中心街・香林坊にあるミニシアター「シネモンド」が夜の部のもう一つの会場になります。
つまり、この映画祭の夜の部は21世紀美術館とシネモンドの二会場になるのですが、歩いて10分もかからない距離なので、移動は簡単。
とかく21世紀美術館ばかりがクローズアップされがちだけど、実はレアな作品がかかる率が高いのはシネモンドの方なのです。ハコは小さいけど、その分ラインナップがよりディープ。好事家なら、こちらも是非チェックしなければ!
案の定、今年も初日からカルトな作品が目白押し。という訳で、夜の部はシネモンドへ直行。今夜は三本続けて観ます。
まず観るのは「悪魔のいけにえ」にも続く、田舎ホラーの古典とも言える「サディスト」(1963)。
ドライブに出かけた教師三人組(男性二人・女性一人)が車の故障で田舎の自動車整備工場へ辿り着くと、そこには連続殺人犯の男が潜んでいた・・・というストーリーですが、限定された舞台、たった数人の登場人物といういかにも低予算映画ながらも、殺人犯と囚われた人々とのジリジリとした精神的なせめぎ合いを90分間見せ続けて、テンションも全く落ちません。
そして、この殺人犯のアンちゃんの不快な表情と佇まいによって傑作となったと言っても過言ではないでしょう。
「フへへへへ」という笑い声を上げながらサルのような下品な笑顔を浮かべ、初老の教師の目の前で家族の写真を破り捨て、女性教師の顔を「泥を味わえ!」と地面に押し付け、皆を銃で脅しながらいたぶり続けます。
それに輪をかけて、舞台が暑苦しそうな中西部の荒野、しかも廃車だらけの寂れた整備工場、あ?イヤだイヤだという不快指数がドンドン上がり、見終わった後にはいかにも黒い気持ちが残りますが、出来の良いホラーを観た後の屈折した爽快感(?)も。
スタッフ・キャスト共にほとんど無名の人ばかりですが、撮影をしたのは後に「ディアハンター」や「未知との遭遇」で撮影監督を務めた名カメラマン、ヴィルモス・ジグモントでした。
殺人犯を怪演したアーチ・ホール・Jrは元々ロック歌手で、実は共演した女性教師役ヘレン・ハーヴェイとはいとこ同士だったそうです。
ちなみに、アーチ・ホール・Jrは、この映画に出演して間も無く俳優業を引退して、航空会社の貨物機パイロットに転身。今は退職して悠々自適の日々を送っています。
最近の映像もありますが、すっかり好々爺になっていますね。
「サディスト」に続いて、「リモート・コントール・ウォー」(2011)。
一時間弱の中編ですが、これが日本初公開でもある注目作でした。
21世紀に入り、アフガン戦争やイラク戦争のニュースで、戦場に無人偵察機や無人攻撃機が活動しているニュースが度々流れていますが、現在米軍は急速にロボット兵器の実戦化を進めています。これはその最前線を追ったドキュメンタリーです。
映画でも、無人攻撃機としてグローバル・ホークが登場するのは珍しくなくなってきましたが、現実は更に先をいっています。
現在、世界では43カ国がロボット兵器を採用し、その動きは尚も拡大中。ロボット兵器は21世紀の軍事産業界のトレンドなのでした。
色んな最新軍用ロボが登場しますが、ベンチャー企業が現在開発中の「ベアー Bear: Battlefield Extraction-Assist Robot (戦場支援ロボット)」は可愛いクマの顔をつけて、爆弾処理や負傷兵の輸送をこなす汎用人型ロボット。
ちょっと見はガンタンクみたい。こんなのが戦場に出てきたら、戦争の概念が変わりそうです。
そして、次世代のロボットとして注目されているのが「スウォーム(群れ)・ロボット」。
小さなロボットに限定的な人工知能を搭載し、集団=群れで運用することで高い知能を作りだし、より複雑な任務を可能にするシステムです。
まだ技術的には集団で移動させる位しか出来ませんが、これが実用化した暁には戦争の形態を変える一大発明になる可能性もあるとか。
この他、大学や在野のロボット愛好家まで参入している開発現場、米軍や学者も巻き込んで論争になっている「ロボットに人間を殺させる事の倫理的是非」など、ロボット兵器がもたらす色んな側面をレポート。
残念ながら、SFファンやアニメファンが妄想する巨大人型ロボが近い将来登場する見込みは無いようですが、ロボットが普通に戦場で戦う時代が既に来ていることは衝撃です。
次回こそ、ヴードゥー教の実態(?)に迫る、驚愕のドキュメンタリーを紹介します。お楽しみに!
Comments [2]
No.1kakigenkinさん
前回に引き続き、今回も楽しく読ませていただきました。
ホントに濃いィ?映画祭なんですね。
次回はぜひこんな映画祭に日本全国から
金沢くんだりまで高い旅費払ってやってくる人々もリポートしてほしいな・・・
なんて思います。
No.2印度洋一郎さん
Kakigenkinさん
コメント、ありがとうございました!
カナザワ映画祭は、ほぼ毎年参加していますが、いつも一体どこからこのフィルム見つけて来たんだ?と思うよう映画を上映してくれるので楽しみです。
今回は、ゲストの高橋ヨシキさんや町山智浩さんと色々お話しましたので、その模様は後ほど紹介します。
お楽しみに!
コメントする
※ コメントは認証されるまで公開されません。ご了承くださいませ。