さて来る9月17日は、
ジョン・カーペンター監督による10年ぶりの劇場用新作となる
精神病棟ホラー『ザ・ウォード/監禁病棟』の日本上陸日となるわけですが、
実は奇しくもこれを真っ向から受けて立つべく形で公開される
和製病院ホラーがあるんですよ。
そのタイトルは『心霊病棟 ささやく死体』。
この作品は、『渋谷怪談』シリーズや『こわい童謡』といった
都市伝説系ホラーや、大石圭原作のカニバリズム・ホラーを
香港との合作で映像化した『最後の晩餐』の演出などを手がけてきた
福谷修監督の最新作。
これまでも、映画の監督・脚本のみならず
小説やゲーム原作などマルチな局面でJホラーに関わってきた福谷らしく、
本作も自ら監督・脚本そして原作小説執筆を兼任した意欲作です。
そうそう、『ザ・ウォード』はカーペンター作品としては、
異例に女優度が高いものになってますが、
この点でも『心霊病棟 ささやく死体』はポイント高し。
主人公の新人看護士の美山可奈を演じているのは、特撮ファンには
『仮面ライダー555』のヒロインとしてお馴染みの芳賀優里亜。
車椅子の少女アリサ役には、“噂の刑事トミー”の次女で、
『魔法少女を忘れない』ではヒロインを演じていた谷内里早。
この他にも入院患者役の飯田ゆか(スマイル学園)、
看護士陣を演じる夏奈、小池みき、阿部恍沙穂と若手女優が揃い踏み。
さらには『DV ドメスティックバイオレンス』等の英由佳が
精神科医・桂川役を大人の魅力で演じております。
深夜の病院を巡回していた新人看護士の美山可奈は、
地下室に放置されていた5つのボディ・バッグのうちの一つの
女性の遺体が不気味な声で
「た…す…け…て」と囁くのを聞いてしまう。
慣れない環境に疲れ気味の可奈を気遣う
精神科の女医・桂川のカウンセリングの席で、
可奈は囁きかけてきた死体の名札の名前である
矢野瑞希が、精神科の患者であったこと、
そして少し前に病院内で一夜に5人が不審死した
事件の犠牲者の1人であったことを知らされる。
事件の全容も犯人も判っておらず、
犠牲者たちの死体は検死を待つ形で地下室に取り残されているのだという。
だが死体が囁きかけてきたという可奈の話に桂川はとりあってくれない。
深夜の病棟で不審なそぶりをみせる医師や警備員、
得体の知れない笑い声や人影、
そして何かを可奈に訴えるかのように囁きかける矢野瑞希の死体…。
病棟では果たして何が起きているのか?
舞台となるのは病院内限定で、
上映時間も62分とタイトな創りの作品ですが、
実際の廃墟をロケセットに使用したという
深夜の病棟の陰鬱なムードは秀逸で、
過剰なサービスに走りすぎずにツボを押さえた怪異と惨劇の描写も悪くない。
特殊メイクはこれまでも多くの福谷作品に参加している
MICHAELTY(『こわい童謡』の頃までは“マイケル・T・ヤマグチ”表記)によるものですが、
実際の惨劇の再現場面よりも、
それを写した現場写真から否応無しに漂ってくる陰惨さが印象的。
あっ、勿論実写方面でのお楽しみが無いというわけではなくて、
MICHAELTY自身が山口舞帝名義で扮している医師の死にっぷりの派手さは、
お前は『マニアック』のトム・サビーニかというくらいですな(笑)。
しかし本作では、そうしたホラー要素以上に、
漠然たる不安を抱えるヒロイン可奈が、
“そこでその時何が起こったのか”
という真相に迫ろうとするホラー・ミステリーとしての興趣に、
福谷修のストーリー・テラーぶりが遺憾無く発揮されています。
そのための伏線やヒントも、本編中にさり気なくふられているので、
ちょっとした違和感や小道具、カメラ・アングル等にも要チェック。
そして導かれるのは可奈自身にも重くのしかかって来る
王道ともいうべき“意外な結末”。
それはある程度年季を重ねたホラー・ファンには
予想はつくかもしれないけれど、
その局面までの緊張感の持続ぶりは心地く、
そしてその幕切れは哀しくも温かい余韻が残り、
忘れ難いものになっています。
先に書いた女優陣では、
ヒロイン役の芳賀優里亜も勿論魅力的ではありますが、
望むと望まざるに関わらず全てが“見えて”しまう少女・アリサを、
それ故の諦観をも超えた独特の存在感で演じている
谷内里早のたたずまいがとにかく素晴らしい。
本作での彼女の立ち居地は、主役ではなくあくまでキーマンなんですが、
彼女がそのたたずまいを身に着けてしまうまでを
谷内主演で描くエピソード0的な作品も是非見てみたいものよの?…
と思っていたら、
福谷自身もアリサと彼女を演じた谷内には思い入れが強いようで、
現在竹書房から発売中の本作の原作本には、
既にエピソード0的な作品も収録されているとのこと。
これは原作本も買ってきて、
アリサのあんなとことかこんなとことか(オヒ!)妄想しつつ、
実際に映像化されるまでの渇をしのがなくちゃね。
なお劇場公開は1週間限定のレイトショー公開ですが、
出演者、スタッフ、関係者らによる
イベントが連日日替わりで行われるそうなので、
女優さんファンの方やJホラーの今後に関心のある方は、是非劇場まで!
【イベント・スケジュール】
▼ 9月18日(土)初日舞台挨拶
【上映前】 20:30予定 谷内里早 飯田ゆか 夏奈 松本勝 福谷修監督
【上映後】 22:00予定 芳賀優里亜(予定) 英由佳 山口舞帝 福谷修監督
▼ 9月18日(日)【上映後】 altro mondoミニライブ
主題歌「I miss you」を歌うaltro mondoが、
監督とのトークショーの後、ミニライブを開催。
ゲスト altro mondo
MC 福谷修監督
▼ 9月19日(月)【上映後】「医者とナースの怪談!?スペシャル」
ナースを演じられた夏奈、小池みきら女優たちがナース・コスプレで登場!
外科医を演じ、自ら特殊メイクも手掛けた
山口舞帝(MICHALTY)と共に舞台挨拶&暴露トーク。
現場で起きた恐い!?話や撮影秘話を披露。
ゲスト 夏奈 小池みき 阿部恍沙穂 高野亜里沙 雪嶺えり 松本千種 山口舞帝
MC 福谷修監督
▼ 9月20日(火) 内容未定・後日発表
出演 福谷修監督
▼ 9月21日(水)【上映後】トークショウ「Jホラーに明日はあるか!?」
日本のホラーの新たな可能性を探求する気鋭のクリエイターがゲスト出演。
ホラー業界の裏表と未来を、本音のトークで浮き彫りにする。
ゲスト
作家・大石圭(「湘南人肉医」「殺人勤務医」「呪怨」)
映画監督・柴田一成(「リアル鬼ごっこ」監督、「渋谷怪談」「携帯彼氏」プロデュース)
MC 福谷修監督
▼ 9月22日(木)【上映前】谷内里早?霊感少女の魅力?
霊感のある少女、アリサを独特の存在感で好演した、谷内里早と監督とのトークショー。
役作りやリハーサルなど、撮影にまつわる秘話とともに、女優・谷内里早の魅力に迫る。
また、撮影現場で起きた恐いエピソードや体験談などを、未公開映像※を初公開(※予定)。
ゲスト 谷内里早
MC 福谷修監督
▼ 9月23日(金)【上映前】「スマイル学園MAX」映画公開記念スペシャル
鮮烈な映画デビューを飾ったアイドル、飯田ゆかと、彼女が所属する「スマイル学園」のメンバーがゲスト出演し、スカパー!「スマイル学園MAX」の番組収録もかねたトークイベントを開催。
オーディション秘話、撮影時の苦労話、廃墟撮影での恐い話まで対談を通して紹介。
女優を目指すメンバーたちを交えたユニークな企画も予定。
ゲスト 飯田ゆか スマイル学園メンバー(2名)
MC 福谷修監督
☆☆☆作品DATA・公開表記☆☆☆
心霊病棟 ささやく死体
2011年/日本/62min
配給:アムモ98
池袋シネマ・ロサにて
9月17日(土)?23日(金)連日20:30よりレイトショー公開!
☆☆☆関連リンク☆☆☆
▼心霊写真部 福谷修(blog)
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