ども、殿井です。
とうとう、『ピラニア3D』の劇場公開まで一ヶ月を切りましたね。
いやぁ、めでたい!
以前枕に書いた「お金と3D技術の無駄」というのは、
まぁ一部…というか一般的なのかなぁ(苦笑)…的な反応を
書いてみたのであって、僕の本意じゃ全然ないのよね。
つうかさぁ、特集組むなら『トランスフォーマー3』じゃなくて、絶対『ピラニア3D』だしょ?
いや、ぢつは『トランスフォーマー3』は未だ観てないし、
神武さんのエントリーのオイル・スプラッター満載には
ちと期待しているのだが(『スターシップ・トルーパーズ』の戦艦ロジャー・ヤングの真っ二つ切断スプラッターみたいな興奮?)、きっとおねーちゃんの裸はあんまりないハズだ!
そういう意味では、血と裸を兼ね備えた『ピラニア3D』の方が偉いに決まってますってば!
それにしても長い道のりでしたねぇ…
某社が日本での配給権を獲得したと知り小躍りしたのも束の間、
公開時期のリリースがなかなか聞こえてこないなぁ…と思ってたら、
いきなり某社自体が潰れちゃってお先真っ暗闇。
それこそ、日本版ソフトが出るかどうかも危うい感じで、
仕方ないから作品自体はPAL盤で先に観ちゃったわけですが、
それでまた予想以上のワルノリぶりに狂喜しながら、
劇場で観れないことに対する無力感に落ち込む…みたいな感じ?
でも、マニア好みの作品の公開で定評のある
ブロードメディア・スタジオさんが身請けしてくれて、
このたびマサカのノーカット版(笑)での公開だ!
ジャンル・ファンならこれを観ずにナニを観る?ってなもんのまさに快挙ですよ。
そんなわけで「殿井君の奇妙な生活」では、今回より
『ピラニア3D』集中講座を勝手にはじめることにします。
まず今回は、
本作の偉大なるオリジナル版&そのトホホ続編群
という基礎情報から行ってみよう!
既にご存知の方も多いかと思われますが、
『ピラニア3D』は78年に製作された『ピラニア』のリメイク企画であります。
75年にスティーブン・スピルバーグが人食い鮫の恐怖を描いた
アクション・パニック『JAWS/ジョーズ』を世界的に大ヒットさせると、やれ熊だ、蛸だ、鯱だ、犬だ、蜂だ、ゴカイだ etc…
と二匹目どころか、有象無象にありとあらゆる生物を題材にした
生物パニック映画が作られていったわけですが、
そんなブームに乗った作品として『ジョーズ2』と同年になる
78年に作られたのが本作のオリジナル版『ピラニア』です。
製作は“早い、廉い、まずくはない”なハリウッドの吉野家もとい、
自称“ハリウッドで100本の作品を撮って10セントも損をしなかった男”ロジャー・コーマン。
もっとも、この水棲生物襲撃企画はコーマン御大のオリジナルではなく、
一人の女流プロデューサーが御大のもとに持ち込んだものでした。
今回のリメイク版にもエグゼクティブとして名を連ねる”チャコ・ヴァン・リューウェン”。
そう。かつては日活で肉体派女優として鳴らし、
『海底から来た女』では鱶の精というシー・クリーチャー(と言っても半魚人じゃなくて見かけは普通にグラマナスなおねーチャンだったけどね)を自ら演じた筑波久子その人ですね。
そして監督は、御大のニューワールドで予告編の製作を経て、
過去作品のフッテージをパッチワークして仕上げた
『ハリウッド・ブルバード』で共同ですが長編監督デビューを果たした
ジョー・ダンテで、本作が単独での初長編となりました。
『ピラニア』のおはなしは、
閉鎖された軍の研究施設で、かつて対ベトナム戦用生物兵器として開発された人喰いピラニアが生きながらえており、それが一般河川に解き放たれてしまうというもの。
そう、物語自体はいたってシンプルながら、
『ジョーズ』亜流の一本ではすませられない魅力に満ちた快作です。
チャコが持ち込んだリチャード・ロビンソンの原案に大幅な手を加え、
デシャバリ気味の女調査員と呑んだくれガイドという
ヒーローらしからぬ主人たちによるオフ・ビートな脚本を仕上げたのは、
『ハウリング』でもダンテと組み、また自身も独立系の監督として
独自の地位を築き上げていくジョン・セイルズ。
そして自身のSFホラーやカトゥーンに対する拘りを、
作品にユーモラスなスパイスとしてミックスさせた
ダンテの手腕もなかなかですな。
例えばダンテ作品ではよく目に付く手法で、
他作品をテレビ放映映像として流すというのがありますが、
本作で登場するのは釣りを題材にしたカトゥーンと『大怪獣出現』のメギラ(邦名)。
実はメギラって、水路で追い詰めようとすると、
地下水路を抜け道にして人間の裏をかいたりするわけですが、
このあたりは殲滅しようと軍が毒をまいたダムを避けて
支流経由で下流に逃れたピラニア軍団のオリジンと言ってもいでしょう。
単に怪獣を出したかった(のも本音だったと思うが)だけではないのです。
廃棄された軍施設を主人公たちが調べている時に、物影をこそこそ歩く
二足歩行のピラニア・モンスターも可愛くてたまらんですね。
このピラニア・モンスターは、本筋とはほぼ関係ないんですが(笑)
コマ撮りで描かれた本格派。
ちょっとマイクロ・イーマ風な感じのアニメートは、
劇中のピラニアの原型も製作したフィル・ティペットによるもの。
そうそう、ピラニアを量産し血しぶきメイクを担当しているのは、
当時弱冠17歳だったロブ・ボッティンと、
その後SFホラー映画で名を成す逸材が綺羅星の如く多数参加していた作品でもあります。
因みにピラニアの動きは、
アマゾンを扱った記録映画『緑の魔境』に登場する牛を白骨化させる
ピラニアの群れの映像を参考に、リアルっぽく見える
動きの撮影コマ数を割り出して行ったそうですよ。
実際、本家『ジョーズ』のスピルバーグも本作を
『ジョーズ』フォロワーの中でもっとも楽しい作品と評し、
それがきっかけとなってダンテは初のブロック・バスター作品
『グレムリン』をスピルバーグの元で撮る事になったわけですね。
また今回『?3D』を監督したアレクサンドル・アジャも
「怖くて、ヌードや流血シーンが多くて楽しくもあり、とにかく素晴らしくてわくわくするような映画なんだ」
と、オリジナルの魅力を熱く語っている模様。
アジャのリメイクを観ちゃうと、オリジナルって
ちっともヌードシーンは多くなかったような感覚も受けますが、
ご愛嬌的な廉っぽさも含めて、
まさにアナログ特撮時代のB級生物パニックの金字塔なんですよ。
そんな『ピラニア』の続編が、82年の『殺人魚 フライングキラー』であります。
今回チャコがコーマン御大に変わるパートナーとして組んだのは、
殺人巨大蛸映画『テンタクルズ』などで知られる、
イタリアン・ハッタリ娯楽映画の虚人オヴィディオ・G・アソニティスでありました。
この映画でのピラニアは、トビウオとトウゴロイワシ(DVD字幕のグルニオンは違和感あるよね。やっぱトウゴロイワシじゃないと駄目なんですよ!<何が?)のハイブリッド種。
で、空も飛べるし地上でも呼吸・生息可能という最強生物にパワー・アップ!
されてるはずなんですが、
きゅりゅきゅりゅきゅる?と鳴き声?をあげながら、
バレバレの釣りで宙を舞うフライング・キラーの脱力ぶり
のみ記憶に残った感じですかね。
因みにこの作品は今を時めく『アバター』の巨匠、
ジェームズ・キャメロンの監督デビュー作だったりするわけですが…
アソニティスと揉めて解雇され、
その後混乱する現場スタッフに泣きつかれて
敗戦処理的に撮影現場に戻ったものの、
結局最後はアソニティスに勝手に編集された本作を、
キャメロンは自作にはカウントしないようです。
気持ちはわからんでもないけど、大人になろうよ>キャメロン君。
そしてさらに10年近くの歳月が過ぎた90年代に、
今度はコーマン御大がケーブルテレビ局ショウタイム用に
自作をリメイクしていく企画“ロジャー・コーマン・プレゼンツ”の1本として『ピラニア』を選んでるんですね(チャコも勿論、プロデューサーとしてクレジット)。
これが実は最初の『ピラニア』リメイク作となった『ザ・ピラニア 殺戮生命体』であります。
まぁ、お話がオリジナルとほぼ一緒なこと自体は
目くじらを立てるべきことじゃないですが、
オリジナルにあったユーモア性が全く欠如しちゃってるのはかなり痛い。
一応劇中に出てくる企業名が“ダンテ&セイルズ”だったりするあたりは
功労者に気を使ってるのかなと思えないこともないですが、
出演者は変われどピラニアの襲撃場面の大半が
オリジナル・フッテージからの流用だったりするあたり、
流石は10セントも損をしなかった男の面目躍如。
それにオリジナルの襲撃場面に創意工夫が感じられたのは
70年代という時代背景もあったからであって、
90年代なら90年代ならではのものが観たかったよね…
そんなファンの悪夢を消し去り(いや、もともと誰も覚えてないか)、儚く消えた期待に応えてくれたのが、21世紀に甦った『ピラニア3D』なんですよ!
以下、次回に続く!
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