鶴川にて、地元発みんなで創る映画祭
“グローイングアップ映画祭〜鶴川ショートムービーコンテスト”の一環として、
8月24日に同映画祭の地元和光大学の出身で、
現在の“J−ホラー・ムーブメント”の始祖・鶴田法男監督の特集する
“月イチ映画上映会 夏休みホラースペシャル・鶴田法男監督作品集”が昼・夜のニプログラム構成で開催された。
昼の部では、テレビ版は子供たちの8割が視聴し、
夏の風物詩としてすっかり定着指定し、
鶴田自身もライフ・ワークとして自認する『ほんとにあった怖い話』の原点である
オリジナル・ビデオ版3部作
『ほんとにあった怖い話』、
『ほんとにあった怖い話/第二夜』、
『新ほんとにあった怖い話/幽幻界』を一挙に上映し、
上映後には女優・林田沙希絵がMCを務め鶴田によるトークショーも行われた。
OV版『ほんとにあった怖い話』シリーズは、
和光大学を卒業しビデオ・メーカーに勤務し、商業作品では現場経験のなかった鶴田が、
大学4年の夏に撮影をはじめた自主製作短編『トネリコ』を名刺がわりに持参して、
当時の原作の版元朝日ソノラマから原作権を得て、
同じく製作元のジャパン・ホーム・ビデオに企画を持ち込んで、
91年から92年にかけて製作されたという、まさに鶴田自身が生み出した作品だったとのこと。
鶴田監督と当時を振り返る。
「当時はOV作品の隆盛期で、これなら僕でも作れるなと。
助監督経験もなく臨んだシリーズ1作目は、現場でわけがわからぬまま手さぐりでやっていたので、
作品としては納得してない部分がありました。
それもあって、2作目を撮る時、特に『霊のうごめく家』では事前にガチガチの絵コンテを書き、その通りに撮影した」
観客からのQ&Aの際にはシリーズ1作目・2作目と3作目のテイストの違いについての質問が出たが、
これは自信作であった2作目が当時セールス的には1作目ほどには振るわなかったので、
あえてリアルなショッカー・タイプの作品を狙ってみたとのこと。
鶴田監督
「ただその後、『霊のうごめく家』は黒沢清監督や高橋洋さんら錚々たる方々からも評価をいただいているので、
評価というのはすぐその場で出てくるものではないですね」
そんなシリーズ最恐との評価も高い『霊のうごめく家』だが、
撮影時にはロケに使った家屋で、実際にスタッフやキャストが不可思議な体験をしていた話も披露され、
またその場で直接何かを見たわけではない鶴田自身も小学生時代にいるはずがないものを見たことがあるという。
「でも見た瞬間は、なんとも思わなかったんです。
それが後になってから、ぞっとしてきて。
そうした体験があって、『ほん怖』では役者さんに、怖いです!っていう芝居はやめてもらうようにしてるんですよ。
『霊のうごめく家』でも母親が振り返るとそこに人影があってという場面を撮る際に、
女優さんは最初驚く芝居をしてきたんですが、それはやめてじっと見てくれと。
それで2テイク目を撮った際に、彼女が凝視している姿にカットをかけたくなくなってしまい、
彼女もどうしようかな?みたいな感じが出てきた最後の方の部分を編集で使ってみたんです」
そう、『ほん怖』の恐怖演出には、そんなリアルな裏付けがあったのだ。
そして、この記事がアップされる8月29日21時から放映される、
テレビスペシャル版最新作となる土曜プレミアム『ほんとにあった怖い話・夏の特別編2015』の会場だけの特別予告編も披露。
(C)フジテレビ
今回も豪華キャスト陣による全6話が放映されるが、
その中の一編で観月ありさ主演の『奇々怪々女子寮』は、
数年前に原作を読んだ時に
「これは女性版『霊のうごめく家』になる」(鶴田)
と感じ、数年来温めて来た作品とのことで、期待が高まる。
そして夜の部では、貴重かつ“グローイングアップ映画祭〜鶴川ショートムービーコンテスト”らしいサプライズ上映後に、
劇場公開近作にして鶴田の幻想ドラマとしての一つの到達点ともいうべき『トーク・トゥ・ザ・デッド』の上映と、
岡村洋一がMCをつとめ、鶴田と同作に出演した女優・桜井ユキによるトークショーが開催された。
死者と通話できるアプリを題材にした同作は、
出資元の希望によりヒロインたちの職業をデリヘル嬢にしたことから、
ヒロイン役の小松彩夏以外は想定していた女優から出演を断られ、
それならオーディションでということになり、
もう一人の重要なキャラクターである残念なデリヘル嬢マユを射止めたのが、当時まだ新人だった桜井ユキなのだ。
「最初に本読みをしてた頃は、頭のいい子がキャラクターを作ってる感が強かったんですが、
本人から直接相談したいと電話をもらって、面倒くさいな(笑)と思いながら会って話をし、
その後現場で再会したら全然変わってました。
現場では、撮影中じゃなくてもマユそのものになってたね」
と、その“カメレオン女優”ぶりを絶賛する鶴田。
その発言を裏付けるように、近年は『リアル鬼ごっこ』等の園子温監督作他出演作が目白押しで、
「忙しくなっちゃって」と鶴田にこぼされる桜井だが、
土曜プレミアム『ほんとにあった怖い話・夏の特別編2015』で久々に鶴田監督作品に出演しており、
「本当に久しぶりに鶴田監督の現場に帰って来れて、ほっとした気持ちでした」
と感想を語った。
因みに観客からのQ&Aで、演じてみたい役柄を尋ねられた桜井の答えは
「殺人者を演じてみたいですね、連続殺人がいいです」
これに対して鶴田も
「桜井で殺人者を撮りたい」
と意欲を見せる。
もしかしたら、近々最恐の殺人ヒロインが実現するかも?!
なお今回放映される新作『ほん怖』では、MCをつとめた岡村も、
斉藤工演じる警官に取り調べを受ける無銭飲食犯役で出演しているとのこと。
そんな岡村から、作品で恐怖を描き続けることに関して問われた鶴田は
「こどもの頃に怪談噺をして楽しかった記憶を映像化したものですね。
ただ最近の世の中は、恐ろしい事ばかりで、そうしたことに出くわしてしまうことは残念ながらある。
その時に恐怖に対する耐性を…というのもありますし、
それらにどう折り合いをつけていくか考えておかないといけない部分はある。
また恐怖の中ゆえに人間の業を感じさせる部分があったり、情といったものも描ける。
そうしたものを、恐怖を通じこどもたちにわかりやすく見てもらうことを目指しているのが『ほん怖』なんです」
と語った。
なお、今回の特集上映を主催した“グローイングアップ映画祭〜鶴川ショートムービーコンテスト”では、
9月30日までショートムービーコンテストの作品を募集中だ。
作品の応募要件は、上映時間が15分以内のオリジナル作品であることのみで、
応募作中一次審査を通過した作品は、11月10日から21日に和光大学ポプリホール1Fのカフェマーケットにて上映され、
来場者による投票により各賞を決定し、11月23日にポプリホールにて授賞式が行われる。
J−ホラーの始祖鶴田が商業処女作OV版『ほん怖』を撮るきっかけとなった作品が、自主製作の『トネリコ』だったように、
これを読む貴方が出品する作品がこれからの貴方の未来を大きく変える可能性もあるのだ。
我もと思う映画ファンは、こちらのコンテストにも挑戦して欲しい。
▼土曜プレミア『ほんとにあった怖い話・夏の特別篇2015』
2015年8月29日(土)21:00〜23:10 フジテレビ系全国ネットにて放映
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