『ワイルド・スピード』シリーズのドミニクなど、
強面アウトロー・ヒーローがはまるヴィン・ディーゼル兄貴(年下だけどな)が、
ジャンル・ムービーの鬼才デヴィッド・トゥーヒー監督とタッグを組んだ、
スペース・アウトロー・アドベンチャー第3作
『リディック:ギャラクシー・バトル』がいよいよ先週末(3/8)よりロードショー公開となった。
前作『リディック』は堂々たる大作ではあったものの、
スペース叙事詩的な風呂敷の広げ方にちょっと賛否が分かれたが、今度の新作はひと味違う!
一応前作を受けてはじまるが、未知の惑星を舞台に、
リディックと彼を追うバウンティハンター、
そして惑星に生息する凶暴なエイリアンの生き残りをかけたバトルが展開し、
もうタイトルを『ピッチ・ブラック2』にしてもいいんじゃないかと感じちゃうくらいに、
タイトに決まったサバイバル・アクションSFだ!
本作は、初作から13年、前作からも10年弱ぶりの完全復活ということになるので、ここでシリーズをおさらいしておこう。
シリーズ第1作『ピッチブラック』(00)は、
『エイリアン』meetI・アシモフの小説『夜来たる』といった趣向の宇宙恐怖ゾーン・サバイバル編。
小型定期旅客宇宙船が事故で不時着した星は、三つの太陽に照らされた砂漠の惑星だった。
生存者は、女性副操縦士キャロリン(ラダ・ミッチェル)を含む10名。
その中には宇宙全域に指名手配されたお尋ね者リディックと、彼を護送していたバウンティ・ハンター・ジョンズの姿もあった。
惑星からの脱出方法を探る一行だったが、廃墟と化した建物の奥深くで一行の一人が夜行性の生物の襲撃を受け死亡。
そして間もなく惑星は22年に一度の皆既日食に包まれ、惑星がその夜行性生物の天下となることに気づく…
この作品は製作規模的には決して大作ではなかったが、
シンプルな展開に過不足なく描かれたキャラ描写、
随所に盛り込まれたSF設定、
と魅力的なクリーチャー描写で一気に魅せる快作だった。
オーストラリアの砂漠地帯でロケされた
地平線に三つの太陽が交差するビジュアルを合成し、
納得の行く異世界を現出させた
トゥーヒー監督をはじめとするスタッフのSFマインドの高さ。
そして、後の惨劇を予感させる砂漠に残された巨大生物の白骨に残されたおびただしい傷痕など、
細やかな描写も実に判っているのである。
『GODZILLA』のパトリック・タトロポスによるクリーチャー描写も、
小型の群隊から等身大の成体までがそれぞれCGとパペットを併用することで、
個性的かつ生物的リアルさを感じさせる秀逸なものであった。
そして本作で初登場となるリディックを演じたヴィン・ディーゼルの存在感。
筋骨隆々たる肉体に剃り上げたスキンヘッド、
そしてダミ声とアウトローを演じるために生まれてきたようなディーゼルだが、
素顔は意外優しい眼差しだったりする。
それをこの作品では、
手術で暗視鏡をしこまれ闇でも銀色に輝く瞳
という設定で優しい瞳を封印したことも功を奏し、
今では彼の定番とでもいうべき善悪に捕らわれぬ不敵なアウトロー・キャラという新境地を開拓し、
関節外しの拘束抜けからクリーチャーとのガチンコ勝負まで、
肉体を駆使したアクションを盛り込み、
物語をリードする女性副操縦士も霞ませるほどの存在感で演じてみせたのだ。
▼Pitch Black Official Trailer #1 - Vin Diesel Movie (2000) HD - YouTube
そして続いてシリーズ二作目の『リディック』となるわけだが、
ここでは物語の時系列に沿って『リディック』と併せた時期に作られた、
OVA版『リディック・アニメーテッド』(04)にも触れておこう。
ストーリーは、
クリーチャーとの凄絶な闘いを生き抜き、宇宙に脱出した
リディック、イマム(キース・デイヴィッド)、少年…実は少女ジャック(リアンナ・グリフィス)だが、
彼らの前に悪人をコレクションにする女トゥームズが現れ、
配下の傭兵たちに一行はとらえられてしまう…
というもの。
デヴィッド・トゥーヒの原案に基づくこの作品は、
『ピッチ・ブラック』直後のエピソードを、
生存者はオリジナル・キャラクターを演じた役者自身が演じ、
また『リディック』にも続投するバウンティ・ハンターが登場するなど、
両作品をスムーズに楽しむためのブリッジ的な位置づけながら、
『アレキサンダー戦記』のキャラクター・デザイン等で人気の高いピーター・チョン監督のビジュアル・センスも光り、
一見の価値のある作品になっていた。
▼ Chronicles of Riddick - Dark Fury Trailer - YouTube
そして『ピッチ・ブラック』の好評を受けて製作されたシリーズ二作目『リディック』(04)から、
リディックは、原題・邦題ともにタイトル・ロールに昇格し、
総製作費も170億円の超大作にスケール・アップされた。
漆黒の惑星でのクリーチャー群との壮絶な戦いから5年。
世界に背を向けひっそり生きていたリディックの許に新たなバウンティ・ハンターが差し向けられる。
その追撃をかわしながら、自分に多額の賞金をかけたエアリオンを探し当てたリディックは、
彼女から全宇宙の恐怖による支配をすすめる
悪の軍団“ネクロモンガー”を束ねるロード・マーシャルを倒す
と予言された男が自分であることを知らされる…
氷の惑星でバウンティ・ハンターの宇宙船を知恵と肉体で撃破する冒頭からリディックのアクション炸裂で、
限定空間が舞台だった前作と打って変わって、
史上最大級のセットが組まれた様々な惑星を転々としながら生身のアクションが全編に展開。
また前作で生き残ったイマム、ジャックあらため少女キーラは続投(但しキーラは役者がアレクサ・ダヴァロスに変わってすっかり成長したアウトロー少女として登場)する展開で、
前作を受けた三人の台詞の応酬も続けて見てきたものには嬉しいところ。
SFマインドあふれるヴィジュアルも勿論健在で、
前作ではクリーチャーを退けた陽光が、今回はすべてを焼き尽くす灼熱の劫火としてリディックたちに迫る。
薄暗がりのはるか後方から、妖しく輝く光の帯の禍々しい美しさが出色だ。
初期バロックとファシズムの融合をコンセプトにした“ネクロモンガー”の美術も印象深い。
ただその一方で、冒頭でチラっと書いたように
リディックに予言された英雄というエピック的な味付けが加味されたことで、
逆に奔放なアウトロー的な魅力とは違う方向に向かってしまった印象はぬぐえない。
▼The Chronicles of Riddick Official Trailer #1 - Vin Diesel Movie (2004) HD - YouTube
しかし作品…というよりむしろ
リディックという存在そのものをか…を支持するファンの声は世界中で根強く存在し、
今回10年あまりの時を経て復活を遂げた本作『ギャラクシーバトル』に至るというわけだ。
悪の軍団“ネクロモンガー”のロード・マーシャルを倒したことで、次代のロードの座についたリディック。
本人的には軍団を統べる気は毛頭なかったにも関わらず、
次代のロードを狙っていたヴァーコ(カール・アーヴァン)の罠で、
リディックは宇宙の果ての未知の惑星に置き去りにされてしまう。
だが荒涼とした砂漠と沼地が混在し、
凶暴な未知の生物が群生する過酷な惑星環境が、
リディックの野生と不屈の精神に火をつけた。
水棲魔獣と激闘を繰り広げ、やがて無人となっていたシェルターに辿り着いたリディックは、
脱出用宇宙船を奪取するために自ら非常用ビーコンを発信し、バウンティ・ハンターを呼び寄せる…
超大作であった前作を受けてはいるものの、
“ネクロモンガー”との確執は冒頭で置き去りにされたリディックの回想としてチョコット描かれるだけという潔さ。
その短い部分にも、ロード・マーシャルに祭り上げられたものの我関せずで欝々と過ごすリディックをしっかり描いているのが笑える。
そして未知の惑星に置き去りにされた後、
傷を負いながらも生き生きとして行くリディックの姿は、
やはり野に置け蓮華草…
もとへ荒野に放り出せスペース・アウトローといったところか(笑)
前作ではほとんど出てこなかったクリーチャーも、今回は作品の肝として登場。
リディックがサバイバル道中の道連れにする
“エイリアン・ジャッカル”の子供はオオカミとハイエナが融合したような姿で、
コーヒーブレイク的な存在ながら時にはリディックを助ける活躍も披露。
そして惑星の水棲生物“マッド・ディーモン”は、
あたかも蠍のように長くしなやかで強靭な剃刀状の尾で獲物に襲いかかる四足タイプのクリーチャーで、
前半ではリディックの足を刺させて首を…な戦法でのガチンコ・バトルがじっくりと描かれ、
クライマックスではこれまた巨大嵐という特異な気象状況により、
全土が湿地と化した惑星でリディック&バウンティ・ハンター混成軍に襲いかかる夥しい群れが圧巻。
クリーチャー好きなら、ご飯三杯は食べられちゃうこと請け合いだ。
クリーチャー相手だけではなく、
呼び寄せた二組のバウンティ・ハンターを撹乱し罠にかけ、
一人づつ仕留めていくリディックの戦いっぷりももちろん堪能できる。
二組のバウンティ・ハンターのうち、
訓練された戦闘プロ集団のリーダーにはリディックとの因縁を持たせるなど、
シリーズとしての目配せも忘れておらず、
またこのプロ集団の凄腕女スナイパー・ダールの戦いっぷりと
力を持った者同士としてのリディックの想いも見逃せない。
なお、ダールを演じているのは、リメイク版『ギャラクティカ』でもタフなスターバックを演じていたケイティ・サッコフだ。
それにしても軽口のような
「云ったことは守る」
という言葉を冷徹に実行し、
絶望し祈りにすがる者にも
「神は忘れろ、奴の手には負えない」
といい放つリディックのなんとクールなことよ。
まぁ作品のスケール自体は前作には及ばないものの、
少なくともボクが望んでいたリディック映画は間違いなく本作の方だ。
監督・脚本はシリーズ全作品を担当し、
“エンターテイメント・ウィークリー”誌の「ハリウッドの最もクリエイティヴな百人」にも選出された
デヴィッド・トゥーヒー。
監督デビュー作で日本の山形テレビも出資していた、
時間テーマのテレフィーチャー『グランド・ツアー』(91)(日本などでは劇場公開)でSF映画ファンを唸らせて以来、
▼Timescape (1992) aka Grand Tour: Disaster In Time - TRAILER - YouTube
本シリーズ以外にも、宇宙人侵略テーマなんだけど、
蠍を使って邪魔者を消そうとするエイリアンのアサシン登場とか妙な味も忘れ難い『アライバル-侵略者-』(96)、
▼The Arrival (1996) trailer - YouTube
ダーレン・アロノフスキー脚本による潜水艦怪奇譚『ビロウ』(02)、
▼Below (2002) HQ trailer - YouTube
ハワイでバカンス中のカップルが連続殺人に巻き込まれるトリッキーなサスペンス『パーフェクト・ゲッタウェイ』(09)、
▼"A Perfect Getaway" - Official Trailer [HQ HD] - YouTube
など王道設定に一味を加えたジャンル的注目作を発表し続けている。
なお本作『ギャラクシーバトル』は、エピソードとしては完結しており、
現時点ではリディックのその後の作品の製作予定はないようだが、
魅力的なスペース・アウトローの次なる冒険譚が観れる日を望んでやまない。
やっぱ、『ワイルド・スピード』じゃなくて、こっちだよ(笑)
▼『リディック:ギャラクシー・バトル』ヴィン・ディーゼル コメント付き予告編 - YouTube
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『リディック:ギャラクシー・バトル』
RIDDICK
2013年/アメリカ/119min
配給:プレシディオ
2014年3月8日(土)より丸の内ルーブル他にて全国ロードショー!
(C)2013 RIDDICK PRODUCTIONS, INC. All Rights Reserved.
▼映画『リディック:ギャラクシー・バトル』公式サイト || 大ヒット上映中!
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