お久しぶりです。印度です。
少し間が開いてしまいましたが、
”百万石の街はエロスに燃えた!”と題してお送りしております
「カナザワ映画祭2012」レポート、その第3弾です。
2日目午前中の『フリッツ・ザ・キャット』(前回ご紹介)を観終わると、ちょうどお昼です。
金沢駅地下で毎年この時期にやっている「カレー&スィーツ選手権」へ行って、昼食を食べましょう。
これは北陸各地のカレー屋さんが集まるという、
最近流行りのご当地グルメ・イベントですが、
カレー好きにはワンコインでカレーライスのハシゴも出来るのが嬉しいですね。
日本風のレトロなものや、本場インド仕込みの本格派もあり、
タンドリーチキンやサモサ(インド風ギョーザ)なども食べ歩き、午後からの映画に備えるぞ?。
さて、次の映画は『バタリアン』(1985)
のんびりした日曜の昼下がりにふさわしい、楽しく観られる作品です。
これも、何でエロスなの?とか言わない。
すっぽんぽんになって墓場で踊るリネア・クィグリーが出てるでしょ(笑)
「バタリアン」といえば、80年代中期のホラー映画ブームの中で登場した、
ゾンビ映画の名作の一本ですが、全編に漂うオフビートなユーモアは今観ても新鮮ですね。
公開当時、東宝東和が出てくるゾンビ達に
「タールマン」とか「オバンバ」とか
いかにもなネーミングをつけていたのも能天気な80年代を感じさせます。
死んだ生き物を蘇生させるガスを浴びた死体が動き出して、
段々被害者が増え、事態が雪だるま式に悪化していくのはゾンビ映画のお約束ですが、
全編を通じたブラックユーモア溢れる演出は公開以来20年余を経た今でも充分面白いですね。
脇役の葬儀業者アーニー・カルテンブルーナーが仕事場の壁にヒトラーの写真を貼り、
ワルサーP38を愛用するナチス信奉者だと何気に描写されているのもブラックなところ。
ゲラゲラ笑いながら、楽しい時間を過ごせました。
近年、公開20年を記念するドキュメンタリー
『More Brains! A Return of the Living Dead Documentary』(2011)
も発表されましたが、こちらも何ならこの映画祭で上映されないかなぁ…
▼「More Brains!」の予告編、観たい!
さて、一端ホテルに戻って一息入れて、夜の上映へ向かいます。
自転車で駅前と片町を行ったり来たりするのも毎年のことですから、すっかり慣れましたねぇ。
そして、会場に入ると外国人の女性が歩いています。
どうも、この方がゲストのクリスチナ・リンドバーグさんのようですね。
そう言えば、金沢在住の友人がツィッターで
「今、街でリンドバーグさんとすれ違った」とつぶやいていました。
こういう肩肘張らない自由なムードも、この映画祭の魅力です。
そして、本日最後の作品『ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ?血まみれの天使?』(1973)が始まります。
これ、1970年代にスウェーデンで盛んに作られたエロチックな映画(ソフトポルノ)の一本で、
そのバイオレンスたっぷりの内容からカルトムービーとなった作品です。
クェンティン・タランティーノ監督もこの映画が大好きで、
『キル・ビル』(2003)に登場した隻眼の殺し屋エル・ドライバーの元ネタがこの映画の主人公なのは、有名な話。
しかも、日本では劇場未公開なので、スクリーンで観られるのは貴重な体験です。
そんな本映画祭の目玉の一つがはじまり、はじまり?。
はじまると、公園でいきなりブヨブヨの肥えたオッサンに少女が襲われます(速っ!)
この少女が主人公のフリッガですが、レイプされたショックで失語症になり、
成長しても言語療法のセラピーに通う日々。
ここでクリスチナ・リンドバーグ登場ですが、
小さな童顔にアンバランスに豊満な肉体を持つ、日本人が好みそうなアニメキャラ的体型です。
そんなある日、セラピーに向かう途中で、
車に乗ったヒゲの怪しげなお兄さんが
「ボクの車に乗っていかないかい?送るよ」
と声をかけるとあっさり乗っちゃう。
あんな過去があるのに、警戒心無さ過ぎ!と思ったら
「御飯でもどうかな」
と言われると、これ又ホイホイ着いてっちゃう。
まるで地雷原に自分から飛びこんで行くような無警戒ぶりですが、
案の定その男は売春組織を営む女衒でした。
あっさり捕まり「今日から客を取れ」と命じられます。
既に手遅れな気もしますがフリッガは、やってきた客の顔を引っ掻いて抵抗。
信用第一の営業に傷をつけられた女衒は激怒し、
制裁としてフリッガの片目を抉り取ります(!)
この眼球をメスで抉り取るシーンは実にリアルですが、何でも実際に死体を使って撮影したとか。
こうして片目を失い、逃げられないようにヘロイン漬けにされ、
客を取らされるフリッガの日々が始まりました。
女衒は念には念を、とばかりにフリッガに
「田舎暮らしにうんざりしました。もう家には帰りません」
という手紙を書かせて、実家に出させます。
すっかり逃亡することも諦めたフリッガが非番の日に、
こっそり実家へ行ってみると、何と両親の葬儀中。
娘に去られた事を悲観した両親は自殺していたのでした。
今更名乗り出ることも出来ず、隠れて葬列を見送るしかないフリッガは復讐を決意します。
この主人公は失語症という設定なので、劇中では一言も台詞を喋りません。
そして、何故か表情も余り変わらないのですが、
このシーンでは目つきが変わっていきます。
ポヨ?ンとした童顔なので、逆に妙な凄味がありました。
それからというものは、日々の仕事に励んで、客からもらうチップを貯めながら、
非番の日には空手道場(何故か道場には嘉納治五郎と大山倍達の写真が…)で格闘技術を習い、
陸軍の軍人から射撃を習い、
プロドライバーからカーテクニックを習うという復讐への日々が始まります。
そして麻薬を売っているところを見つかって、
空手道場から追い出される不運もありながらも戦闘スキルを鍛え、
密売人から銃を入手し、ショットガンの銃身を切り落とす改造を終えると復讐を開始。
黒い眼帯と黒いコートに身を包み、
まず散々自分を嬲りものにしてきた常連客を殺して回ります。
フリッガの復讐に気付いた女衒は、殺し屋を雇うと港へ逃げ込み、倉庫で待ち伏せるのですが、
ここが最大の見せ場(かもしれない)アクションシーン!
流石に華奢なクリスチナ・リンドバーグにはアクションは無理と見えて、
殺し屋にパンチやキックを炸裂させるシーンになると、
ほのぼのとしたBGMが流れて何故かスローモーションに…
殺し屋を倒すと、港の騒ぎを聞きつけてやってきた警官のパトカーを奪って、
逃げる女衒の車を追ってカーチェイス。
ちなみにこのシーンでは、改造パトカーでゲリラ撮影していたので、本当に警察に捕まったとか!
そして遂に、女衒を牧場に追い詰め、穴を掘らせると首だけ地上に出して生き埋めに。
「助けてくれ!」と叫ぶ女衒の首に縄を巻き付けると、それを牛に縛りつけます。
のっそりと歩いていく牛に縄が引きずられ、首を絞められていく女衒を、
フリッガは野原に座って静かに見つめているのでした。
低予算の映画なので、色々ツッコミどころはありますが、
この静かで冷酷なラストシーンは大変印象に残りました。
▼「ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ」の予告編
さて、映画を観終わると、今回初めての「交流会」があります。
会場は、金沢中心部の香林坊にあるダイニングバー「パドル・ソーシャル」。
今までも映画祭スタッフの打ち上げにも使われています。
この「交流会」は、映画祭スタッフやゲストとファンとの交流を図ろうという催し。
いつも思いますが、ホントに観客との距離が近いですね、この映画祭は。
駅前から自転車でかけつけると、中はもう人でぎっしり大盛況の様子。
私もかけつけ一杯のハイボールを飲みながら、
スタッフの方や、金沢の友人達、
そして東京から遥々やってきた友人達とワイワイ映画の話で盛り上がります。
途中から何故か、
映画祭常連ゲストのデザイナーで映画ライターの高橋ヨシキさんと、
一般参加しているNHK金沢放送局の神戸アナと三人で「映画祭とは何か?」と語り合う展開に。
とする内にメインゲストのリンドバーグさんが到着。
御年61歳ですが、顔の小ささは変わりません。
何でも、今は女優を引退して、航空雑誌の発行人やキノコ研究家など各方面で活躍しているそうです
。急遽サイン会が始まりますが、やっぱり人気で忽ち行列が出来ます。私もツーショットをお願いしました。
そして交流会の目玉、今回の映画祭のテーマ「エロス」にふさわしいアトラクション、
プロのポールダンサーKaoriさんによる、ポールダンスが始まります。
スタッフの方達も、ファンの皆さんも「おぉぉーっ!」とどよめきながら、
空中で回転するKaoriさんをありがたいものを拝むような顔で見入っていますね(人のことは言えませんが)
こうして金沢のエロスな夜は更けて行くのでした。
次回は、ナチ映画の極北「愛の嵐」と映画のデジタル化を考えるシンポジウム、
そして映画祭スタッフの打ち上げの模様を送る、最終回です。
お楽しみに!
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