さて前回のエントリーを受けての『インブレッド』関連小ネタ企画だよ。
人間狩系スプラッターで、これが出てくると外れは無いと個人的に思っているのが
“トラバサミ(Foothold trap)”だ。
わなの中央の板に獲物の足が乗ると、
ばね仕掛けによりその上で2つの金属板が合わさり、獲物の脚を強く挟み込むというもので、
近年の作品で意識するまで、ボクは単純に“熊のわな”みたいな言い方をしてたんだけど、
実際英語でも“ベアートラップ”という言い方もあるようだ。
現実では、日本では08年以降害獣退治等許可を得たごくごく一部の案件かつ
サイズや挟み部分に歯の無いものなど制約を受けての使用以外は全面禁止。
EU諸国でも一部を除き使用禁止と、普通の人なら実際にこれらを目にすることはまずないだろう
という状況にもかかわらず、
“鋏まれる”というドア等日常局面にも置き換えて想像しうるその痛感と、
映画の世界じゃ規制なんか関係ねぇと、
両側“JAWS”状態の刃が主流みたいなビジュアルが
まさに、犠牲者を痛めつけ苦しめるための“わな”の王道といった感じではないか!
『インブレッド』の中でも、誰かは書かぬがトラバサミにかかった者が、
それをあくまで第一段階に、あんな目やこんな目にあっちゃうあたりのやり過ぎ感が素晴らしかったなぁ。
そして、英国は同じく“トラバサミ”規制国のはずなのに、
本作以外でもこれの忘れ難い使い方を魅せてくれる作品が目に付く。
そんな英国ホラー2作品と、
「あ」ことダリオ・アルジェントが米国で撮ったテレフィーチャー&日本のドラマをご紹介しよう!
●『サヴァイヴ 殺戮の森』(06)
『0:34 レイジ 34 フン』(04)、『トライアングル』(09)等の
クリストファー・スミス監督・脚本のスラッシャー篇。
東欧に研修旅行にやってきた武器メーカーの一行が、森の奥深くで正体不明の殺戮集団の餌食となっていく。
研修一行が、いわゆる森でバカが殺されるパターンとは一味違うバカっぷりを披露し、
ハードなゴア・シーンと絶妙なブラック・ユーモアのバランスも出色な一本となっている。
中でもトラバサミにかかった男の足を巡っての右往左往なエピソードは爆笑必至。
▼サヴァイヴ 殺戮の森 予告編
●『処刑島』(06)
『デス・フロント』(02)でデビューしたマイケル・J・バセット監督の第2作。
少年矯正施設で問題を起こした少年達が、孤島での矯正プログラムに参加させられるが、
そこでは謎の殺人者が彼らを待ち受けていた…
という笑いを除いた生真面目な『インブレッド』的なお話。
トラバサミは自滅パターン二段活用が効果的。
『ドッグ・ソルジャー』(02)で最後は犬(人狼だよ)になったショーン・パートウィーが、
島に同行する監視役として登場し、犯人に放たれた軍用犬に内臓を喰い荒らされて果てるのも見所。
▼『処刑島』予告編
●『愛と欲望の毛皮』(06)
ホラーのマエストロたちが腕を競ったホラー・アンソロジー・テレフィーチャー
“マスターズ・オブ・ホラー”の第2シーズン(ソフト邦題は“13 thirteen 〜マスターズ・オブ・ホラー2〜”)の一編。
禁断の地で捕獲したアライグマの毛皮に関わった人間が、
その呪いで凄惨で惨たらしい死を遂げていく様を描く。
監督はダリオ・アルジェント。
“トラバサミ”は最初は珍しくその本来の目的として使用され、
ジョン・サクソン演じる猟師が、かかったアライグマをそのまま踏み殺したり、
アライグマ自身が喰いちぎって逃げた足がトラバサミに残ってたりと、
動物好きが激怒しそうな場面の後で、
アライグマの呪い(笑)がかかった猟師の息子が、
オヤヂを叩き殺したあとで、自ら顔をトラバサミにこんにちは(笑)
トラバサミがらみ以外でも、KNBが腕をふるった特殊メイクがてんこ盛で
「あ」にしては素直に楽しい作品。
▼『愛と欲望の毛皮』予告編
●『おろし金に白い指』(90)
監督は西山洋一(商業デビュー作)、脚本は高橋洋(商業第2作目かな?)。
“コラボ・モンスターズ!! ”の二監督が、山上たつひこ原作『主婦の生活』を関西テレビ“DORAMADAS”で映像化したシュールなホーム・ドラマ。
スーパーで買い求めたおろし金で、大根おろしを作りながら、自分の指をすりおろしてしまった主婦。
彼女は、そのおろし金に危険な悪意が潜んでいることを知り、そのおろし金の調査をはじめるのだが…というお話。
ホラーと呼ぶには疑問もあるが、日常に潜む陥穽をなんとも言い難いタッチで描いており印象に残る。
“トラバサミ”は第1話の主婦と姑との言葉遊び的な会話のイメージ風に登場するが、その後思わぬ形で…
なおDVDソフトは“DORAMADAS”『戦慄の旋律』(伊藤潤二原作)が同時収録。
▼『おろし金に白い指』オープニングタイトル
しかし、今回まとめてみて初めて気づいたのだが、
2006年はこれら4本中3本が製作されたまさに“トラバサミ”イヤー状態。
何かそんな契機があったのかしら?(笑)
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