いつからだったろう…
そう、気づいたのは確か夏の終わり頃だったと思う。
手元に届くプレス試写の案内、特にJホラー系のものに聞きなれない名前を目にすることが増えてきたのは…
℃-ute?…
なんか、コピペしないと打つの面倒なんですけど!何語だよ?
Buono!?
ジョー・ダマトのいっちゃってるグロ・ホラー(褒めてます)
『ビヨンド・ザ・ダークネス/嗜肉の愛』の原題は“ぶいお おめが”だったけど、その親戚か?
ルネ・カルドナ・Jrとか、オラフ・イッテンバッハとか、
マッシモ・ダラマーノとかなら一般常識(ほらー者の)としてわかるけど、これらは全然わからんわ。
一体何が起きているんだ?
そんなほらー者の困惑と不安をよそに、いつしかそれらはJホラーを侵食してしまったのだった …
…という前置きは、タイトル共々大袈裟ですが(笑)
ハロプロ系の女性アイドルが出演のホラー作品を少し前から立て続けに観た。
元々古今東西を問わず、ホラーと少女アイドルの親和性はいい(もしくはそんな企画が多い)わけで、
最近でも先日近所のシネコンで見た『こっくりさん 劇場版』なる作品は、
AKB48の誰だったかが主演(パンフもなかったし、作品ともどもあんまり印象に残るもんじゃなかったけどね)だったりと、
別にハロプロ系以外の出演の作品も多々ある。
ただ正直、映画がメインではない今時アイドルに全く疎いぢぶん的には、
やはりほぼその存在も知らなかった(失礼)
ハロプロ系ユニットの女の子たちの出演作品に、
ちょっと面白いなと思えるものが続いたのは、新鮮な驚きでしたよ。
ケータイ小説原作が多く、イマ風等身大系ハロ・プロアイドル主演の作品は、
ホラー・ファン相手というよりは、同年代の少女を対象にした作りをしてるのも明らかだが、
それでも今回観た作品群は、
ホラー・プローパーな監督もしくはその志向のあることが観ていて伝わってくる監督が撮っているのも好ましい。
そんなわけで、それら、
『ヴァンパイア・ストーリーズ』
『ゴメンナサイ』
『携帯彼女』
『王様ゲーム』といったタイトルを、
既に都心部での公開を終えたものもありますが(でも、年明けには順次ソフト化されるよ)
原則観た順にまとめて紹介しておきます。
●『ヴァンパイア・ストーリーズ』
まず最初の『ヴァンパイア・ストーリーズ』は、
ある渓谷に合宿に来ていた大学サークルのメンバー殺戮事件を発端に、
その日から七日間の出来事をそれぞれ別の主人公にスポットをあてて描いた二部作。
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合宿途中に体調を崩して帰宅したことで難を逃れたセイ(柳下大)の元に
5年前に失踪した兄のアイ(加藤和樹)が帰ってくる。
実はアイこそ、合宿を襲撃した吸血鬼で、
同じ血をひくセイもまた七日後に迫った二十歳の誕生日に吸血鬼としての本能が覚醒することを告げる…
というのが“BROTHERS”編。
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合宿中になにかの攻撃を受け、友人が殺されていく中で森に逃れるもそこで襲われてしまったシュウ(馬場徹)。
山小屋で目覚めたシュウは、彼を助けたアサギ(牧田哲也)から、 彼が純潔種吸血鬼に噛まれ混血種吸血鬼になったこと、 そして七日以内に彼を噛んだ吸血鬼を倒さないと、彼はその吸血鬼の奴隷になってしまうことを告げる。
アサギもまた200年前に純潔種に噛まれ、
自分を噛んだ吸血鬼を倒したことで生きながらえてきた混血種だったのだ…
というのが“CHASERS”編。
それぞれストレートなホラーというよりは、“BROTHERS”編は兄弟の葛藤のドラマ、
“CHASERS”編は純血種を追う二人のロードムービー的興趣にソード・バトルを加味したアクションがメインの作品だが、
吸血鬼ものとしての伝統には結構忠実で、
純潔種と混血種、ニンニクや日光ではなくて紫外線の効能など、
独自にアレンジした部分も悪くはなく、VFX処理を加えて描いた動きの早いアクション描写も効果的だ。
何よりラノベやアニメなら例がなくもないけど、
低予算ながら今の邦画で実写でこのジャンルを撮る心意気がいいよね。
少なくとも僕的にはハリウッド製ブロックバスターな“ゆうぐれ”シリーズなんかよりも、
ヴァンパイア映画満足度は200%増しだったぞ。
因みに純潔種吸血鬼アイを演じた加藤和樹の眼光等が、
いくつかのシーンで岸田森を想起させたことも付け加えて置くので、
武井さんも観といたほうがいいと思う(全然違うって云われちゃうだろうけどね-笑-)。
監督はPV・CMなど様々な映像分野を手がけ、本作が長編デビュー作となる後藤光。
脚本は、TVアニメ『ONE PECE』などに参加している田中仁。
…ってなんかハロプロはどうしたって感じになってますな。
確かに本作はむしろD-BOYSだとか、仮面ライダードレイクだとかの
イケメン好き腐女子さまがたをメイン・ターゲットにした感じの作品ではありますが、
どちらもお飾り的ではあるけどヒロインはハロプロ系。
“CHASERS”編でシュウがふられるサークルの美女で、追跡行を共にするヒサコ役を演じるのは、
映画初出演となるモーニング娘。の田中れいな。
ただ私見(趣味)では、影のあるヒロインというよりは、
単なる勘違いコギャルにしか見えずって感じでイマ一つ。
一方の“BROTHERS”編では、兄弟とは血の繋がらない妹で、
セイに対し兄弟以上の感情を秘めたミドリ役に℃-uteの鈴木愛理が扮し、
こちらは健気な美少女ぶりがよくでていてまずは合格点。
といっても、この時点では彼女の名前を覚えるようになるとは思っていなかったのだが…
●『ゴメンナサイ』
次なる『ゴメンナサイ』は、日高由香原作のケータイ小説を
ハロプロのガールズ・ロック・ユニットBuono!の初主演で映画化したもの。
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成績優秀で文才もある黒羽比那子(夏暁雅)は、
黒髪の美少女ながらも周囲にうちとけることなく孤立していて、
クラスメートから“貞子”と噂される存在だったが、
実は内気で素直ないい子でした…だとタベちゃんで別の映画になっちゃうんで、
実際にも貞子チックにクラスメートに呪いをかけてましたとさってお話。
黒羽の才能に自分のプライドを勝手に傷つけられて嫉妬し、
イジメを仕掛けることで惨劇の発端を生み出す可愛い子ちゃん園田詩織に嗣永桃子が、
物語の語り部で平凡な美少女日高由香(原作者同名)には鈴木愛理がそれぞれ扮している。
やぁ、試写状にはBuono!表記できてたから、作品を観るまで“BROTHERS”編の子だとは全然気がつかなかったぜ。
作品の方は、黒髪の下からのぞく黒羽のねめつけるような視線、
自分の可愛さを自覚して女王のように振舞う園田など、
前述のように三人のキャラクターが極端に単純化されているのがいい意味で判りやすく、三人の演技もノリがいい。
素直にジュブナイル恐怖譚として楽しめる作りになっており、ほどよいショック描写も及第点。
呪いの伝播の設定に関して言えば、あまりにもあからさまな『リング』バリエーションで、
真相がわかるとちょっと醒めちゃった部分もないではないが、
実は結構効果的なのが作品の二重構造。
本作の冒頭は、アイドルとしてのBuono!がそのままでてきて、
「これから私達の初主演したこわ〜い映画を観てもらいますぅ」
的な前口上でスタートする。
正直いうとこれが始まったとき心の中で「帰っていいか…」と自問自答したのだが(笑)、
これがエピローグでの再登場に繋がると俄然と利いてくるのだ。
原作はチラッと書店で立ち読みしただけなんだけど、
これによって原作のケータイ小説というメディア性を活かした結末を、
かっちり映画に置き換える試みがなされていたといえよう。
しかもこのエピローグだが、
エンドタイトルで中断後にもさらにバックステージ描写として続き、
これがここまでやるか的に感動でしたよ。
ここでの“素”でのパニックを熱演したモモチ(…っていうんだってね。
先日晩飯食べたラーメン屋のテレビで初めて意識して見た嗣永桃子の天然系ブリブリアイドルぶりには、これとの落差に軽く眩暈を感じたけど…)は、
ここだけで主人公の鈴木愛理よりも強い印象が残ったとさ。
とりあえず今回紹介している作品の中で、一本だけを選ぶなら個人的にはこれ。
監督は映画美学校の第一期生で、『呪怨 黒い少女』などを監督している安里麻里。
女性ながら同期の清水崇同様に、ジャンル作品専門の実践派としての活躍ぶりが頼もしい。
ここで劇中ツボだった小ネタを書いておくと、
ヒロインの由香が黒羽さんに不審をいだき、親友に相談を持ちかける下りがある。
「読んだだけで、人を呪い殺せる呪文ってあると思う?」
そう尋ねる由香に親友は、あっけらかんとした口調で
「そんなのあったら、アメリカがとっくに武器に使ってるよ」と返す。
とても今時女子高生が発するとは思えないこの台詞は(立ち読みで確認した範囲では)
原作の小説には勿論ない。
そういえば、安里の師匠筋にあたるドクトル高橋洋は、
霊的国防だとかのオカルト与太話を好む傾向があるけど、
これってその影響っていうよりも、やっぱストレートに
『モンティ・パイソン・アンド・ナウ』の“恐怖の殺人ジョーク”オマージュなんじゃないかしら?(脚本は安里と南川要一の共同)。
●『携帯彼女』
で『ゴメンナサイ』の資料に眼を通した時に、
安里監督と鈴木愛理は本作の前にもホラーOVでタッグを組んでいたことを知り、
昨日ちょうど100円レンタルだったTSUTAYAでせっかくなので借りてきて観ましたよ。
それがこの春リリースされた『携帯彼女』。
こちらはkagen原作のケータイ小説で09年に映画化された『携帯彼氏』の続編作品。
携帯ゲームに昂じていた男が、行きずりの女性を惨殺し本人もその場で不明死を遂げる通り魔事件が多発。
友人が重症を負わされ本人は間一髪で危機を免れた絵理香は、
その日を境に何者かに殺害される悪夢を繰り返し見るようになる。
どうやら犯人達が昂じていた携帯ゲームの同名少女キャラえりかが、
自分に何かを訴えようとしているらしいのだが…
正確なところは調べてないんだけど、『ゴメンナサイ』の半年くらい前の作品になるのかな?
ただたかが推定半年程度なんだけど、
かなり『ゴメンナサイ』とは初主演の鈴木愛理の雰囲気が異なり、
どこかぎこちなくもそこがまた初々しいですな。
それでもクライマックスでは、安里の型破りな演出に応える怪演ぶりが楽しく、
皮肉な幕切れも悪くない。
総じて前作の『携帯彼氏』より楽しかったかなぁ。
もう一人のえりか役で、竹富聖花が共演してます。
●『王様ゲーム』
最後に紹介するのは、本日(12/17)公開となる『王様ゲーム』。
こちらは金沢伸明原作の同名ケータイ小説を、
ヒロインの智恵美にBerryz工房の熊井友理奈、
周囲に距離を置きながらゲームの真相を模索する莉愛にまたまた鈴木愛理、
そして謎の王様ゲームに強制参加させられる女子クラスメート役で
Berryz工房と℃-uteの残りのメンバーもフル出演で映像化。
これまでも真野恵里菜主演の『怪談新耳袋 怪奇』や
『ケータイ刑事(デカ) THE MOVIE 3 モーニング娘。救出大作戦!〜パンドラの箱の秘密』等
ハロプロ系の作品もプロデュースしてきたBS-TBS(旧BS-i)の丹羽多聞アンドリウが製作を手がけ、
小中千昭、黒沢清らとともにJホラーの基礎を築いた『ほんとうにあった怖い話』シリーズ、
『おろち』等の鶴田法男がメガフォンをとっている。
2年B組のクラス全員の携帯に、王様を名乗る差出人からのメールが届く。
そのメールはクラス全員参加で行う“王様ゲーム”で、その命令には24時間以内に絶対服従しなければならないという。
最初はイタズラ気分でゲームに参加していた生徒たちだが、次第に命令はエスカレート。
そしてついに従えるはずのない命令に応じなかった生徒が、その存在を消されてしまった…
原作は未読なのでタイトルから勝手にいやぁな(褒め言葉)集団サイコ系作品を期待してたところ、超常テーマ作品でしたよ。
正直中盤で、この広げた風呂敷をどう決着つけるのかと期待を膨らませたものの、
“呪い”という機械仕掛けの神様で処理しちゃってたのはちょっと残念かな。
まぁこのあたりは、原作に依拠してる部分なのかもしれないけどね。
鶴田監督は今回、お得意のJホラー的恐怖表現を廃し、
クラスメート個々の不安と恐怖を等身大で描いていくが、
存在を消された生徒が増え、ガランとした教室で、
何事もなかったように授業をしようとする教師などの不条理な恐怖描写をもっと観たかった。
前述のとおり、普通(?)の美少女ヒロインを熊井友理奈が演じ、
先出の作品では今回の熊井的な役所が多かった鈴木愛理は、
あたかも真相を知っているかのような役で、
ミステリアスなムード、そして彼女自身の最後の表情等、また別の存在感が味わえる。
Berryz工房と℃-uteの総出演に関しては、
個々のメンバーの名前すら判らないし…的なじぶんは、主役級の二人以外では、
とりあえず『ゴメンナサイ』で覚えたBuono!の二人に注目してみたところ、
夏暁雅は王様ゲームを回避する方法をクラスメートにふれまわり、
王様の逆鱗にふれ恐怖を加速させてしまう役、
嗣永桃子は結構最後の方まで生き残るも、
自らが助かるための王様狩に参加して玉砕する役でした。
実際、それぞれ他のメンバーよりは目だっていたけれど、
三人が主役だった『ゴメンナサイ』に比べるとそれでも大勢の中の一人扱いな感じですな。
またまた、ハジケタモモチを観たかったんだけどね〜(笑)。
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『ヴァンパイア・ストーリーズ BROTHERS』
2011年/日本/78min
配給:Thanks Lab.
2011年10月8日(土)よりユナイテッド・シネマ豊洲 他にて全国順次ロードショー公開中!
2012年1月13日 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントよりDVD RELEASE!
(C)2011「ヴァンパイア・ストーリーズ」製作委員会
『ヴァンパイア・ストーリーズ CHASERS』
2011年/日本/75min
配給:Thanks Lab.
2011年10月15日(土)よりユナイテッド・シネマ豊洲 他にて全国順次ロードショー公開中!
2012年1月13日 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントよりDVD RELEASE!
(C)2011「ヴァンパイア・ストーリーズ」製作委員会
▼映画『ヴァンパイア・ストーリーズ』 | VAMPIRE STORIES THE MOVIE
『ゴメンナサイ』
2011年/日本/93min
配給:Thanks Lab.
2011年10月29日(土)よりユナイテッド・シネマ豊洲 他にて全国順次ロードショー公開中!
2012年2月8日 バップよりDVD セル&レンタル RELEASE!
(C)2011 日高由香/アスキー・メディアワークス/「ゴメンナサイ」製作委員会
『携帯彼女』
2011年/日本/84min
ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントよりDVD RELEASE中!
(C)2011 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
『王様ゲーム』
2011年/日本/82min
配給:BS-TBS
2011年12月17日(土)よりシネ・リーブル池袋 他にて全国順次ロードショー!
(C)王様ゲーム製作委員会 2011
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