こんにちわ。印度です。
”北陸に映画祭の極北を見た!”と題して、
9月に行われた「カナザワ映画祭」のリポートをお送りしています。
今回はその3回目。
映画祭初日、最後の一本に見た、
これまたドキュメンタリー「残酷 裸の魔境」(1973)です。
客席をよく見ていると、私のように三本続けて座っている人もいます。
客の入りはほどほどというところですが、
開始時間(午後8時40分)を考えるとまずまずでしょう。
朝から晩までびっしりと珍しいプログラムが組まれているのが、この映画祭の特徴でもあり、
その気なら一日中映画漬けという至福なのか拷問なのかわからない時間を過ごすことも出来ます。
さて、この映画はヤコペテッティの「世界残酷物語」の影響化に生まれた、
いわゆる"モンド映画"の一本。
フランスの撮影隊がアフリカへ行ってヴードゥー教の秘儀(秘密の儀式)をあれこれ撮ったドキュメンタリー。
上映されたのは日本語ナレーション付の日本公開版で詳しい説明が無いのですが、
これはいわゆるハイチのヴードゥー教の源流である、
西アフリカの「ヴォドン」と呼ばれる土着宗教を取材したものと思われます。
日本語ナレーションでは「アフリカ」としか言わないのでどこの国なのかもわかりませんが、
ロケ地は西アフリカの旧フランス植民地のダホメー。
現在は国名がベニンと変わっています。
あのゾマホンの国と言えば、何となくわかるでしょうか。
始まるといきなり、「天然痘の神様へ捧げる踊り」というものが始まり、
何じゃそりゃ?何でよりにもよって疫病の神なの?
という疑問への答は全くないままに祈っていると
ヒョウの霊に降臨された男達が、生きたニワトリを「ウガ〜!」と唸って食いちぎります。
全編この調子で、
「天然痘の神に身を捧げて生き埋めにされる巫女」とか、
よせばいいのに体験取材を試みてニワトリを食いちぎったり、
生き埋めにされたりするフランス人といった気持ちの悪い映像が延々。
う〜ん・・・やっぱりこの映画祭は一筋縄ではいかないなぁ。
そんな中一番壮絶だったのが、ある村の子供達の入信の儀式。
どう見ても小学生位の子供達の全身にカミソリでズバズバ刺青(!)を入れていくのですが、
顔とか乳に切り込みに入れているシーンは余りに生理的に惨くて見ていられません。
一応、薬草の汁みたいなものをぶっかけながらやりますが、化膿しないのか心配になります。
しかも、痛みで声を挙げたりすると「神を拒否した」と見なされて、
村を追放されてしまうのでじっと我慢。
ナレーターの芥川隆行が例の名調子で、
「三分間我慢の子(70年代に流行ったカップラーメンのCMのもじり)、などというものではない」
とか冷静にツッこんでるのも酷いなぁ…
他にも子供達を「修行」と称して窓も無い粘土の小屋(一応寺院らしい)に閉じ込めて、
朝から晩まで読経三昧させている、ほとんど拉致監禁みたいな儀式もあり、
「暗黒大陸アフリカ」という懐かしいフレーズが浮かびました。
それにしても、この内容のナレーションに芥川隆行という人選も絶妙です。
神にささげる踊りをトランス状態で踊っている少女(巫女見習い)達を、
「彼女達は別にゴーゴー(60〜70年代のクラブミュージックみたいなもの)を踊っているわけではない」
という時代を感じさせるオヤジ感覚丸出しの解説をしてくれます。
全編この調子で、アフリカ=不気味!野蛮!未開!というイメージで描写されており、
容赦の無い野次馬根性丸出し具合が何とも清々しい映画でした。
「自然と共生」みたいなロハスネタか、
「物は無くても、心は豊か」みたいなスピリチャルな文脈で語られる、
眠たくなるようなドキュメンタリーしかない現在とは隔世の感もあります。
今はどうなっているのか知りませんが、ゾマホンに見せれば激怒するかもしれませんね。
こうして初日は終わり、外に出ると時間は夜10時半を回っていました。
朝から四本(実は、他に通常の上映作も観たので五本)の映画を観て、お腹一杯というところ。
しかし、これはまだ始まりに過ぎないのです。
明日からの映画漬けの日々に備えるべく、
ホテルへの帰り道に坦々つけ麺を食べて英気を養うのでした。
次回は二日目、今回の映画祭一番の問題作、
旧ソ連の鬼畜戦争映画「炎/628」のレポートをお送りします。
お楽しみに!
▼Documentaire Vaudou : entre vivants et morts, le sang (1 de 9) - YouTube
(関連ページ)
▼北陸に映画祭の極北を見た!”カナザワ映画祭”リポート?『マンソン 悪魔の家族』 - 映画宝庫V3
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