『HOUSE/ハウス』化け猫怪談で70年代美少女POP!

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武井「拝編集長、今日のメニュー、
   今回取り上げる映画『HOUSE/ハウス』と関係ないような気がしますが…」

テーブルには、大皿に盛られた牛タンとコンロが用意されていた。
編集長によると「得盛り牛タン塩」だそうだ。

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別に毎回メニューに凝ってくれと言っているわけではないが、
今日のラインナップは良く分からない。

拝編集長「そうでもないよ。映画のポスター、覚えている?」

武井「インパクトありましたね。
   野原に立つ家が長い舌を出しているやつ。
   なんでもデザイン原案は大林監督自身だそうで…あ」

HOUSE

そのこころは「舌」、つまりタンか…

つい「まるで大喜利じゃないですか?」と言ってしまう所だったが、
そういう返しはあまりにもベタで恥ずかしい。

私は全力で愛想笑いをつくり続けた。

house

HOUSE/ハウス』は、七人の少女たちが次々と家に食べられてゆくホラー作品。
1977年、東宝の夏休み作品として公開された。

自主映画からCF監督に進出、頭角を顕わしていた大林宣彦の劇場用初監督作品である。


当時、スタジオシステムが厳然と存在していた東宝のスタジオで、
まったく商業映画を撮った事のない監督の作品を撮影するのは前代未聞の出来事だった。
そして大林監督自身の発案で、新聞、雑誌、マンガ、ノベライズ、ラジオドラマなど、
今でいうメディアミックス的展開を仕掛けたのも初めての試みだった。

oobayashi

これは、後に大資本で角川書店が仕掛ける宣伝戦略の元祖ともいえる手法である。

原色を多用したポップなセット、大胆なカット繋ぎや合成、
効果音すれすれの独特なセリフ廻しなど、
それまでの映画ではありえなかった描写を多用。

house

シュールを通り越したコミカルな展開は、
ホラー映画というよりはファンタジー映画として受け取られ、多くの若者の支持を得た。

house

また、ただポップなだけではなく、それらの中に抒情的なものも込められており、
見世物的なものだけには終わらない魅力があった。

この映画の成功を見て、
松竹では大森一樹監督『オレンジロード急行』、
東映では寺山修司監督『ボクサー』など、
大手撮影所で助監督経験のない監督の作品が作られるようになった。

また、映画公開と同年、ぴあフィルムフェスティバルも始まり、
自主映画出身の大林監督の成功に刺激され、八ミリ映画熱も盛り上がった。

拝「映画の中で、尾崎紀世彦が階段から落ちるシーン、
  あの「人間アニメーション」は自主映画やった事ある人なら、
  必ずやってみたんじゃないかな」

武井「エンディングの池上季実子も、八ミリのような撮り方でしたね。
   自主映画っぽさがそこここに残っているのが、とても斬新でした。」

house

「そういう所を見て、当時の八ミリ少年たちの血が騒いだんだよね。
 自分たちでも出来るんじゃないかって思えて。


 それにしても、全編特殊効果みたいな映画だったね」

「CM演出の時の経験がものをいったのだと思います」

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「あ、そうそう、出てきた女の子たちの話、忘れているじゃない。
 この映画は、やっぱりそこでしょう。
ど〜んと書いてよ。読者が楽しみにしているよ」

「拝さんが、ですよね…」

主役の女学生七人が、全てあだ名で呼ばれているというのも斬新だった。
しかも、そのあだ名が、特徴を端的に表わしていたために、キャラクターが実に判り易かった。

七人の中で、当時一番名前が売れていたのは、主役「オシャレ」を演じた池上季実子

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テレビシリーズ「愛と誠」や、今井正監督「あにいもとう」などで注目されていたが、
この作品では、元気な女学生から、落ち着いた和美人までを堂々と演じ分けていた。

また、夢見がちな「ファンタ」を演じる大場久美子は、
映画公開直前、歌手デビューをしていた事もあり注目を集めていた。

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怖がりの女の子という、ホラー映画にはなくてはならないキャラクターを好演、
最後まで生き残り映画を盛り上げた。

武術を使う男勝りの「クンフー」も忘れられない。
演じる神保美喜も長身でグループ中一人目立っており、
何故か途中からタンクトップとブルマー姿で大暴れ。
最後まで生き残ってもらいたかったキャラクターだった。

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いつもメガネをかけたガリ勉少女、でも素顔は美人という「ガリ」を演じたのは松原愛
大林宣彦が演出したTOTOホーローバスのCM「お魚になったわたし」で入浴シーンを披露していた事で知られていた。
それもあったのか、映画でも、ヌードシーンを披露している。

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ほかにも、スイカになって大場久美子のお尻に齧りつく、喰いしんぼう「マック」の佐藤恵美子
ピアノに食べられてしまうという冗談のような最後を迎える「メロディ」を田中エリ子
掃除好きの「スウィート」を宮子昌代が演じている。

拝編集長「みんな可愛かったね。
 しかも、何故かあまり意味のない所でヌードになる。
 松原愛の水中ヌードとか、ラストの池上季実子は、脱ぐ必要なかったなあ。
まあ、俺はいいけど」

と、焼きあがった牛タンを頬張りながら編集長。

「でも、大林監督映画に出てくるヌードは、エロチックというよりも、
 清楚さを感じるものが多いよ…まあ、これも、どっちでもいいけど」

武井「池上季実子のオシャレだけは、名字が「木枯」ってわかっているんです。
   父親を演じているのが作家の笹沢佐保だから」

「『木枯らし紋次郎』…のダジャレだね。何とも人を食った話だ。
 まるで大喜利じゃない!」

「大喜利、ですか…。確かに人を喰う映画ですけど。

 話は変わりますが、忘れてはいけないのは、西洋風の題材を扱いながら、
 和風なものへのあこがれも、かなり強く描き込まれている事です」

「そういえば、南田洋子の「おばちゃま」は、明らかに化け猫だし、
 松原愛がヌードになるラストの血の海は、
 どう見ても『東海道四谷怪談』の戸板返しだ。」

house

「舞台になった「羽臼亭」は、入口が洋館、母屋が日本家屋でした。
 それと同じように、オーソドックスな和製怪談映画のテイストを
 西洋風のイメージで描いた事が独特の世界観を創りだしたのだと思います」

「次回なんだけど、また大林監督はどう?」

「それなんですけれども、そろそろ、岸田森さんの事もやっておかなくてはまずいかと…」

「そういえばそうだ。この連載は、確か、岸田森さん中心だったものね」

「確かって…もしかして編集長、忘れていました?」

「ゲ、ゲホゲホ、今年の夏風邪はしつこいなぁ……。」

「じゃあ、こうしましょう。大林宣彦監督と岸田森さんというくくりでどうでしょうか?」

「それ決定!ど〜んと書いてね。じゃあ、次回もこの居酒屋で」

「はい」

(余談)
このアラスジ、凄いです。HOUSEとは思えません(笑)


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