武井「お、赤ワインですね。
拝さん、今日はストレートに攻めてきましたね」
拝編集長「まあ今回は『血を吸う』シリーズの第一弾
『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』だからね。
「血をイメージして赤だね!
と、満面の笑みで編集長は、グラスを差し出し乾杯をした。
「よかったです。
ウケを狙った編集長が、居酒屋に人形焼きなんて持ち込んできたら
どうしようかなって思っていたんですよ
「え?さすがに、それはないよ」
「確か、この間「スカイツリー見に下町の方に行った」
なんて言ってましたよね。
もしかしたらその時に人形焼買ったかもしれないなんて、
邪推しちゃいました。どうもすみません。
拝「勘弁してよ、ハハハ」
屈託なく笑っている編集長の横に
「木○屋本店」の紙袋が目立たなく置いてあった。
何の袋だろう?あれは、名物の酒粕アンパンかな…
山本迪夫監督は、テレビを中心に活躍した監督だが、
劇場用作品も六本監督している。
この六本は、全て田中文雄プロデューサーとのコンビ作品だ。
『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』は、二人のコンビ第二弾となる作品。
隔絶された洋館を舞台に、死の直前、催眠術をかけられてしまったために、
死の淵をさまよい続ける幽霊となった娘の悲劇を描く。
2人のコンビ第一弾『野獣の復活』が完成した際
「死ぬまでに1本だけ、人が悲鳴を上げるような映画を作りたい」
と語った山本監督の言葉に喜んだ田中プロデューサーが企画した作品。
田中プロデューサーは後に作家に転向、
ホラーを数多く書いていることからもわかる通り、
怪奇趣味があった。
けれども、観客が「悲鳴を上げる」ショッカーを撮りたかった山本監督は、
ホラーというものには、それほど興味はなかった。
それが幸いして二人の長所が見事に融合、
サスペンス、ショック描写を満載したホラー作品に仕上がった。
微妙な2人の好みの違いが、
他の追随を許さない優れた和製ホラー映画を作り上げたのだ。
また、この時同時公開されたサスペンス映画『夜が呼んでいる』も、
二人のコンビ作品。
二人のコンビ第二弾は、二作品同時公開だったのだ。
武井「実はこの作品、吸血鬼出てないんです」
拝「そうだっけ?」
「吸血鬼というよりも、首を切り裂く殺人鬼です。
母親の首にある切り傷がトラウマになっていて、
犠牲者に同じような傷をつけるみたいな感じです」
「タイトルが『血を吸う人形』だから、
吸血鬼出ると思っている人多いと思うよ」
「吸血鬼というよりも、ゾンビと言ったほうが感覚が近いと思います」
「それにしても、幽霊を演じた小林夕岐子さん、
まるで「人形」そのもの。
美人だし異世界の人としか思えない。
こういう娘、本当に好…いや、なんでもない。
「彼女の存在自体が、人形といっても良いですね。
岸田森さんと同じく、彼女なしではこの映画は出来ませんでした。
素晴らしいキャスティングです」
「そういえば『ウルトラセブン』の「アンドロイド〇指令」でも、
マネキン人形のアンドロイド演じてるし!
やはり人形。あれは好み…いや、なんでもない。」
この映画は、二本立ての一本として製作されたために、
ランニングタイムが71分とかなり短い。
だが、限られた登場人物とシンプルなストーリーで展開する
ゴシックホラー調の物語は、無駄が無く一気に見られる。
南風洋子の無表情な母親、
せむし男イゴールそのものの高品格、
健康的なカップル中尾彬と松尾嘉代、
人の良さそうな老医師宇佐美淳也と、
出演者のコンビネーションも見事、作品を盛り上げて行く。
また、階段を降りながらの登場シーン、悪夢の中での襲撃、
隔絶された洋館、無国籍的な展開など、
後のシリーズで多用される演出がすでに効果的に使われている。
山本監督自身も、後に
「この作品がシリーズ中一番思い通りに出したいものが出せた」
と、インタビューに答えている。
連作三本の中では、一番見事にまとまっている作品と言えるだろう。
また、忘れてはならないのは、真鍋理一郎のBGMスコア。
特にチェンバロとオルガンを使ったオープニングの音楽は、
ホラー映画の王道を行く見事なものである。
拝「DVDのメニュー画面、オープニング曲が延々流れるんだ。
バックのCG画面も良く出来ていて、
夜中1人で見るとかなり怖いよ。試してみたら?」
武井「遠慮します。
「そういえば、村人役の二見忠男さん、いい味出してたね。
血を吸うシリーズ皆勤賞だ。
もしかしてこの連作、二見さんのためにある?
「ん?それは……
話は変わりますけれども、
あの洋館、岸田森さんが出演したテレビシリーズ
『火曜日の女 木の葉の家』と外観のロケ地が同じなんです。
「血を吸う」シリーズの番外編ともいえる作品なので、
機会があれば見て下さい。
岸田森さんかなり怖いです。
「前にCSのファミリー劇場でやってたよね。
今度再放送されたらチェックしてみるよ。
ところで、次回なんだけど…
もう一本、寄り道してホラー特集でお願い出来ないかな。
実は殿井さんからDVD借りて来たんだけど、
日本の特撮系ホラー映画といえばこの作品にとどめをさす 『吸血鬼ゴケミドロ』!
せっかくだからやっちゃおうよ!
「この間の納涼打ち上げでも言った通り、
この作品何故か機会が無くて見られなかったんです。
やっぱり吸血鬼出るんですか?
「教えな?い!
じゃあ、人生初ゴケミドロ、楽しんで来てね。
来週は青汁注文しちゃおうかな♪」
ニコニコしながら、編集長はワインを追加注文している。
何故青汁?吸血鬼は?(もう見た人には全く関係がない話だが)乞うご期待!
(編集部注:木○屋本店は、浅草寺仲見世にある人形焼が美味しい店です。
酒粕アンパンは銀座木○屋の名物です。念為)
▼幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形 予告編
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