近年では『HERO』『LOVERS』などの、海外資本も取り込んだ
武侠大作の監督という印象が強いチャン・イーモウ監督。
今年は久々に、新人チョウ・ドンユイをヒロインに、
文化大革命時代を背景にした『サンザシの樹の下で』で、コン・リーやチャン・ツィイーと組んでいた頃を思わせる純愛映画に戻ってきましたが、
今年2本目の新作となる『女と銃と荒野の麺屋』は、
『サンザシの樹の下で』の前年に撮られた一本前の作品。
あまり日本で知られた出演者は出ておらず、
作品規模的には大作ではないけれど、
ちょっと面白い刺激を味わえる作品です。
昔々の中国、
万里の長城の西端に近い荒野にある一軒の中華麺屋で、
ペルシャ商人がアクロバティックな剣の舞を披露しつつ、
武器を売りつけようとしていた。
麺屋の主人の若い妻は、商人に最強の武器が欲しいと告げると、
一丁の拳銃を手に入れる。
跡継ぎが欲しい主人に10年前に買われた若妻だったが、
跡継ぎは出来ずに元々希薄だった夫婦愛は今では全く残っておらず、
住み込みの気弱な従業員と浮気をしていた。
妻が浮気をしていること、
そして銃を手に入れたことを知った主人は、
妻の裏切りを知らせた巡回警察官に、
高額な報酬で妻と従業員の殺害を依頼するのだが…
昼と夜で全く違う顔を見せる荒野の風景。
西域に近いということなのかも知れないが、極彩食で派手な衣装。
時代・風俗設定的には、
ちょっと現実離れしたムードが漂うものになってるこの作品。
でもお話はどこかで聞いたことがありますよね?
そう、これはあのコーエン兄弟のデビュー作
『ブラッド・シンプル』のリメイクなんですよ。
基本的なストーリー・ラインは原点にかなり忠実でありながら、
登場人物たちの言動はけたたましくも愚かしく、
でもバイタリティを感じさせる。
舞台がバーから、より直接的に食べる麺屋になってるのも、
そんな現われかな。
劇中の料理のシーンや、警官隊に麺を振舞うシーンの
なんと美味そうなことよ。
また妻の浮気相手以外にも男女一人づつの従業員がフィーチャーされ、
彼らの不払いの給料を巡っての欲望が、
よりコミカルに物語をひっかきまわす。
それらを大陸的と称するのは、いささか短絡的かとは思うけれど、それ故に
ハードボイルド要素よりもブラックな人間喜劇的な側面
が強調されて、コーエン作品としてはむしろ
『ブラッド・シンプル』以降のコミカルな作品に近いテイストかな。
それでも、クライマックスでの妻と殺人者の対決は、
闇の中に銃痕から漏れる光が印象的なオリジナルの名場面を、
緊迫感はそのままにでもちょっと予想外な形で再現しており、
やっぱり
これは『ブラッド・シンプル』だったのだ
と、納得すること請け合いです。
▼A Woman A Gun and a Noodle Shop FULL TRAILER - YouTube
************************************
女と銃と荒野の麺屋
A WOMAN, A GUN AND A NOODLE SHOP
2009年/中国/90min
配給:ロングライド
9月17日(土)からシネマライズ ほかにて ロードショー!(全国順次)
(C) 2009 FILM PARTNER(2009)INTERNATIONAL INC. ALL RIGHTS RESERVED
▼映画『女と銃と荒野の麺屋』公式サイト
************************************
コメントする
※ コメントは認証されるまで公開されません。ご了承くださいませ。