エログロごった煮のド直球”吸血鬼”映画!『血を吸う薔薇』

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「今月、映画宝庫V3はホラー映画を中心にド?ンと行くのだ!」

という拝編集長の方針で、今回紹介するのは
血を吸うシリーズ第三弾血を吸う薔薇』。

bara

岸田森が吸血鬼を演じた二本目の作品だ。

拝「この作品、前作『呪いの館 血を吸う眼』とかなり趣が違うよね。
  二年間たってから製作されたし」

武井「田中文雄プロデューサーが、
  その間映画以外の仕事に関わっていたかららしいです。
  それに『エクソシスト』とほぼ同時期に公開されていますから、
  それに合わせて企画されたのかもしれません」

「なるほどね。
 でもこの映画、隔絶された女子寮が舞台で、女学生よりどりみどり。
 これぞ男のロマンと言っても過言ではない作品だね。

kurosawa

 じゃあ、そこらへんをド?ンと書いちゃってね」

そう言うと、拝さんは店員を呼びとめ料理の注文を始めた。

そういえば、今日の拝さんは、
いつもと違って料理にこだわっていない事に気付いた。
さすがにもうネタ切れかもしれない。

それにしても、端から端までメニューを舐めまわすように見ているなあ…


シリーズ第三弾血を吸う薔薇』は、1974年7月に公開された。

bara

先にも触れたが『エクソシスト』が巻き起こした
オカルト映画ブームの初期に公開された事になる。

exorcist

この作品の特徴は、前作よりもバラエティに富んだ作風だ。

学園ドラマ風の女学生描写、
佐々木勝彦が演じる狡猾な副学長、
伊藤雄之助が演じる役に立たない刑事、
そこにいつも通りのキャラクターの田中邦衛と、

tanaka

アクの強い登場人物が多数登場する。

前作『呪いの館 血を吸う眼』のシンプルなゴシックホラー描写とは
全く正反対の、ごった煮感満載の構成だ。

ほかにも、
吸血鬼が襲うのは、ただ血を吸うだけが目的ではない
という捻りがあり、映画全体にミステリー色がかなり濃いのも特徴。

bara

中盤になって、
吸血鬼夫婦が生き続けるために顔を剥いで奪うという事がわかるが、
この時のイタリアンホラー張りのゴア描写が結構気色悪い仕上がり。
これも前作とはかなり違うテイストだ。

bara

また、隔絶された女子寮という舞台をわざわざ設定したあたり、
エロチックな描写をふんだんに盛り込もうという意図が見えて、
作品の製作背景がよくわかる。

拝「この映画の吸血鬼は、胸から血を吸うんだよね。
  これはエロチックだった」

武井「山本監督は
「あれはひょっとして岸田森が言いだしたのかもしれません」
 って、後年のインタビューに答えています。

 吸血鬼の転生というプロットは、
 多分、ハマーの『ドラキュラ血のしたたり
 あたりが元ネタだと思うんですけれども」

sitatari

拝「最初に出てくる女幽霊役の麻里とも恵さんって、阿川泰子さんの事でしょ。
 服はだけちゃってかなり色っぽかったね」

agawa

武井「意外な人といえば、この映画の監督助手は小栗康平さんです。
 『泥の河』でアカデミー外国語映画賞にノミネートされたことのある」

「うわ、それは凄い」

「学長夫人役の桂木美加さん、
 前作では吸血鬼の犠牲者でしたが、今回は堂々最初から吸血鬼です」

mika

「桂木さんって、「帰ってきたウルトラマン」のMAT・丘ユリ子隊員だよね。
 この人も、二作続けて吸血鬼か…
 もしかしたら、
 日本のカーミラは桂木さんかもしれない。
 いや、そうに違いない!」

「それに、二見忠男さんも連投です」

「?無人駅?の駅員だっけ。
 たった二カットなのに、あの人が出てくるだけで異次元感が漂うって、
 凄い使い方だね。

 じゃあ、そろそろ肝心の岸田森的視点をお願いね」

影のように跋扈した前作と違い、
今回の岸田森は最初から正面切って怪しい事をにおわせる役作りだ。

Evil%20of%20Dracula

洋館の階段を下りながらの登場は、
本家ハマーのドラキュラ映画をかなり意識していると言っていいだろう。

前作『呪いの館 血を吸う眼』を見た観客は、この登場シーンから
岸田森が吸血鬼だとすぐにわかるような作り方をされている。

朗々としたセリフまわしは、周りの出演者とあきらかに違ったテンポだ。

その違いが異世界的で、普通の人ではないような雰囲気が良く出ており、
非常に計算された演技プランだといえるだろう。

kishida

前作での吸血鬼役の成功が自信につながったのか、
堂々と吸血鬼役を演じているのがわかる。

また、前作にもまして凶暴性を発揮。

特にラストシーンでは、ドアをぶち破ったり、
胸に刺さった斧を投げ返してきたりしながら、
主人公黒沢年男を何回も投げ飛ばして部屋を破壊しまくる
大迫力の暴れっぷりを見せてくれる。

kishida

火かき棒を胸に刺されても暴れ続け、
その刺さった火かき棒を、椅子で何回も叩き込まれて、
やっと留めをさされるモンスターぶりだ。

岸田森自身はあまり身長も高く無く、
身体も細くてしなやかなのだが、
これだけ堂々と大迫力のアクションが出来るのかと、
感心するくらいラストシーンでは暴れまくる。

ここまで岸田森がアクションをこなした作品というのは珍しいと思う。

kishida

拝「もう、黒沢年男さんラストで吸血鬼に袋叩きだったから。
  見ていて可愛そうになっちゃった」

武井「斧刺されても、火かき棒で刺されても死なないって、
  本家イギリスの吸血鬼でもそんな描写ありませんから」

拝「これだけストレートな吸血鬼映画、
 日本ではこの二本だけでしょう。
 七十年代だからこそ成立した映画かもしれないね。

 ところで、次回だけど、ちょっと寄り道して
 シリーズ第一作目『幽霊屋敷の恐怖/血を吸う人形
 でお願い出来ないかな?

ningyo

 岸田森さんは出ていないけれども、ここまで書いたんだから、
 せっかくだしシリーズ全部やっちゃおうよ」

武井「はい。いいですよ。
  今月の映画宝庫V3はホラー特集ですし」

拝「じゃあ、来週またこの居酒屋で」

その時、店員さんが料理を運んで来た。
一気に沢山頼んだので、時間がかかったらしい。
しかし、このラインナップは…

トマトの甘酢あえ、霜降り桜肉の刺身、キムチ、
マグロのお造り、アスパラベーコン巻、チンジャ、
スパゲッティナポリタン、南蛮エビのお造り、チゲ鍋…
テーブル中、真赤だ。

「やっぱり『血』だから赤だよ。こういうの面白いでしょ?」

満面の笑みで拝さん、焼酎の中に沈んでいる梅干しを割り箸でつついている。

私は、一緒に来た?とちおとめ苺カルピスサワー?という、
赤くて甘そうなドリンクに口をつけながら、
あいまいな笑みを返すしかなかった。

▼血を吸う薔薇 予告編


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