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『シン・仮面ライダー』秘密座談会③(終)

ショッカーは究極の「有難迷惑」組織

山本

ショッカーの話の続きなんですけど、雑誌で連載してる漫画知ってますか?

Tks

ヤングジャンプでやってるスピンオフ『真の安らぎはこの世になく』ですね。

山本

あれでショッカー側の事を補足しようとしてますよね。
まだ漫画の中でもはっきりとした組織じゃないけど。

Tks

僕も1巻読んだけど、イマイチよくわかんない(笑)

浅尾

そうなんだ。

金子

まだAIが出来立てで、幸福論みたいなのを求めて、プランニングどんどんしてっていう。

人もまだ集めてる最中。
Kもずっと観測してるだけだから、悪の組織っていう所までまだ行きついてもいないっていう。

金子

「仮面ライダーは人類の自由の為にショッカーと戦うのだ」という有名な一節がありますよね。

今回ルリ子が一文字の洗脳を解く時の「魂を解放しなさい」だったり、立花の「本郷には本郷の乗り越え方がある」だったりから、その意味が垣間見える瞬間があって。

浅尾

ほうほう。

金子

ショッカーのAIは最も辛い人を救済するために、肉体をアップデートして本能のままに振る舞える方法を選択したんですけど。

アップデートされた側は好き勝手に行動することができるけど、果たしてそれは本当に自分自身で掴み取った幸せなのか?

人間というのは互いに歩み寄って、支え合って、どんなに辛い事があっても乗り越えていく。
それが人が生きる上での醍醐味であり、自分達で乗り越えたからこそ幸せを感じることができる

ショッカーはそんな人間の一番人間らしい部分を逆に奪ってしまう、究極の有り難迷惑な悪魔の組織だと思います

Tks

なるほど!

金子

ショッカーのオーグメントは、自分達の幸福の為に他人を犠牲にするのに対し、仮面ライダーは自分を犠牲にして誰かの幸福の為に戦う。

ショッカーのAIはまだ発展途上、その導き出された幸福プログラムに対し、人間の可能性を見せていくことで、軌道修正することが可能だとすれば、ライダーの戦いはバグとデバッグのようなものなのかもしれませんね

浅尾

なかなか深い考察ですね。

Tks

究極の有り難迷惑組織かあ。凄く腑に落ちました。

浅尾

今回のショッカーはそんな解釈でいいのかも。

オマージュネタの良し悪し

金子

僕の父親はTV直撃世代だったので、原作漫画は読んでないんですよ。
だから映画で漫画っぽいとこが出てもよくわからない。

「あれ?俺が見たかったのは、本郷猛が出てきて
変身!って言って戦う奴だったのに。
ショッカーは悪の組織じゃないの?」って。

まさにさっき浅尾さんが仰っていた事と同じ感想ですよね

浅尾

TVに影響を受けた人は、そういう感想持って当たり前でしょうね。

金子

だから僕が、石ノ森先生の原作漫画ってのがあってね、こういうシーンがこうでねって説明して、ようやく理解してくれたんですけど。

なんかすごいCGでカクカク動いてるシーンは、たぶんTVの1話で蜘蛛男を取り囲む戦闘員がカクカク動いてるところを意識してるんだとか。

金子

庵野さんが「キューティーハニー」撮った時にやった、ハニメーションってやつも、その当時の竹本浩一監督が撮った、サソリ男がでんぐり返しをしながらぐるぐるぐる回ってる不思議な動きを再現してたよとか。

金子

そういう絵作りのオマージュみたいな所って、凄くやりたい気持ちはわかるけど、元ネタの知識がないと、普通の人には伝わんないですよね。

浅尾

だから最初に言ったマニアの答え合わせ映画なのよ。
知ってる人が見ると、あれはあれだよねって全部当てはまる。

金子

最後に竹野内豊と斎藤工が名前を明かすとこも、立花藤兵衛と滝、二人の事を知らないと、??なんじゃないかと。
ただ名前言うだけですもんね。

浅尾

さすがに竹野内豊の下の名前は”藤兵衛”じゃないでしょうけど(一同笑)

金子

確かに
「本郷には本郷の乗り越え方がある」
とかいうセリフとか、
あれは立花藤兵衛の優しさのオマージュで、ちゃんと本郷に寄り添ってたんだなっていうのは、よく見るとわかるんですけど、でも1回見ただけじゃ、多分わからない。

最後に名乗ったところで「誰だったんだ?」ってなっちゃいますしね。

金子

そういう元ネタの知識がない、わからない人にとって、マイナス的に表現すると、淡々と紙芝居のようなシーンが続いていて、このキャラクターは「一体何なんだ?」ってなっちゃうから(気持ちが)シャットダウンされちゃうんですよね。

浅尾

そういう事でしょうね。

金子

そうすると、キャラクターに対する思い入れが構築されないまま、
映画のストーリーがどんどん先に行っちゃう。

ラストでイチロー兄さんとルリ子の泣ける絡みがあったとしても、感情移入できてないから
「何やってんだろう。なんか泣けるシーンらしいけど」
みたいな感じで終わっちゃう。

本郷もなんかあっさり「死んじゃった」みたいな。

金子

そこが原作漫画を読んでると、ラストのヘルメットの中に本郷の心が残ってて、一文字と一緒に風を感じながらバイクで走るところも「漫画そのままじゃん!」って感動できるし、漫画だと本郷はそのあと脳みそを機械の体に移して再登場しますから、
映画でも続編でそうなるんじゃ!
とかいろいろ妄想できるけど
そういう知識がない人にとっては、なんかただ終わっちゃったなみたいになっちゃう。

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