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筆:浅尾典彦(夢人塔代表・作家・治療家)
※本文はネタバレを含みます。ご注意ください。
AIと人間のかかわり
AIが急激に進歩してきている今日。
工場、運輸、人間の日常生活の中にもロボットやAIの能力が入ってきている。自動運転に翻訳機、生成AIなどなど、かつて手塚治虫の描いた未来がもう手に届くようになってきた。
このままAIが発達すればどうなるのか? 仕事を奪われると恐れをなしている人たちもいる。実際、ファミレスではすでにネコの顔が付いたロボット(AI)が配膳を手伝っている。
シンギュラリティー(技術的特異点)といって、このまま行くと近々人類の能力をAIが超えてしまうことになり、その時に一体何が起きるかは不明である。それを「2045年問題」としている学者も多い。AIは人間の能力を超えてくると”人間に対して便利にはなるが、脅威にもなるかもしれない”と懸念されている。
科学の発達は人を幸せにするのか?
それとも脅威と化すのか?
そして、「AIと人類とは共存できるのか?」
チェコスロバキアの作家カレル・チャペックが最初の『ロボット』(人造人間)の出てくる戯曲「R.U.R.(1920年)」を発表してから100年余り。元々人間の奴隷として生まれてきたロボットたちは、多くの文学や映画など芸術の中で多くモチーフとして扱われてゆく。
映画の世界では『ショート・サーキット』『her/世界でひとつの彼女』『ベイマックス』『アフター・ヤン』『アイアン・ジャイアント』などAIと人間とが仲良くなってゆくケースもあるのだが、S F映画に登場する多くのAIたちは脅威に変貌する。
『2001年宇宙の旅』(1968)の「ディスカバリー1号」内での制御コンピューター「HAL9000」や、『サマーウォーズ』(2009)の人工知能プログラム「ラブマシーン」のように勝手に暴走したり、『ウエストワールド』(1973)に出てくる巨大遊園地「デロス」のガンマン406号のごとく殺人に手を染めるモノもいる。
『ブレードランナー』(1982)の人造人間レプリカントは人類に反旗を翻し、『新造人間キャシャーン』(1973)の公害処理用ロボット・BK-1(ブライキングボス)はアンドロ軍団を使って人類制圧、『THX1138』(1967)ではロボット警察の弾圧、殺人指令を受けた『ターミネーター』 (1984)のT-600も、『ミーガン』(2023)の過激な行動を続けるお友達AI人形<M3GAN(ミーガン)>なども、人間に対して支配したり殺したりするという恐ろしい行為に出てくる。
AIの進化は人間にとって”恐ろしい未来”が生まれることを予見させる。しかし、映画の中では結局その目的はことごとく失敗するのだ。
ただ、中にはまれに成功した例もある。
1970年に人知れず劇場公開したSF映画『SF地球爆破作戦』Colossus: The Forbin Projectという映画では、アメリカと旧ソ連のスーパーコンピューター、「コロッサス」と「ガーディアン」が相互話し合いの末、結託して「平和社会」の建造をする。その手段は”逆らったら原爆を爆発させる”と人間たちを核で脅して完全に管理するという、諷刺の効いた作品だった。人間にとって核戦争の恐怖はなくなったが、ずっと機械に監視される世界は、それで本当に幸せなのだろうか?
「AIと人類とは共存できる道はあるのか?」
それを示した一本の映画がある。公開中の映画『ザ・クリエイター/創造者』だ。
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