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現代人が見るファンタジー『レンタル・ファミリー』(後編):HIKARI監督撮影エピソード

浅尾典彦(夢人塔代表・作家・治療家


日本を舞台に贈る、世界が経験したことのない未知の出会いに満ちた感動のドラマ。

東京で暮らす落ちぶれた俳優フィリップ(ブレンダン・フレーザー)は、日本での生活に居心地の良さを感じながらも、本来の自分自身を見失いかけていた。
そんな中、“レンタル家族”として他人の人生の中で“仮の”役割を演じる仕事に出会い、想像もしなかった人生の一部を体験する。
そこで見つける、生きる喜びとは――?

関西出身のHIKARI監督が、アカデミー賞俳優のブレンダン・フレイザーをと組んで、日本を舞台にして作った現代のファンタジック・ヒューマンドラマ『レンタル・ファミリー』は現在大ヒット公開中。

『37 セカンズ』でデビューし、その後も「Beef/ビーフ」「TOKYO VICE」など数々の話題作を発表し続けるHIKARI監督が、ベルリン国際映画祭の審査員を終えて、すぐに大阪の試写会の舞台挨拶に駆けつけた。

今回はHIKARI監督の作品に対する思いや、撮影話を一問一答形式で採録、紹介してみよう。

●舞台挨拶②
日程:2/27(金)19:00の回 本編上映後
場所:TOHOシネマズなんば スクリーン7
登壇者:HIKARI監

下記、Q&Aの模様をご紹介いたします。

Q. そもそも『レンタル・ファミリー』の発想は?

A. アイデアが浮かんだのが2019年。もうかれこれ7年以上温めてきた作品です。
劇場公開は実は日本が最後なんですよ。
日本でオールロケでだったのに……。

11月アメリカから始まって、イギリス、オーストラリア、スイス、ヨーロッパなど全体をぐるっと周ってきました。
韓国、台湾、時間がかかったけど、こうしてやっと日本の映画館で公開が出来て嬉しいです。

Q. 18 歳まで大阪で住んでいたとのことですが、そのセンスは作品に影響を与えていますか?

A. 子供の時、吉本新喜劇が大好きでテレビで吉本新喜劇を良く見ていた。
笑って、泣いて、最後にハッピーエンドという”黄金パターン”。
まさにそれが作品のベースになっています。

新喜劇は絶対に笑かせてくれるし、泣かせてくれるし、ちゃんとストーリーがあるので、そういうのが私はすごく好きです。
だからある意味、色んなハリウッドスターに会うよりも、未知やすえさんと内場勝則さんのお二人に会えたのが嬉しかった。

Q. 先日の来阪キャンペーンでご一緒されたんでしたよね。

A. そうなんですよ。小さい頃から見ていた人たちだからびっくりしました。
うわっ!みたいな感じで!
サインも貰いましたよ(笑)

Q. このイベントが始まる直前に”キャスティング界のアカデミー賞”とも云われている「アルティオス賞」を受賞されました!おめでとうございます。率直な感想をお聞かせください。

A. えーー、これは私も知らなかったです!
これってマジで凄いことです。大光栄です!

日本の作品で日本人のスタッフで、日本で撮影して、ハリウッドの役者さんはブレンダン・フレイザーさん1人だけでという形だったので、「世界の人からどういう風に意見が出るのか?気に入っていただけるかな?」とずっと思っていましたが、皆さんに「大好きっ」ていうメッセージを毎日フェイスブックやインスタグラムとかでいただける度に、「言語が違ってても、ハートが繋がっていればいいのかな」と、そこにたどり着きましたね。

Shannon Gorman and Brendan Fraser in RENTAL FAMILY. Photo by James Lisle/Searchlight Pictures. © 2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

Q.ラストシーンですが、あの終わり方初めからあのように終わると決めていたのか。 それとも何パターンかあったのですか?

A. シナリオ自身は何十回も書き直しています。
終わり方は2つ考えていて、1つの終わり方は「2人が橋の上でさようならする」っていうもの。
最終稿の脚本の時点ではこの終わり方で、私の中では「絶対これで終わりたい」っていうのがあって。
ただ、映画はアメリカのスタジオ側の方の「こうしてほしい」っていう意見も聞きながら編集していかないとダメなんですよね。

「最終的には、神社で終わらせたい」っていうことになった。
「アメリカから来た孤独な俳優フィリップのストーリー」なので、「彼が最後自分と向き合う」っていう意味と、「神様に向かって手を合わせたその先には鏡があり自分が写っている。
拝んでいるのも拝まれているのも実は自分、自分も神様の一部。デバイジング(※)っていう意味も含めて、最後はあのシーンになりました。
※デバイジングDevising: 台本から離れ、稽古での実験や現場での即興を通じて、出演者やスタッフが集団で一つ作品を創り上げる手法。

Mari Yamamoto and Brendan Fraser in RENTAL FAMILY. Photo by James Lisle/Searchlight Pictures. © 2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

Q. この映画で一番大変だったことは?

A. 涙、涙の毎日でした。
この映画の撮影の年は春がとても寒くて、桜が咲かなくてずっと桜待ち、桜待ちって感じで。
3週間ぐらい予定がずれたんです。

元々最後のお葬式のシーンは満開の日の予定だったんですが、ご覧の通り雨も降っていて。
あの日は朝一で撮影を始めた時はまだ雨は降っていなかった。
だから外のシーンから撮影を始めたんですけど、2時間経って雨が降り始めたんですよ。
結局、一回最初から撮り直しです。それが大変でしたね。

もともとあった桜が満開の学校の所に、フィリップが入学式の後迎えに行くっていう設定だったんですけど、もう桜が全然なくて……急遽キャンセル。
もう撮れないということになり、桜を探して駆けずり回りました。
そしたらあの橋だけ残っていて、良しこれしかないってロケハン翌日即撮影っていう。
そこも大変でしたね。
リアルにこだわらなければCGでやる事も出来たが、本物にこだわってよかった。

Q.天草に倉岳神社という所があるのですが、あの巨木はあの辺にあるのですか?

A. 倉岳神社は天空の城みたいな高いところにある神社でそこで撮りたかったが、雨と雲で何も見えなくていけなかったんです。
そこであの木になった。

あの椿があるところにロケハンにいった時はもっと木がワサワサしていて物凄く壮大だったんですけど、撮影で行ったら葉っぱがみんな落ちていて少し寂しい感じになっていた。
あそこは島自体が岩でできていて結構危ないので「撮影はどうかな」とも思ったのですが、もう一回観てもらったら分かりますが、あの椿の木は根っこで岩の上に張りついているんです。
そのビジュアルが「なんか生きてる!」ってすごい感じで大好きだったのであそこを選びました。

本当はあそこへ降りる階段もあるんだけど、全部木の葉とか植物で隠して、下から山道をしたから昇ったイメージに仕上げたんです。すべて美術さんのおがげです。

Q. 主演のブレンダンさんのお茶目なシーンをたくさん見せてもらいましたが、「お好み焼き」をひっくり返すシーンは何テイクかされましたか?

A. 2、3テイクしたかな。
結構何度か彼を「お好み焼きやさん」に連れて行ったりしていた。
でもひっくり返したのはあの時が初めてで、普通のひっくり返し方とは逆にしたんで、「あ、落ちると」思ったけど何とか大丈夫でしたね(笑)

Q. 仮想空間など色々混ざり合って描写されていたのがとても印象的でした。私には“ファンタジー”のように感じましたが、この作品はどういうジャンルの分類に入るのでしょうか?

A. この作品のジャンルは最初は“ドラマ”でと思っていた。
アメリカでは英語でドラマとコメディが合体した“ドラマディ”というものがあるのですが、元々脚本を書いてた時は、ドラマの意識で書いていて、そこに“ユーモア”を入れてという形だったんですけど、気が付いたらアメリカでは“コメディ”の扱いになっていました!

でも誰かが「これはコメディじゃないって」いう風に言ってくれて、今は“ドラマ”に戻っています(笑)
でも、確かに“ファンタジー”と思われる方もおられて、世界中でよくそういうお声も聞きますね。
そういう処もあるのかもしれないですね。
人生は“ファンタジー”ですから。

Q. 人材派遣サービスをしている会社で働いている人に実際に話を聞いたり、それを作品に取り入れたりなどのリサーチはあったのでしょうか。

A. もちろん!最初に私の共同脚本家のスティーブンと一緒にしました。
アメリカ人が日本でお仕事をする時に「どんな仕事があるのだろうか」と色々検索していたら、”パトラー”っていうのが出て来た。

執事の恰好をしてコーヒーを出したり、英語の先生とか。そんな中で”レンタル・ファミリー”が出てきて、「レンタル・ファミリーって何なの?」となりさらに調べ始めた。
そしたら、「本当に心がきゅーってなる」すごく悲しいストーリーもあった。

その一つが「男性が亡くなられる前に疎遠になった娘にどうしても謝りたい。」
でも連絡がつかないから、彼女の代わりを、つまり「レンタル・ファミリー」を雇って、彼は謝ることが出来て最後亡くなられたというエピソードがあった。

そこから「色々何故このビジネスが日本に存在するのか、どういう人がこういうサービスを使うのか」にすごく興味が沸き、会社を経営されている人だけでなく、そこで働かれている人にも色々お話をききました。

ただ、そのクライアントはもちろん連絡が出来ないのでその辺りはリサーチで、小さな記事を全部拾い上げて「こういうのが実際にあるんだよな」っていうことを知って。それをベースに全く新しいオリジナルのストーリーを自分たちで書きあげました。

Q. 人生の中で心に残った作品でした。どうして日本の景色や映画を作りたいと思ったのか。また、どうして主人公(外国の方)から見た日本のアイデンティティを描こうと思われたのでしょうか?

A. 私は 18 歳、高校生でアメリカに行ったんです。
ユタ州の白人ばかりの町に住んだんですけど、その時に高校で“アジア人が唯一私 1 人だけ”という時期があった。
すごく寂しい思いをしていたのですが、そんな中でアジア人じゃない白人の人たちは私のことをすごく大切にしてくれました。

その頃、私は英語を全然話せなかったので「言葉が通じなくても国籍が違っていても、愛情が生まれるんだな」と体感したので、その時の感情を日本に(映画として)表現したかったです。

私は、日本を出てもう30年ぐらいアメリカにずっと 1 人で住んでいるので、日本に帰ってくると 「日本の素晴らしさ」をひしひしと感じます。

食べ物もそうだし。ベルリンから帰ってきてもとにかく日本のご飯が食べたくて仕方なくなります。
また「日本語の持つ美しさ」や「日本人の優しさ」とかを、日本国内にいる間は多分私たちは気づかない。
でも「日本の素晴らしさ」というのを、外から見た世界中の人が気づいています。

そういう発見も含めてこのストーリーを描きました。

Brendan Fraser and Shannon Gorman in RENTAL FAMILY. Photo by James Lisle/Searchlight Pictures. © 2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

最近は「日本人」と解ればみんな親切にしてくれる。
ここ2~3年、本当にそんな実感があります。

世界が多極化する中で、言葉や肌の色や宗教の違いは別として、そんな人たちが「みんなで手と手をつないでこの地球を良くする。」
そうすることが人間のミッションだと思っていて、この作品を観てもらって観た人が考え、ちょっとづつでも勇気を持ってもらうことで何か新しいつながりが生まれるんじゃないかと。

日本でも孤独を感じている人は多いと思う。
でも一歩踏み出す気持ちがあれば、絶対に新しい何かがあるから。
そう言う発見があることもふまえて、この映画は生まれました。

日本は本当に素晴らしい国です。
日本のアイデンティティを大切に、誇りをもって生きて行ってほしいと思っています。

是非、『レンタル・ファミリー』劇場でご覧ください。ありがとうございました。

『レンタル・ファミリー』 全国劇場にて大ヒット公開中!
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reservedka

『レンタル・ファミリー』公式サイト

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この記事を書いた人

SF、ファンタジー、ホラー、アニメなど“サブカルチャー系”映像世界とその周辺をこよなく愛し、それらを”文化”として昇華するため”の活動を関西で続けるFantastic Messenger夢人塔(むじんとう)の代表。1970年代より活動を開始。映画コレクター、自主映画、同人誌を経てプロライターへ。新聞・雑誌への掲載、映画会社の宣伝企画、DVDなどの協力、テレビ・ラジオの出演・製作、イベント・講演、専門学校講師、各種企画などグローバルな活動を続けている。
著書は『アニメ・特撮・SF・映画メディア読本』『ライトノベル作家のつくりかた』シリーズ、『アリス・イン・クラシックス』、『幻想映画ヒロイン大図鑑』他、青心社のクトゥルー・アンソロジーシリーズで短編を書く。雑誌「ナイト・アンド・クォータリー」「トーキング・ヘッズ」に連載。映画は『龍宮之使』、『新釈神鳴』、『ぐるぐるゴー』、『おまじない』などを企画製作。最近は「もののけ狂言(類)」と題して、新作の”幻想狂言”を発表している。また、阪急豊中で約半世紀の歴史を持つ治療家でもある。
夢人塔サイト http://mujintou.jp/

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