浅尾典彦(夢人塔代表・作家・治療家)
●感動の作品が上陸?いや帰って来た!
久々の『イマ推し・シネランド』。
今回は少し毛色を変えて、2月27日より全国公開中の『レンタル・ファミリー』について紹介してみよう。

オスカー俳優ブレンダン・フレイザーとHIKARI監督がタッグを組んだ”日本の優しさを”描いたハートウォーミングなドラマだ。
監督は『37セカンズ』のHIKARI、撮影監督は実写版『るろうに剣心』シリーズの石坂拓郎、美術監督は『HANABI』『座頭市』など北野武作品を手掛ける磯田典宏、編集は『チャーリーズ・エンジェル』のアラン・バウムガルテン。
主演は『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザー、『SHOGUN 将軍』の平岳大、『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』の山本真理、国民的名優『盤上の向日葵』の柄本明、ゴーマン・シャノン・眞陽、安藤玉恵、森田望智、真飛聖、板谷由夏、篠﨑しの、木村文らが脇を固める。
(あらすじ)
“歯磨き粉”のCMでスーパー・ヒーローを演じ一世を風靡したものの、最近ではすっかり世間から忘れ去られ落ちぶれたアメリカ人俳優のフィリップは、オーディションを受け続け小さな仕事を貰いながら、今も東京の下町で暮らしていた。日本での生活に居心地の良さを感じながらも、俳優業は先細り。人生も行き詰まり、本来の自分を見失いかけていた。
ある日、乗り気のしない葬儀関係の仕事がきっかけで『レンタル・ファミリー』の会社を経営する多田と知り合いになり彼から不思議な仕事を依頼される。『レンタル・ファミリー』とは、顧客のオーダーに応じて、大切な「家族」や「友人」の役割を演じて代行するサービス業のこと。一定の期間“仮の”家族となることで顧客に役立ち報酬を得るのだ。
フィリップは最初のうちは他人の人生に深く関わることに対して戸惑い、罪の意識すら抱く。だが、仕事を通して出会った日本人たちと交流するうちに、想像もしなかった他人の人生の一部を体験する事になる。そして、それにより彼自身の心にも変化が起こりはじめる。それは……、
フィリップを演じるのは『ジャングル・ジョージ』『ハムナプトラ』シリーズ、『センター・オブ・ジ・アース』(2008年)で人気を得て、『ザ・ホエール』第95回アカデミー賞主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザー。

監督は関西出身でアメリカ在住のHIKARI。日本を舞台に展開した人情ドラマで、『ザ・ホエール』でアカデミー賞に輝くブレンダン・フレイザーを日本に招集し、100%日本ロケで撮影した。
●人は幻想(ファンタジー)の中で生きる
今の時代、現実は厳しく、人は”幸せ”という幻想(ファンタジー)に憧れる。
一言で言うと、この映画は”幸せ”を”お金で買う”映画だ。
『レンタル・ファミリー』というのは家族や友人を金で買う事だ。もちろん偽物であり、それはゲームやバーチャル・リアリティのようなもの。時間が来れば泡と消える。必要なひと時、心の隙間を埋めるのだ。
少し前には普通に日本では体感していたはずの「人と人の心の繋がり」を求めて、必要な人がこのシステムを使う。これは日本の特殊事情に根差したビジネスであり、「レンタル家族」「人間レンタル屋」「恋人代行」などと呼ばれ、実際に稼働している。日本の企業がサービスを提供する目的で家族や友人をレンタルするのである。

相手の感情に寄り添う「心」のサポートという心理的側面が強調されており、オーダーは人によって様々である。この映画『レンタル・ファミリー』でも個性の強い顧客によっていくつものオーダーが描かれる。
生前葬で自分が愛されていたことを確かめたい男。
ニセの結婚式で親孝行をしようとする娘。
カラオケのパートナー、ゲームを一緒にやってくれる友達を求める人。
いなくなった父親を娘に与えようとする母など。
みんな心に少し欠けた部分を持っていて、それをシステムで埋めようとする。彼に最後の願いをする大物俳優の長谷川喜久雄(演:柄本明)は、「思い出」というファンタジーとともに生きようと決心してフィリップに託す。

主人公のフィリップもまた幻想(ファンタジー)なイメージを夢見て日本にやって来るが、現実の厳しさに苦しみや孤独を感じ、安いお金で買えるバーチャルな疑似恋愛につかの間の満足を得ている。
孤独を代行で埋める点では『レンタル・ファミリー』と同じなのである。そしてそれは『レンタル・ファミリー』のオーナーもまた同様なのだ。
人は孤独を何かで埋めなければならない。
●外国人から見た日本を描いた秀作
この映画『レンタル・ファミリー』はそれに向き合ったうえで現実社会の幻影の中に”真実”を見出す。疑似家族を通じて、近しい人とのかかわり方を再認識するのである。
フィリップの安アパートの窓から向かいのマンションの幾つもの部屋の窓が見え、人々の暮らしが見えている。ヒッチコックの『裏窓』と同じ演出なのだが、主人公はその中にそれぞれの営みや”幸せ”を見つけるのだ。

日本の古い伝統の素晴らしさや社会の厳しさや人の気持ちの素晴らしさを、外国人(アウトサイダー)の視点からある時は客観的に、ある時は主観的に描いた素晴らしい作品である。
アメリカで長年暮らし、日本を再認識したのであろうHIKARI監督だからこそ見つけられた視点だと思う。
神社の奥にある鏡を見つけ、そこに映った自分自身と目が合う素晴らしいシーンがあるのだが、あれこそ”日本人の心”なのだ。
“真実”は人間の心の中に宿っている。
”幸せ”はお金で買うものではない。
”日本人の心”。
人の心の中に“真実”を発見できることこそが
本当の”幸せ”なのだと思う。
みんなに勧めたい良い作品だ。
※後編は、ブレンダン・フレイザーやHIKARI監督の舞台挨拶をご紹介します。お楽しみに!
©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
●『レンタル・ファミリー』2026年2月27日より大ヒット公開中!
![特撮ゼロWeb [Tokuzero.Web]](https://moegame.com/wp-content/uploads/2023/05/tokuzeroweb_logo.png)

コメント